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第十一話 優しいのが妄想、厳しいのが現実

ギルドへ戻るとまばらに冒険者がテーブル席に座って談笑していた。

依頼ボードをしげしげと眺めるやつもいるな。

テーブルに一人で座り視線を忙しなく動かしているやつなんかもいた。

それらをなんとなしに眺めつつカウンターへ向かう。


レイナさんから受け取った報酬は銅貨が7枚、大鉄貨が27枚、鉄貨が30枚だった。

正直報酬よりも依頼成功を報告した時のレイナさんの賞賛の言葉の方が嬉しかった。


依頼が思ったよりもすぐに完了したので市場へ寄ることにした。

貨幣価値は出来るだけ早く知りたいからな。


レイナさんに市場の大体の方角を聞き出す。

そんなに離れてはいないみたいだ。

市場へ向かおうと踵を返したところでテーブルで一人座っていた冒険者が立ち上がり話し掛けてきた。


「よお!何の依頼を達成したんだ?」

「誰だお前」

「俺はザック!なあ、初心者を助けると思って教えちゃくれねーか?」

「うーん」


初心者も初心者の俺に聞くのかよ。

こいつも見る目がないな。

まあ何の依頼かくらい教えてやってもいいだろう。


「ブラッシングだよブラッシング」

「って言うとあの怪しさ満点の依頼のことかよ!?」

「あーまあな」

「あんな怪しい依頼を受けるだなんてたまげたぜ...」

「余計なお世話だ」

「まあアンタみたいなのにも達成できるなら楽勝だな!次は俺が受けることにするぜ」

「失礼なやつだな」

「すまん。それと恩に着るぜ...えーと」

「エルドだ」

「恩に着るぜエルド!依頼達成したら何かおごるぜ!」

「はいはいありがとな」


ザックとか言う失礼な冒険者は上機嫌で去っていった。

さて、市場へ行くとするか。



市場は昼下がりだからか賑わってはいたが人が溢れかえる程ではなかった。

色々な物があって視線があっちへこっちへ移ってしまう。

店主の売り込む声も相まって中々活気に溢れている。


「おう、そこの兄ちゃん。串焼き一本5アリルだ。食ってかないかい?」

「そうだな...2本くれ」

「あいよ!会計は10アリルだ」


鉄貨が最小単位だとして依頼の報酬額と貰った貨幣の枚数を照らし合わせると、鉄貨が100枚で銅貨1枚分の価値があり、鉄貨10枚で大鉄貨1枚の価値があることがわかる。

つまり10アリルは大鉄貨を1枚渡せばいい。


店主に大鉄貨を1枚手渡す。


「丁度受け取ったぜ。また来いよ!」


どうやら間違いないみたいだ。

これで大体の貨幣価値は理解できた。

日本円で換算するとどのくらいかは良く分からないままだが。


これでこの店主が嘘をついてない限りお代をちょろまかされることは無いだろう。


その後も色々な店を冷やかして回った。

串焼きは筋張っていてあまり美味しくなかった。

日が大分傾いてきた頃に宿へ戻ることにした。




宿へ向けてえっちらおっちら歩いていると前方にモヒカンをふさふさ揺らしながら筋肉が歩いていた。


「おい」

「おーエルド!どこ行ってたんだ?」

「こっちのセリフだ」

「おれっちは市場に行ってたぜ」


そう言うターキーの両手には何本も串焼きが握られている。


「はあ...まあいい。俺は依頼に行ってたんだよ」

「何ぃ?おれっち達はパーティーなのにエルド一人で行ったのか!?」

「お前がどっか行ったんだろ...」

「ありゃ?そうだったか?」


あまりにもあっけらかんとしたターキーの態度になんだかどうでも良くなってしまう。


「帰るか」

「おう!」




足長雀の止まり木に戻るとカウンターにおばちゃんは居らず、代わりに可愛らしい女の子が立っていた。


「あ!いらっしゃい...ませ...」


女の子は嬉しそうに出迎えてくれたが俺の顔を見た瞬間に元気が無くなった。

泣きそう。


「おーう!リリナじゃねーか!帰ってたのか」

「鳥のおじさん!」


そしてターキーを見た瞬間に嬉しそうに笑った。

泣きそう。


「この人も泊まるの?」


リリナちゃんはこちらへ指を向け心配そうに尋ねる。

俺の目尻に薄らと光るものが。


「エルドはいいやつだから心配ないぞ!」


ターキーがフォローを入れてくれたお陰で若干リリナちゃんの態度は軟化した。

心の友よ!


「足長雀の止まり木へようこそ。3食付いて1泊1000アリルです。」

「あ、じゃあ1泊頼む...」

「丁度頂きました。お部屋は二階の突き当たりです。こちらが鍵です。」


もしかしなくても嫌われてる?

そう言えば学校でも何もしてないのに女子に嫌われたりしたっけ...。

ははっ。


「エルド!明日こそ一緒に依頼に行くぞ!」

「ああ、うん...。俺今日は早く寝るわ...」

「お、おう。そうか」


肩を落としつつ部屋へ向かう。

部屋の内装はシンプルだが清潔感があり中々気にいった。

テーブルやベッド、イスもちゃんとある。

ご飯も美味しかったしこの宿に連泊するのもいいかもしれない。


ベッドに横になって気付いた。

ギルドマスターから貰った剣を担ぎっぱなしだった。

改めて見ると初心者用のロングソードにしてはボロい。


新品が欲しいなんて贅沢は言わないがなんだかこの剣は使い込まれた形跡があるな。

なんとなしに鞘から刃を引き抜く。

引き抜いた瞬間に気付いた。


明らかに初心者が持つ様な代物じゃないぞこれ。

その刀身は薄く青みがかっており、何らかの文字が刻まれている。

そして異常に軽い。

これはいわゆる魔法武器というやつではないだろうか。

何故そんな貴重品をギルドマスターが寄越したのかはわからないがこの剣は大事にしよう。


まだ日は沈んでいないが今日は色々あって疲れた。

さっさと寝てしまおう。

ベッドに入り目をつむった。

さて、寝ようと言うところでふと思い立った。

お風呂とかどうするんだこれ?

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