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空母戦譜  作者: 航空母艦
3/4

鉄礬土の呪縛

何やらやかましい、

主に甲板がやかましい、

思わず部屋を飛び出して船内の通路を進む、


「どうした何があった」

「少将殿、あれです」

「む、ありゃ多段空母じゃないか………」

「案の定海軍がケチりましたね」

「お、野々宮参謀探したぞ、書類の整理手伝ってくれんか」

「またですか、今度は何やったんですか………」

「物資が定数に足りなかった」


二人とも思わず海上の遥か彼方にいる多段空母を睨みつけた、

多分積み込みの際に紛失したと思われるが、

その積み込みを海軍も手伝ったので誰もが海軍のせいだと思っていたりする、


「まだ倉庫で埃かぶってたりとかは無いですかね」

「もしくはもう海軍陸戦隊がもらって行ったか」


どのみち積み忘れで後から来た輜重軍には怒鳴られるし書類の山を渡されるし、

まさに踏んだり蹴ったりであった、

そしてなぜ今回に限って輜重軍が積み込みを行わなかったのかと、


「とりあえず輜重軍には知らせたし、後は輜重軍が物流ルートで突き止めるだろうな」


実際本土では消えた物資一トン分の捜査が行われており、

後に倉庫で埃かぶっているところを発見され、

後日、輜重軍が責任もってこれを現地へ輸送した、




「あれが、陸軍の上陸船団か………」

「中々立派ですね」

「今頃トラックには輸送船団が到着してるかもな」

「本当、時間通りに進んでると言いますかなんと言いますか………」

「キツキツの予定は好きじゃないなぁ………」


艦隊と船団の上空を双発機が飛び去った、

九六陸攻である、しかし九六陸攻は既に陸攻としてはほとんど使われていなかった、

先の支那事変で損害があまりにも多くその脆弱性は軍内でも危惧された、

そこで本来の目的である偵察に使うということでなんとか結論がついたが、

ただ偵察するだけだとやはりその翼の中の大きな燃料タンクが生存率を下げていた、

そこで、高高度からの奇襲偵察が提案され、

これに向けて制作も始まった、

初め、高高度で安定する発動機を作る必要があったが、

これは意外とすんなり解決した、

日本がフランスから輸入した機体の発動機が一つある、

空冷星型ジーゼル、


ジーゼルエンジンは確かに低空では馬力不足などが目立つが、

高高度になれば話は別である、

その馬力を高高度でも維持できる、

確かに普通の発動機に比べれば一長一短が激しいが、

高高度で使うのならこれしかない、

こうして高高度偵察用の九六陸攻に合う発動機の開発が始まった、

ジーゼルの利点はほかにもある、

その燃費で航続力を伸ばすことができた、

おまけに高高度は燃料消費がいい、

そして、九六陸攻は偵察機として生まれ変わった、

しかし生まれ変わったはいいが陸攻が九五式しか残ってない、

そこで新たな陸攻を作ることになったが、

今回の陸攻は航続力よりも支那事変での使用に耐えれてさらに防弾がある機体が望まれた、

そこで採用されたのが九七重爆の兄弟分のキ19、

これを海軍仕様に改修し採用、九七陸攻と命名された、

後に配備された一式陸攻と比べても乗員はこちらの方を好んだという、


航続力4000、速度も出る、防弾もある、

しかし搭載量は少々少ないが魚雷が積めれば十分と判断された、

爆弾倉扉もある近代的な陸攻を海軍は手に入れた、


「最近ニューギニアが怪しいからな、気を引き締めていくぞ」

「トラックの方でも時たま不明な潜水艦の目撃情報がありますからね」


既に、

この目撃や情報が、

この後の出来事に繋がるとは誰も思わなかった、





「………やっぱり哨戒機を出す、艦隊周辺を哨戒………

「小沢さん、もしそうなら書類にサインを」

「親子共々めんどくさい奴め」


懐から判子を取り出し朱肉に押し付け書類に赤々と小沢の文字を付けた、

これは単純に書類にサインを求められた時にサインなんて書いてる暇がないやめんどくさいということで個人で購入する人が増えたために最近では卒業生にでっかい化物みたいなフルネームや卒業期などの個人情報びっしりな判子が配られているという、


「美濃部参謀長、哨戒機のローテーションを佐多飛行長と組んでくれ、出来るだけは早く頼む」

「了解しました」

「山田艦長、哨戒機割当と発進準備が整い次第風に艦を立ててくれ」

「承知しました」


ゆったりとした時間が流れていた艦内が慌ただしくなった、

が、


「水偵出した方が早いんじゃないですかね?」


回航司令官が余計なことを口走った、

この時小沢は思いっきり彼を睨みつけたという、


「………第十一戦隊に発光信号、水偵の発進を求むと、ついでにどこを飛ぶのかも伝える」

「小沢さん、南雲さん共にサインをもらわないと………」

「一々めんどくさい奴だな!!!書類に俺の判子を二個付けてやるからこれで勘弁しろ!!!」


これと同じタイミングで第十一戦隊から判子はいるか?と発光信号の返信が来た、

もし第十一戦隊が空母なら小沢は必ずや連絡機で殴り込んだであろう、

残念ながら今艦隊に居る空母は第一航空戦隊の土佐しかいない、

同じ戦隊を組む鳳翔は第四艦隊が演習の時の艦隊防空用に借用していた、

もっとも、天城型四隻の攻撃隊を防げるとは思えないと小沢は言っていたが、


「判子は要らんと返信!!!」


その日の乗員の日記には鬼瓦がさらに鬼瓦になったと書いてあったという、


「ありゃ九九水偵ですな、九九式の新鋭機シリーズの一角を占めてますよ、」

「どうせならこの空母にも新鋭機を載せたかったな」

「九九艦爆、九九艦攻、九八艦戦、どれもうちの土佐では飛行甲板がギリギリですよ、」

「だから早めに改装することを言ったのにこのざまだ、天城型共々小改装ばかりやって天城型に追い越されて、何もかもが遅い」


しばらくは小沢の苦悩は絶えないようだ、

その上空を、何かが光ったが、誰も気にしていなかった、

いや、誰も気づいていなかった、







「なんて堂々と………」

「高射砲一発すら撃ち上がりませんね………」

「畜生舐められたもんだ、イエローモンキーのジャップの癖に」

「この艦隊だな、航路を計算してみるとあの諸島に向かっている」

「つまり俺たちは世界三大海軍の一つに喧嘩を売る事になるな、行きがけの駄賃だ、水平爆撃用意、目標はジャップの戦艦だ」


エンジンが唸りをあげて加速する、

爆撃コースが定まると直進するしかないが、

艦戦が上がっていないし上がってもここから見えるので上がれば爆弾捨てて逃げればいいのだ、



『こちら第二護衛艦隊、上空に機影、レーダー動かした途端爆撃コースに入った、目標はおそらく五葉、気を付けられたし』

「ふむ、見張りは何やっとるか………」


ため息をついた南雲が艦橋を見回した、

参謀や乗員はひたすら気まずそうに黙り込んでいた、


「仕方無い、観測機を出して迎撃せよ」


幸いカタパルトは二つある、

どちらかを使えばいいが、

問題は暖機だった、

水偵は既に暖機を終えていたが水観は航続力も短いため後回しにされていたのだ、


土佐の方を見ると下部甲板の格納庫の中で戦闘機の暖機が行われていた、

九六艦戦かと呟き南雲はひたすら上空の爆撃機を見つめていた、

おそらく水偵の燃料やらなんやらを回航司令官にサインを迫られそうな感じがしてならない、

今はそのイライラをひたすら視線で爆撃機にぶつけていた、

まるで撃墜するかの勢いで、


「敵機投弾!!!」

「やはり間に合わなかったか、面舵一杯!!!」

「南雲司令官!?」


伝声管の前で素っ頓狂な声をあげた艦長を置いていくように、

南雲の出した面舵一杯の命令が復唱された、


巡航速度でどこまで行けるのか、

そう思いつつ爆撃機をひたすらに睨めつけていた、


「弾着!!!今!!!」


海面に大きな水柱ができた、

急いで面舵一杯とは逆の戻し舵を命令、

これで艦は再びまっすぐ進みはじめる、


「明らかな狙った投弾だな、オランダはどうやらここで戦争をはじめる気のようだ」

「一航戦より発光信号、大丈夫ナリカ?とのことです」

「水一滴すら無かったと返信しておけ、次は戦爆連合が来るとも付け加えてだ」


今や敵となった爆撃機に高角砲が狙いを定めて対空砲火を浴びせていた、

ボロボロと何かが落ちるのは見えた、


「あれは落ちるのも時間の問題だな」


そういった途端、

敵の爆撃機は翼から火を吹き出した、

いよいよ、この作戦は一大作戦への変貌を遂げる通過点は過ぎ去ったのだ、











「何!?高角砲を撃つな!?貴様正気か!?」

「正気も何も、対空はうちの護衛艦隊がやってくれますし今回高角砲の使用許可は無いんですから、使いたかったら弾数数えて申告して何発使うかまで書いて書類にサインをして………

「もういい!!!」

天城型航空母艦

挿絵(By みてみん)

写真はまだ203mm連装砲を載せてた時の物、

後に格納庫を拡大するために砲塔式の14cm連装砲を載せている、

その他の特徴は中段の飛行甲板を上段に移植している、

これは単純に資材節約と飛行甲板延長のためである、

その為実質は二段空母であったが、

最近は四番艦愛宕の改修を最後に全艦全通甲板になった、


九七陸攻

キ19を基に開発した陸攻、

高速雷撃機としての性格もあり、

後に配備された一式陸攻より好評だった

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