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2.5~4

執筆時期により章分けが出来ていませんが崩れそうなのでそのまま乗せます

2.5



 その国は山間部に位置する小国であったが複数の国に接し交通の要所として栄えていた。


 隣国同士は仲が悪くともこの国が緩衝となり大きな争いにならない場合も有り平和の要でもあった。

 

 しかしここ数年のうち大きく気候が揺らぎ国力を落とす国が幾つかあった。


 そのころ彼の国に一人の姫が生まれた。


 白銀の髪の姫は盲目白痴。何年経っても言葉をしゃべれず歩くことは出来ても止まることも向きを変えることが出来ず、倒れてもバタバタと手や足を振りまわす。耳は聞こえているのか反応はするが言葉を理解しているようでは無い。


 王は不憫に思い廃児せずに、病的なまでに付き添う后とともに別に館をしつらえひっそりと育てることにした。既に皇太子や孫にも恵まれているので誰も暖かく支えた。


 ある時一つのおふれがだされた。后の名で出されたおふれには姫のために宝玉を献上せよというものであった。


 この事により姫の存在が公になり様々な憶測を生む。


 無償であるにもかかわらず殺到した人々から双子の少女と若い後家の持って来た小さな水晶の宝玉が選ばれた。


 それらはまったく異なる場所で彼女ら自らの手で大地より掘り出したもので有り、教会の巫女のお告げで献上に至ったとのことだった。


 彼女たちは姫の侍女に取り立てられ、その宝玉は文字通り姫の左右の瞳となった。


 その後最初のお披露目に於いてその姿を現した末の姫は輿から降りることも口を開くことも無かったが誰もが見ほれるほどの美を体現した。


 以後彼の姫は美姫、美神の愛し子あるいは人形のような姫、見た目だけの駄姫と呼ばれるようになった。



 その頃から幾つかの国で政変があり、和平や交渉の席にこの国の王族や要人を証人として同席させるのが慣例となりつつあった。



 そして形だけでも美姫の同席を乞うものも現れてきた。


 そしてとある国の婚姻に関する取り決めに於いて使節団の団長として出席することになった。








 そこには砂で出来た塚が立っていた。

 

 あちこち魔法で削れたりへこんだりしていたがゆっくりと崩れ去り、少女の姿が露わになる。


「あぶないあぶない、生け捕りしろって言われていたけど危うくこっちが食われるとこだったわ。」


 佇む少女の仮面は割れて額には槍が突き刺さり突き抜けた先から真っ赤な血が滴っている。


 魔法にまきれて投擲された魔槍が頭を貫いたのだ。


「死んじゃったものは仕方ないわ。みんな始末して撤収するわよ。」


 刺さった槍を抜こうと手を掛けたときその口が動いているに気が付いた。


「な、まだいきてるの?しぶといわね!」


 刺さったままの槍で頭を砕こうとしたところを小さくて綺麗な手が刃先を掴みそのまま握りつぶしてへし折ってしまった。


「なんなのよ?あんた化け物?人間じゃ無いの?」


"我は乞う。我祈りにより我望ものを我前に顕現せしめよ。”


 辺りには光の輪が幾重にも取り囲み力が光の中心へと集まっていく。


「勇者召喚?あんた高司祭?儀式も無しで成功するわけ無いじゃない!」


「た、隊長・・・」


 光の輪が取り囲む中、部隊が完全に取り囲まれている。


 トドメを刺さなかったとは言え動けなくしたはずの護衛の騎士が遠巻きに取り囲んでいた。

 いたぶっていたはずの従者も馬車の整備用の鉄の棒をかまえて威嚇してくる。


 誰にも傷はおろか痕一つ無いのがぼろぼろの鎧や服の間から見えた。


 もしやとふりかえると少女が呪文の詠唱をしながら頭に突き刺さった刃を引き抜いて脇に放り出す。

 脳漿や血がみるみる傷に吸い込まれていって最後には髪の毛すらも元通りになってしまう。


「無詠唱の並列発動の全体回復魔法、それも接触無しの広範囲をカバーしているなんてどんな化け物よ。いや、どうやらどこかの神様の愛し子って言うのは本当だったみたいね。」


 光の帯が一点に収束してその光が消え失せたときそこには薄汚れた血まみれの男が立っていた。







 鎖付の分銅が足に絡みつく。

 こんなものまで持ってきていたのか。

 一緒に絡め取られた足軽にトドメを刺す。

 解こうとするが切り込んできた男を躱そうとして転倒した。

 後は長槍で遠目から串刺しにされるのを待つだけ。 


 覚悟を決めたとき光の柱が地面から立ち上がる。


 まるで崖でも飛び降りたかのような感覚が襲いかかる。

 


 光が消えたときいつの間にか体の傷が消え、何も痛みすら無い状態で立っていた。  


 すぐに状況を確認する。


 今まで闘っていた男達は消えていた。

 代わりにいるのは見たことも無い鎧や服を着た大柄な男達。

 少数だが整っている鎧を着ている一団とボロボロの装備の一団が敵対しているところに現れたのか。


 数はいい装備の方が少ないところを見ると奇襲を掛けたところで何らかの事情で完全に足を止められて包囲されているのか。


 馬車?を襲って目標を倒す前に護衛のやつらに囲まれたか。


 今馬車に残っているのは女性が数人か。


 中心部にいるのは姫様と包囲されている隊の女武将か。姫様が囮になって敵の足を止めさせたか。



 ?


 ・・・姫様?


 だれだ?あの綺麗な人は。なんて可憐なんだ。ただ残念なのはうちの(・・・)姫様と同じ雰囲気を纏っている。


 うちの姫様は身の丈7尺にもおよび、金棒を振り回して幼少の頃には敵国の女子供構わず殺すほどの鬼姫と呼ばれた極道娘で何とか俺が力で押さえつけることで大人しくさせることが出来た大女である。

 以来しおらしくなって俺の嫁になるとか言って付きまとわれたが御家のために別の国に嫁いでいった。


 


「こじゅうろう!」

「はっ!!」

「ちょくめいである!このものたちをとらえよ・・・・ころすなよ。」


 余りに懐かしい声、甲高く舌足らずな幼子のような声。

 あの巨体とこの声だったのでなお奇異の目で見られていた。

 ではこの方は姫様なのか?

 改めて姫を見る。

 小柄で白髪であるが見た目とは違い貫禄や威圧感はかなりの老獪さを感じる。



「きさま、端から私のことなど眼中に無いと言っているのかしら?」

 姫様の命と同時に襲いかかってきた武将は槍で突っかかってくるがその攻撃は正確すぎて躱すのは簡単である。


 あの方は姫様のことを知っていて俺を姫の忍びと知った上で姫として俺に命じた。

 良いだろう姫と同じいのちの波動を持ち姫様以上の威圧感をもつこの女性に使えてみるのも一興か。



 残り少ない煙玉で目くらましをして、姫様の元に駆け戻る。



 片膝を着き右手を地に着け頭を下げる。


「北川郷の西に住まう"草"小十郎太にございます。よろしければ主殿のお名前をお教えねがいます。」


 後ろで馬上から落ちる敵将に気を止める様子も無く答える姫。

「妾はキーヨ皇国が末姫、サイリ。そして・・・」

 (むっふん!)腰に手を当て胸を反らし見上げる。

「鬼姫と怖れられた(ことひめ)の生まれ変わりである。」

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