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森の一角に豪奢な馬車が止まっている。
数台の馬車が近くで動けなくなっている。
明らかに別の国の旗を抱えた騎士達に取り囲まれている。
護衛の騎士は倒れ地と泥にまみれて横たわる。
「卑怯な!和平の使者を待ち伏せて襲うとは、戦火をいたずらに広げるつもりか?」
「説明ありがとう。これはその礼だ。」
馬上槍が地に伏した従者の男の肩を大地に縫い付ける。
「さて、姫様そろそろお出まし願えませんか?でないと大事なお仲間が使い物になら無くなっちゃいますよ。」
引き抜かれる槍。
無言で耐える従者。
その時馬車の扉が吹き飛んだ。
「く!」
破片を弾きながら隊長格の騎士が対魔法の呪文を唱える。
他の襲撃者達も次々に呪文を唱え攻撃と防御の陣形を整える。
「ほう、ただのお飾りと聞いていたが術を使うか、盲目の駄姫よ。」
「姫様!」「おやめください!」「出てはだめです!」
『・・・しばらく静かにしていなさいな。』
言霊のこもった言葉により金縛りに遭う侍女達。
ゆっくりと壊れた扉より現れたのは地に着くほどの銀髪の十代半ばの少女であった。
顔を隠す翡翠仮面と一体化した緑光魔石のはまった王妃冠がかすかに黄金の光を放っている。
「どうやらその仮面がくせ者のようですね。ならこの私が全て打ち壊して差し上げますよ。くっ、くっくっ・・・・」
地面に降りた姫はそのまま、すとんと座りこんでしまった。
「どうやら恐怖に腰を抜かせてしまいましたかね?まあ良いでしょう。じっくりと楽しませていただきましょうか。」
掛けられる言葉に応えるでも無く自らの長いスカートの中に手を入れごそごそとなにやらはじめる。
そしておもむろに立ち上がる。そしてゆっくりと伸びをした後体をほぐすように動かしていく。
そこにしびれを切らした兵士が貯めていた魔法を打ち込む。つられるように更に数発の魔法が駆け抜ける。
砂埃が晴れたときその場には・・・