1
とある忍者の召喚術
1
目の前で隣の親父が切り捨てられた。
こっちに越してきてから何かと監視して邑長に告げ口していたのは知っている。
おかげで息も抜けず日課の鍛錬でさえどれだけ苦労したか。
”草”としてはあくまで食い詰めた百姓が姫様の輿入れに着いてきたように見せなければならず、二人でいちゃつくぐらいしかごまかしようがなかった。
一応、妻として一生一緒に居る相手だから大切には扱ったが人前で色々するのには抵抗があったのか時折身を震わすのを感じで気の毒に思ったほどあいつの視線は無遠慮だった。
妻は昨夜のうちに国元に走らせた。
姫様は昨夜のうちに自決された。
この地の領民達を害さないことを確約するためその命を散らされた。しかし今この邑は攻め込まれている。
確実に皆殺しを狙っている。
姫様が命に替えてまで守ろうとした民草を散らすのは許せん。
それを見定めるため我はこの地に止まった。何事もなければ国元に戻り仏門にて姫の御霊を慰めようと思っていたがこの有様である。
このまま敵を狩りだしてもいいがそれは御館様の御心次第。このまま捨て置き帰参することにする。
身を隠しつつ邑外れに来た時道ばたに新たな立て札が立てられていた。
それは字ではなく人が逆さに貼り付けられていた。
ボロボロになるまでいたぶられ、いまだ血が滴っている少女の胴体だけの姿。
お役目をしくじった忍びの末路。
もはや退路もたえたか。
この集団の頭を見付けた。
お役目とはいえ妻とした娘の敵打たせてもらう。
所詮後ろでふんぞり返っているだけの男、あっさり両手足を落として立て札の下に転がしておく。
血は止まらないようにしてしばらくは生かしておく。
さあ何人道連れが出来るかな。