22.縁
死のダンジョンへ向かう前日、私たちはある場所に向かうため馬車に乗っていた。
「ケルトとメルは大丈夫かな……」
心配そうに外を見るロードス。
綺麗な茶髪で腰に弓を携える、イケメンな姿はかっこよく映える。
「今回頼んだのは練達の運び屋だぞ。きっと大丈夫だ」
足を組んで元気な声で言うカトル。
綺麗な金髪に腰に長剣を携える、イケメンな姿はかっこよく映える。
「俺たちもケルトやメルを心配している場合じゃないか……」
「それはそうだな……」
馬車にどんよりとした空気が流れる。
死のダンジョンに向かう日数が近づくにつれて、どんよりとした空気になることが多くなった。
「怖いけど、私はできる限り頑張る」
「死が待ってても、最後まで頑張るのが探索者だからな」
「俺も頑張る」
中央ダンジョン。
通称死のダンジョンと呼ばれている。
このダンジョンは他ダンジョンと比較して、段違いで難易度が高い。
これまで数多の歴戦の探索者が挑んだが、誰も踏破できなかった。
当時至上最強と言われていた探索者も踏破できなかった。
ゆえに、どんなに強いやつでも踏破できないダンジョンとなり、死のダンジョンと呼ばれるようになった。
「至上最強の魔術師がいるし、踏破できる可能性もちょっとはあるぞ」
「いやいや、至上最強なんてことはないよ」
私は巷で至上最強の魔術師と呼ばれている。
でも、私自身はそこまでの力を持っているとは思っていない。
「エレナの魔法は本当にすごいって! 魔法を見たやつはみんな目が飛び出る」
「そんなに褒めてもなにも出ないからね」
そこまで褒め称えられるほどのものじゃないと思うんだけど……
「そもそも、30年前の至上最強が踏破できなかったのなら、今の至上最強も踏破できないよ」
「気分上げるために言ったから、そこは空気読んでくれるとありがたいんだが」
「あ、ごめん」
また空気の読めないことを言ってしまった。
この癖を直したい。
「とりあえず、前日だし思い出の場所に向かうぞ」
「そうだよ。俺たちが出会った場所に」
「最後の場所……」
「ここは明るいことを言うところだぞ」
馬車の空気が再びどんよりとしてしまった。
また空気を読めなかったらしい。
すみません。
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最後の思い出の場所に着いた。
「やっぱりいいね」
馬車を降りた先には、風光明媚な湖が広がっていた。
この湖を見るたびに、心が浄化される。
「俺たちの庭はやっぱり最高だよ」
「勝手に庭にするんじゃないぞ」
さっきまでのどんよりとしていた空気が一気に掻き消された。
本当に、最高の場所だ。
「俺たちが初めて出会った場所だな」
「初めてか。懐かしいね」
五歳の頃。
私がこの湖に来たときに、カトルとロードスが来ていた。
そのときはまだ他人だったが、毎回来る度に鉢合わせるため、段々と話をするようになった。
そして、友達になった。
「ここでの出会いは運命だったよ」
「ここから私たちの親友生活が始まったよね」
「そうだな。懐かしい。もう15年か……」
時の流れは早い。
いつの間にか私たちも20歳、成人になっていた。
「初等学校も中等学校もクラス一緒だったし」
「ここで出会ったおかげだろうな」
「そうだね」
この湖で出会ったのが縁か、初等学校と中等学校合わせて九年間、クラスが一緒だった。
「私は二人と一緒にクラスで本当に良かった」
「エレナにそう言ってもらえるのは嬉しい」
「俺も嬉しいよ」
軽い話なのに、なぜかどんよりとした空気が流れる。
「また私話題間違えちゃった」
「いや、今回は間違ってない。俺たちが間違ってるだけだ」
「エレナごめんな」
どんよりとしてしまうのは、いじめのことを思い出したからかもしれない。
私はいじめのことを極力思い出さないようにしている。
思い出すと涙が出てくるから。
「エレナ、涙が出てきてるぞ」
「あ、ごめん。すぐに引っ込めるね」
「引っ込めなくていい。俺が拭うから」
カトルは私の下まぶたに人差し指を当て、涙を拭ってくれた。
拭われるときに、なぜかキュンとしてしまう。
「カトルは大人だな。ずるいぞ」
「ロードス、今はそれを言うときじゃないだろ」
「ごめんなさい」
咎めるカトルに、しゅんとするロードス。
自然と笑いが出てきた。
「ロードス成功だ」
「やったね」
「二人ともありがとね」
二人がいるから私は今生きている。
二人がいなければ、私は今ここにいなかったかもしれない。
だから、ダンジョンで死ぬときは絶対に二人と一緒がいい。
踏破できるところ階層までは踏破して、三人で死にたい。
「それじゃ、久しぶりに遊ぶか」
「「おお!」」
幼少期のように一日中湖周りで遊んで、死のダンジョン探索の日を迎えた。




