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07

「Cave Story」というゲームがある。

世界中で売れ、若い世代なら誰もが一度は見たことはある。

そのゲーム性の幅広さは類を見ず、人によってどこに楽しさを見出すか違うから驚きだ。

そんなゲームの大型企画「ファンタジア」。

70人以上の配信者が参加することになったこの企画。

呼んでもらえたのは大変光栄なことだ。兎月くんには感謝しないと。

「ファンタジア」では本来のゲームではなかった役職が生まれ、それぞれに沿ってできることが変わるらしい。どの職業がどんなことできるかはやってみてからのお楽しみ、である。


送られてきた資料を何回も見返し、楽しみにしてきた。

その企画が今日の夜、始まる。


「配信始まったかな」


自分の配信をつけて、ファンタジアが始まるのを待つ。

サーバーが開くのは今日の20時から。

10分早く配信をつけたので、コメント欄のみんなと話しながら待った。

たのしみだね、って言いながらそわそわしていると20時になった。

サーバーが開く。

接続する。

そして、明けた世界は美しかった。


巨大なホールの真ん中に私はいた。

そこはたくさんの人でごった返していて、いろいろな人の声がはいってくる。

天井の窓ガラスから降り注ぐ陽光が私たちを照らしていた。

ホールを抜けて進むと通路があり、横一列にNPCが立っていた。

彼らに話しかけるとどうやら、職業ジョブに就職できるらしい。

これがこの企画の目玉。

NPCに話しかけた結果わかったのは職業は全部で6種類あるということ。

戦闘に強い《戦士》、採掘に強い《採掘士》、家が建てられる《建築士》、魔術をさまざまなものに付与できる《魔術師》、装備品を作成できる《鍛冶師》、農業と釣りができる《農家》。

私は迷った。どれも楽しそうだし、悪くない。

でも、一番惹かれたのは魔術師だった。

だって、魔法はかっこいい。サポート役っぽいのも性に合ってる。

わたしはNPCにもう一度話しかけ、《魔術師》を選択する。

ぴろんと音がなってメッセージが出る。


【あなたは《魔術師》になりました。】


そのメッセージを確認して、私は通路をぬけた。

その先に待っていたのは、未開の地。

広大な世界に投げ出された爽快感は気持ちよかった。

とりあえず、メッセージと共に渡された本を開示する。

そこに書かれていたのは、《魔術師》の説明だった。


「えーと…《魔術師》は魔術をさまざまなものに付与できる職業です。魔術台を作成し、経験値を消費することで、魔術を付与できます。また、魔術本を剣などの合成物と合成することができます…

さてはお荷物役職だな?」


ピンと来てしまった。だって、経験値は戦闘でしか手に入らない。なのに魔術師は剣も装備品も作れない。魔術本はダンジョンの奥にある。ようは、パーティを組むことを前提にした職業だ。


「これは急いで仲間を作らないと…」


私がムムムとうなっていると、


「Kちゃん」


と声がかけられた。振り返ると、兎月くんが立っていた。


「Kちゃんはもうパーティ組んだ?」

「ううん、まだ。いまそれをどうにかするところ」

「それならよかった。パーティ、組もう?」

「いいの?わたしお荷物だよ?」

「CSの初心者だから?」


CSというのは、このゲーム「Cave Story」の略称だった。


「それもあるけど、ジョブがね…」


わたしは本の内容を改めて読み上げた。

すると、兎月くんが笑いだして、わたしは苦笑いをする。


「だいたい想像してた通りの役職だ。なんでこれにしたの?」

「だって…魔法はロマンでしょ…」

「ふふふ、うん。そうだね」


そういった兎月くんはとにかく楽しそうだった。


「そういえば、兎月くんはなんの職業にしたの?」

「俺は《戦士》にしたよ。戦うの好きだから」

「なるほど。つよい?」

「うんまあ、剣や斧が作れる以外は普通かな。でも不便な職業ではないね」

「そっか」

「るりのところいってみよ?俺らと違う職業だったらパーティに勧誘しよう」

「いいね!るりちゃんのところいってみよう」


このとき、わたしは配信上兎月くんとは初対面であることを忘れ、いつも通りに接していたことでコメント欄が大騒ぎしていたことに気付いていなかった。




「るりちゃーん!職業決まった?」


ホール前の通路でるりちゃんを発見する。声をかけて寄っていくと、るりちゃんはエモートで応えた。


「ちょうど今悩んでるところ!あんたたちはなににしたの?」

「私は魔術師にしたよ~ちょっとお荷物感が否めないけど成長したら活躍する!…と思う」

「はは、なにそれ!面白いことになってるじゃない。兎月は?」

「俺は無難に《戦士》」

「そう」

「それで、三人でパーティを組もうって話になって、るりちゃんが良かったらだけど、《戦士》と《魔術師》以外の職業を選んでくれたらいいなって」

「なるほどね。いいわよ、今のところ《農家》と《採掘士》で悩んでたけど、この三人で冒険行くなら《採掘士》にしようかな」

「《農家》でもいいよ?」

「ばかね。それじゃお荷物が増えるじゃない」

「うっ」

「とにかく《採掘士》を選ぶわよ」


そういって、るりちゃんはNPCにはなしかけ《採掘士》になった。


「よし、これでいいわね。本の内容は…おおむね想像通り、ピッケルが作れて採掘ができる。けど、鉱石の精錬はできないっぽい」

「なら、もうひとりこのパーティに加入させるか…」

「鉱石の精錬ができないのは不便よね」


ふたりの会話を聞いてると、突然兎月くんが走り出し、NPCに話しかけてる人に突撃した。


「おい、オルカ。おまえ、職業きめたか?」

「え???え、まだ、だけど」

「おまえ、《鍛冶師》になれ」

「なん??え、なんで?」

「いいからなれ」

「ア、ハイ」


そうして、オルカさん?は《鍛冶師》を選択したらしく、本をもって兎月さんと共に私たちのところにやってきた。


「本の内容は?」

「えっと、鉱石を製錬することが可能です。また、防具やアクセサリーなどの装備品を作ることができます。だって」

「よし。加入決定」

「おめでとう、われらがパーティへ!」


兎月くんとるりちゃんが歓迎ムードをだしてるが、オルカくん?は終始はてなマークを浮かべている。


「ちょっとふたりとも、この子困ってるよ。ちゃんと説明してあげなきゃ」

「三人でパーティ組む、鉱石製錬できる奴いない、おまえをみつける」


なぜか、三行で説明する兎月くんにつっこむ。


「そんなわかりにくい説明じゃなくて…」

「あーなるほど、三人でパーティ組んだはいいけど必要役職が足りなくて、おれに無理やり就職させたってことでOK?」

「理解がはやい!!」


私が叫ぶと、オルカくん?はこちらをみて、


「それでお名前を伺ってもいいっすか?」


とたずねてきた。


「わたしは海星るり!ふだんは歌ったりゲーム配信をしてる!」

「わたしはKといいます。歌ってみたをあげてる者です」

「はじめまして!おれはオルカっていいます!仲良くしてくれると嬉しいっす!」

「よろしくね~」

「よろしくおねがいします!」


挨拶を済ませた私たちは、さっそくダンジョン攻略に行くことになった。


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