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今日も定時あがりで帰れた。とりあえず、疲れをとろうとシャワーを浴びる。化粧と共に落ちていく疲労にるんるんと鼻歌を歌う。お風呂から上がって、顔と体の保湿をして、パジャマを着る。髪にオイルを含ませてから髪の毛を乾かす。ひととおりのケアを終わらせてから、エプロンを着てご飯作りに励む。今日は簡単に鶏肉を切ってネギとなすと一緒に醤油炒めにする。炊飯器から炊き立てのご飯をよそって、卓にならべる。いただきます、と手を合わせてから、ご飯を食べ始めた。
「ただいま~」
るりちゃんと兎月くんと一緒の通話サーバーに連絡する。
出勤とともに「いってきます」、帰宅と同時に「ただいま」をいうようになったのは、るりちゃんと兎月くんと一緒にしゃべる時間を作るため。
わたしより忙しいるりちゃんが、私が起きてる時間に「ただいま」と言えたならそれは三人でしゃべる合図だ。
通話を繋げてだらだらと雑談したり、おすすめの動画見せあったり、ゲームしたり、各々作業に没頭することがある。ただ一緒にいるような感じが楽しくて幸せだった。
「ただいま!帰宅!!」
るりちゃんが帰ってきた。今日は一緒に喋れそうだ。
「私まだ起きてるよ~今日の夜、二人は用事ある?」
私がメッセージを送ると、兎月くんたちから返信がくる。
「しゃべれるよ。いつもどおり、Kちゃんが寝た後配信するけど」
「わたしも!」
その返事にわたしは口を緩めて、通話サーバーに入った。
ピロロンとつづけて音がして、兎月くんとるりちゃんがサーバーに入ってきた。
「こんばんは~」
「はい。こんばんは」
「こんばんは~!今日はめっちゃしゃべりたい気分だったから、早く帰れてよかった~」
「いいね。なんかあったの?」
「ふふふ、実は…来月始まる大型企画に参加しないかって誘われたのよね~!!」
「あ、それってもしかして『ファンタジア』って企画?」
わたしが口にするとるりちゃんは驚いて声をあげた。
「もしかして、Kのところにも…?」
「うん、お誘いのメール来たよ」
「ああ、二人のところにちゃんと行ったんだ」
兎月くんの言い回しが引っかかってたずねる。
「兎月くんなんか知ってたの?」
「知ってたっていうか、二人を推薦したんだよね」
「え、そんなことできるの?」
「まあ、そもそも企画してるのうちの事務所だからね。人数は多い方が運営としては良いだろうし、俺のお墨付きだから問題ない」
「うそ…コネで通っちゃったんだ…」
るりちゃんが若干ショックを受けたような声で呟いた。
「俺はふたりがこの企画を盛り上げてくれると思ったから推薦した」
「それでも、コネなのは間違いないでしょ…」
「コネはいや?つかえるもんはなんでも使わないと登っていけないよ」
「…それも、そうね」
るりちゃんは考え込むように静かになった。
「Kちゃんはいやだった?俺に推薦されて、迷惑じゃない?」
兎月くんがそう尋ねてきたから、私は正直にしゃべった。
「うーん。むしろ、ありがたいかな。企画が兎月くんの事務所のところだったからもともと、兎月くんがなんかいったのかもって邪推してたし。いろんな人と交流できるのはいい機会だったから」
「そっか、よかった」
ほっとしたのか兎月くんが息を吐いた。
「あーーー!こうなったら吹っ切れて楽しんでやるんだから!!」
るりちゃんが叫ぶのと同時にぷしゅっと音がして、たぶん缶ビールを開けた音だと思うけど、それに私は苦笑した。
「ぷはー!飲んでないとやってられない!」
「あれ、このあと配信あるんじゃなかった?」
「もういいの!のみたいから飲む!」
そういってビールを開けていくるりちゃんが心配になった。
案の定、その日の配信はべろんべろんに酔ったるりちゃんの姿が映り、大いに盛り上がったらしい。




