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休日、私は兎月くんもといしょうたくんを呼び出した。

ふたりでカラオケに入って、ドリンクを持ってきたあと腰を落ち着ける。


「今日は、来てくれてありがとう」

「ううん、Kちゃんと会えてうれしい。もっといっぱい誘ってくれてもいいんだよ」

「そう?じゃあ、外で遊ぶときは誘っちゃおうかな」


そんな軽口をたたきつつ、私は本題に入る。


「私、ボカロPさんと一緒にメジャーデビューすることが決まったの」


しょうたくんの目を見つめながら、大切に一言一句紡いでいく。


「私は、人を輝かせるのが好き。そのボカロPさんを私の声でもっと輝かせたいと思った。だから、私は歌手になる」


しょうたくんは茫然として、私をみつめていた。

やっと、口を開いて、震える声で彼は言った。


「Kちゃんはすごいな。どんどん自由へと飛んで行っちゃう。俺がどんなに閉じ込めようとしても、するりと逃げていくんだね」


彼の目は滲んでいて、涙を堪えているようだった。


「しょうたくんにはそう、みえるんだね」


私が静かに言うと、


「ちがうの?」


としょうたくんから返ってくる。


「ちがわないよ。わたし、ようやく自由になれたの。自分の価値も生き方も、好きにしていいんだってわかった。だから、わたしは飛んでいく」


私は決心した。


「けじめをつけよう、しょうたくん」






「わたしを追いかけ続けるか、立ち止まるか」


時が止まる。

しょうたくんが息を飲んだ。


「わたしは今までもこれからも好きに生きていく。歌手になったら、それこそ本当に私は『みんなのあかね』になると思う。それでも、私を愛し続け、苦しんでくれるのなら、私の心に触れることを許したいとおもう」


私は手を伸ばし、しょうたくんの胸に手を当てる。

バクバクと鳴る心臓がしょうたくんの焦燥と緊張を物語っていた。


「私の”一番”は音楽に、”隣”はボカロPさんに、”愛”はファンに捧げてしまう。そんな出がらしでよければ」


私はしょうたくんの目を見る。







「これからも愛してくれますか」






しょうたくんの瞳から、ぽろりと涙が落ちた。


「愛してる。愛するよ。そんな残酷なところも好きなんだ。全部ひっくるめて愛してる」


しょうたくんが顔を覆い、泣き始める。


「改めて聞きます。わたしの恋人になってください」


しょうたくんが何度も頷く。


「なるよ。一生大切にする。Kちゃんが逃げ続けるなら俺は追い続ける。ずっと一緒にいるから」


私はしょうたくんにもたれかかる。


「絶対、はなさないでね」

「うん」


伏せた私の瞳からも涙が出てくる。

私たちは、寄り添いながら泣き続けた。







私とさくらさくPさんのユニット名は「花星」というお互いの好きなものを組み合わせた名前にした。さくらさくPさんが花で、私は宇宙だった。

「花星」のデビュー曲「空が飛ぶ」は大ヒットを記録し、テレビやら取材やらで引っ張りだこになった。

「K」という名前はネットでの名義にし、私は本名の「あかね」で音楽活動をした。

私の声は街中で流れるようになり、「あかね」という存在は「花星」とともに世間に広がっていった。



わたしは、幸せだと。

そう思える。

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