02
それからわたしは歌うことに熱中した。
週一の頻度で曲をあげて、一週間伸び続ける再生数ににやにやしたあと、また新しい曲をあげての繰り返し。だんだん、フォロワー数が増えて私のファンだって言ってくれる人も出てきた。そこでわたしは覚悟をきめて、マイクを買って、歌ってみたの勉強をして、動画サイトに歌ってみたをアップロードした。ついでに新しいSNSのアカウントも作って、カラオケアプリで宣伝もして、積極的に頑張った。そのおかげもあって、わたしがアップした動画は1000回再生を突破した。
その後も動画サイトに歌ってみたをあげ続けて、再生数は三桁と四桁を行き来するくらいだけど、それでも満足だった。
朝、目が覚める。一日の始まりにすることはパソコンを開いて、動画サイトのマイページを確認することだ。伸びている再生数を見て満足した後、SNSをチェックする。
私の発信内容はすべて歌に関することで、この曲のこの部分が特に好きとか、ここが歌いにくいだとか、それからもちろん動画の告知を行っていた。その発信元についたコメントを眺めるのが一等好きで、みんながわいわい盛り上がっているのはまるでお祭りのようで楽しかった。私の言葉一つでこんなに喜んでくれる人たちがいる、それだけで心が満たされていった。
今日もみんなのコメントをチェックしようとSNSを開くと、DMのアイコンが光っていた。なんだろうと思って開くと、「海星るり」という方からコラボのお誘いだった。丁寧な文章でつづられた内容は、わたしを驚かせるには十分だった。わたしはるりさんのプロフィール欄に飛んでどんな方なのか見にいった。ゲーム配信がメインだけど歌が得意でカラオケ配信も多く行ってるVアバターの女性だった。
わたしは、断る気はなかったけど、コラボを受けていいものか不安だった。はじめて誘われて、うまくできる自信がなかったから。こわいなって思った。だけど、るりさんの歌声を聞いて決心した。とても澄んだ水のように柔軟な高い歌声、楽しそうに歌ってる姿、いっしょに歌ってみたいって思った。だから、わたしはコラボを受けるメールを送った。
2週間後、無事わたしとるりさんの歌ってみたコラボ動画はアップロードされた。それに伴って、るりさんから一緒にゲーム配信をしないかと誘われた。わたしはそれも嬉しくてすぐに頷いた。だけど自分で配信はする気がなくてそこはるりさんにも伝えた。それでもOK出してくれたからありがたい。通話アプリのアカウントを教え合って、そして今日初めて通話を繋げたのだった。
「こんにちは~」
「こんにちは~!」
「わ、るりさんの声やっぱりきれいですね」
「え!!!いきなり褒めてきた!?いや、たしかに私の声は綺麗ですがあなたにも同じ言葉を返しますよ?!」
「あはは、るりさん自信家ですね~!まあかくいう私も声だけは自信がありますが」
「Kさんの声かっこいいですよね!絶対私の高音と合わせたら相乗効果でると思ったんですよ!案の定、良い仕上がりになっていてわたしの耳にくるいはなかったって感じですね!」
「はじめてのコラボで至らなかった点も多くあったと思いますが、るりさんのフォローのおかげでなんとか形にできてよかったです」
「いえいえ、気にしないでください!ていうか、これを機にKさんじゃんじゃんコラボしていって自分を売り込んだ方がいいですよ!せっかくの才能が埋もれてしまいます…!」
「いや~、わたしは誘ってもらえたからコラボしただけで…自分からぐいぐい行くのは疲れてしまうので」
「そうですか…残念です」
「でも、るりさんとコラボするのはとても楽しかったので、良かったらまた誘ってくださると嬉しいです」
「それならぜひ!」
それからしばらく私たちは雑談をして交友を深めた。というか、あまりにも楽しすぎて深夜まで話過ぎた。お互い敬語もなくなって、るりちゃんと呼ぶようになり、わたしにはじめてのネット友達ができた。
そう、ネット友達。
わたしには今までいなかった存在。
ひまだな~って呟くと、るりちゃんから通話がかかってくるようになった。
るりちゃんのゲーム配信を見て、世の中には面白いものがたくさんあるんだなって知った。
それから一緒にゲームするようにもなって、ひとりでコソ練したりして。
毎日がもっと楽しくなった。
私とるりちゃんのはじめてのゲーム配信は、マルチでできるホラーゲームを頑張った。ホラーは嫌いでも好きでもなかったけど、るりちゃんと協力するのは楽しくて、二人でぎゃーぎゃー叫びながら進めていった。
コメント欄を見ると、みんな私がゲーム配信してくれるのが嬉しかったみたいで、大盛り上がりで、またしてほしいと言っていた。
「実はさ~最近FPSに興味あるんだよね~」
るりちゃんがそんなことを言っているのを、ミルクティを啜りながら聞いていた。
「こうさ、銃を撃つのって気持ちよさそうなんだよね~華麗に敵をバッタバッタと倒していったら楽しそうじゃない?」
「うーんわからんでもないけど…でも、それが難しいんじゃない?」
「それな。だから練習しようと思って~一緒にやろ♡」
「いや♡」
「えーなんで!絶対楽しいよ~!」
「上手くなる未来が見えない…」
「…銃ってかっこいいよね」
ぴしゃーん、と私に衝撃が走る。
かっこいい、それは魔法の言葉。
昔から、かっこいいと言われてきた私にとってそれは最上級の誉め言葉であり、もらいたい言葉一位である。
「わたしがマシンガンを乱射して敵を誘導し、顔を出したところをあんたが一撃でパンっとスナイパーで仕留める。どう、完璧じゃない?」
「完璧すぎる」
「決まり!さっそくインストールしよ!」
そうして、わたしたちはゲームをインストールしてカジュアルマッチに参戦して撃沈したのだった。
『FPSゲームやってみたけどむずかしすぎてすぐ死んじゃう。ぴえん』
その日の夜にそうSNSに書き込んだほどだった。




