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私は組織から犯罪の仕方を教わった。
違法薬物の作り方、売り方、小型銀行強盗の仕方、チェイスの上手い逃げルート、銃の撃ち方。
ギャング抗争では、銃の撃ち合いをして、ボスがヘッドショットをきめて勝ち残った。
私はなにもできなかった。
すぐに撃ち抜かれて動けなくなって、組織の行方をみんなに任せることしかできなかった。
正式にギャングになった私たち「アストロノート」は中型・大型犯罪をするとき用の服を選んで、ピンク色で揃えた衣装は可愛くて最高だと思った。
でも、自分には似合ってなかったのかもしれない。
私は車の運転も下手で、銃もまともに撃ち合えなくて、イケボ対決でも負けてしまった。
声すら役に立たない私になんの価値がある?
手元のスマホが鳴った。
兎月くんから電話だ。
「もしもし?」
「Kちゃん、今時間ある?」
ちょうどさっき中型犯罪をしてきてクールタイムで細々とした雑用をこなしていたところだった。
「あるよ〜」
「西海岸のところまで来てほしい……話したいことがある」
「わかった〜」
電話が切れる。
私は無線に連絡を入れる。
「兎月くんが話しがあるみたいで会ってきます」
いってらっしゃい、と無線が返ってくる。
私は自分の車に乗って西海岸を目指した。
兎月くんはこの街で警察に入った。
理由は知人に「そのゲームスキルを活かせ!」と引きずられたかららしい。
私が小型銀行を襲ったとき、たまたま兎月くんが現場に駆けつけ、大騒ぎになった。
「Kちゃんがギャングなら俺もギャングになる」
そう言って駄々を捏ね始めた兎月くんを鎮めた。
そんな兎月くんが私に何の話があるんだろう。
また、ギャングになりたいとか言い出すんじゃないだろうか。
悪いが私は今のチームが好きだ。
だから、兎月くんに誘われても抜けることは絶対ない。
「駆け落ちしてほしい」
兎月くんから言われた言葉は予想の斜め上のものだった。
私の瞳が揺れる。
だって、好きな人に全部捨てて一緒に逃げようって言われたら、嬉しくてついて行きたくなる。
この人が本当にほしいのは自分だけだと思えるから。
だけど、私には「アストロノート」を捨てることができない。
みんなのことが好きだ。
例え役立たずだったとしても、あの組織にいたい。
ああ、そうだ。
私は役立たずだ。
価値なんてない。
でも、それなら。
価値ある人間を堕とせばいい。
私は兎月くんの手をそっと握った。
「震えてるね、緊張してる?」
私は優しく声をかけた。
「兎月くんにこんなに思われて、とても嬉しい。でも、私は『アストロノート』を捨てることができない」
私は目を伏せた。
「『アストロノート』のみんなは面白くて元気で面倒見が良くて、こんな私のことを見捨てずに育ててくれた。恩があるの。だから、私は『アストロノート』にいたい」
夜の海岸に波の音と私の声が響く。
野次馬であろう警察官たちが静かに私たちを見守ってる。
「だけどね」
私は左手で兎月くんの手を握ったまま、右手を兎月くんの頬に伸ばした。
「兎月くんのことも手放せない」
海岸で私を待っていた兎月くんの頬は冷たかった。
「兎月くんといると、心が温かくて、世界がキラキラしてて、生きる勇気が湧いてくる」
「だから、お願い」
「私の為に」
「汚職警察になって」




