16
ダディの車に乗り、着いた先は銀行だった。
私はあたまにはてなを浮かべながらついていく。
ダディが警備員になにか渡して、奥の部屋に進んだ。
「このミニゲームやってみて」
パソコンを指差して、ダディが言う。
私はよくわからないながらもパソコンを操作して、ゲームを進める。
「え、このゲーム難しくないですか?」
「Kってゲームあんまりしないんだっけ?難しい?」
「難しいです。ゲームしないって言うより始めたのがここ半年以内の話なんで、慣れてないっすね」
「ま?半年ってマジゲーム初心者やん。なんでも楽しい時期やん」
「そうですねー楽しくやってますー」
なんとかミニゲームをいくつかクリアする。
そして、銀行の奥の部屋に進むと、頑丈な柵の奥に紙幣の山が見えた。
「んじゃ、はい。これを柵に取り付けて」
「え?」
渡されたのは爆弾だった。
「ちょ、ま、え?なんで??」
「いいからいいから」
「なんで爆弾なんて」
「いいからいいから」
「もしかしてこれって銀行強盗」
「いいからいいから!!」
私は青ざめながら、爆弾を握る。
「早くしないと警察きちゃうよ〜捕まっちゃうよ〜」
ダディにそう言われ、慌てた私は爆弾を取り付けてしまう。
ちょっと柵から離れて、爆弾が爆発する。
「よし、お金を拾って!」
「…ええい、ままよ!」
私は覚悟を決めて、お金をカバンの中に突っ込んでいく。
外からサイレンの音が聞こえてくる。
「こらー!犯人は出てきなさいー!」
警察と思わしき声が銀行の奥まで届いて、私とダディは銀行の外にでた。
「人質は?」
「俺が人質ですぅ」
ダディがどうやら人質役をやってくれるらしい。
「解放条件は?」
「どうする、K?」
「うーん」
警察官は男性陣が2人、女性陣が3人いた。
「じゃあ、『トキメキ☆イケボ対決』しましょう」
「え!?」
「かっこいいセリフを言ってときめかせたら勝ちです。審査員は警察官の女性陣3人で」
「なんそれ。おもろ」
ダディが私を指差し言う。
それに対して警察官の2人、いっちゃんさんと漆原さんはすごいいやそうにしている。
「私が勝ったら見逃して、その代わり負けたら即逮捕で」
「オッケー!」
「いいよー!」
「やろうやろう!」
女性陣はすごく乗り気で、楽しそうだ。
「それじゃあ私から」
警察官の女性のうちの1人、恋いろはさんにゆっくりと近づく。
「君といると胸の奥が温かくなるんだ。ふわふわしてキラキラして、世界が鮮やかな色に変わる」
彼女の頬に触れて、熱を確かめる。
「なのになんでだろう。君が他の人に微笑むと、痛くて苦しくて、息が苦しくなる」
私は胸を押さえ、顔を歪ませる。
「お願い、教えて。この感情の名前を」
「以上でーす!」
私の声にみんながドッと騒ぎだした。
「やばー!」
「レベルたっか!」
「Kさんイケボ〜!」
「めちゃきゅんきゅんした!」
「これはボイス販売した方がいいのでは?」
「じゃあ、つぎは警察官の番ですね」
しらーっと男性警官2人が目を逸らす。
「ほら残機2つもあるんですから頑張ってください〜」
「え、どっちもやるの?」
「警察代表で1人でよくない?」
「いや、人数多いほうがそっちは得じゃないですか。ほら、頑張って!」
「くそ…」
いっちゃんさんがスタンバイする。
「君のことが好きだ!付き合ってほしいー!」
「おお、ド直球にいきましたね」
「なんか青春感あっていいね」
顔を真っ赤にしたいっちゃんさんが顔を覆って「タスケテ…タスケテ…」と呟いている。
次は漆原さんの番だ。
「僕はまだまだ弱いけど、絶対に強くなるから」
迫真の声で言う。
「だから、僕に君を守らせて」
強い声が響いた。
これは強敵。
「では、女性陣ジャッジをお願いします。私が良かった人、手あげて」
1人上げる。
「いっちゃんさんがよかった人、手あげて」
ゼロ。
「漆原さんが良かった人」
2人。
「ちぇ、負けちゃったー」
私はいじけて座りこむ。
「Kさんのよかったけど、ちょっと湿ってたのが怖くて…」
「漆原さんは王道でわかりやすかった」
「うーん、これは要研究だな。悔しい」
「じゃあ、逮捕でー」
「俺はただただ大怪我しただけやないかい!」
いっちゃんさんが叫んで、笑ってしまった。




