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二週間後、ギルドは大繁盛して《魔術師》は大活躍を果たした。というのも、日がたつにつれ、攻略するダンジョンのレベルはあがっていきそれに伴いパワーアップは必要不可欠なうえ、戦利品である魔術書を使えるのは《魔術師》だけだからだ。要らない魔術書を売るのにも、また要りようの魔術書を買うのにも《魔術師協会》は大いに役立った。

酒場も大盛況で、特にダンジョン攻略後の打ち上げに持って来いってことで、いろんな人が集まった。ポーションも面白がられ、みんなの壮絶な送り合いが発生していた。それを見るたび自分に笑ってしまうのだった。


「あのー!Kちゃんはいますかー!」


久しぶりに「ギルドマスター」以外の名前で呼ばれて頬が緩む。懐かしい声に、返事をして自室から表へ出た。


「るりちゃん!ひさしぶり!なんだかすごく懐かしい気分だよ~!元気だった?パーティの方は順調?」

「わたしは元気よ。パーティは概ね順調よ、こいつを除いてね」

「こいつ?」


るりちゃんが親指を立て後ろにやるので目線を動かすと、そこには扉からすこし顔をのぞかせた兎月くんがいた。


「兎月くん!来てくれたんだ。あんな別れ方しちゃったからもう会えないと思ってた」


恐る恐ると言った感じで兎月くんがギルドの中に入ってきた。その後ろにはオルカくんもいた。


「オルカくんも来てくれたんだね。よかったら、三人とも酒場で飲んでいきなよ。私のおごりだからさ」


そういって、わたしは三人を酒場に誘導しテーブルに座らせた。

私の隣にオルカくん、正面に兎月くんその隣にるりちゃんがいる。

わたしは店員さんに注文を頼んだ。


「オルカくんにブラッティジュース、るりちゃんにベストフレンド、兎月くんには人魚の涙をお願いします」


すると、兎月くんが目を見張り、俯いてた顔をあげた。


「どうしたの?」


わたしが尋ねると、


「だって『人魚の涙』の酒言葉は……」


そういって黙ってしまったから、私が続ける。


「うん。『仲直り』だよ」


そもそもこの酒言葉は口下手なわたしが上手く相手に伝わりますようにって、なにかきっかけになるようにと思って作ったものだ。


「兎月くん、よく知ってたね」

「酒場に言った連中から酒言葉を聞いた。便利な飲み物があるって。それで……本当は俺の方から送ろうと思ってたのに、Kちゃんに越されちゃったな……」


そういってまた、暗い顔し始めた兎月くんに言う。


「いいんだよ。結果的に仲直りできればどっちからなんて関係ないよ。ごめんね、あの日急に飛び出しちゃって。『お荷物』って言葉がどうしても許せなくて、それでついカッとなっちゃって、それで結局ギルド作ったんだ。後悔はしてないけど、もっと穏便にパーティから抜ければよかったって今なら思うよ。だから、ごめんなさい」


それを聞いた兎月くんの目からぽろっとなみだがこぼれて、次々と落ちていった。


「俺は、Kちゃんにパーティにいてほしかった。だれにもとられたくなかった。だから、戻ってきてよ、Kちゃん」


わたしは不憫でたまらなくなった。この人はなんて生きづらいのだろうと思った。わたしの行動を束縛したいのだろう。わたしを自分だけのものにしたいのだろう。でも、それは叶わない。


「だいじょうぶ。兎月くんとの縁が切れるわけじゃないよ。一緒に冒険行きたいときは派遣されるし、通話したい時はまた通話すればいい。だから、苦しまないで」


わたしは精いっぱい兎月くんを慈しんだ。これは兎月くんが本当に返してほしいものか分からないけど、それがいまのわたしの率直な感情だった。

兎月くんの涙は止まり、そしてその日は静かに帰っていった。




一か月続いた「ファンタジア」の生活が終わる。

兎月くんは泣いた次の日から私をパーティに加え、ダンジョン攻略するようになった。ギルドの運営も順調。楽しい日々が続いた。

閉会式のとき、《魔術師協会》のメンバーに囲まれて、胴上げをされた。

その後、SNSでみんながフォローしてきたので、返しておいた。




「新曲聞いたよ~!めっちゃいい曲だった!特にサビ前の盛り上がり方えぐくない?鳥肌立ったんだけど!」

「ありがとう。ぼくもKちゃんの新しいやつ聞いたよ。相変わらず、テクニックの入れ方につよいこだわりをかんじるよ」

「ありがと~」


あれから2か月、ゆきとくんと通話する仲になり、特に作業通話で互いに追い込みながらやることが多く、戦友という気持ちが高まってきていた。

ぼっちで友達がいないと嘆いていたゆきとくんの正体は有名なボカロPだったみたいで、わたしはコメント欄で総ツッコミされた。さらにいうと、わたしを「ギルドマスター」呼びしてきたダディは登録者数120万の有名実況者で、大先輩である彼に正座させて説教までした私はあの日伝説となった。

もういろいろと大混乱を巻き起こした「ファンタジア」はすでに幕を閉じ、あらたなイベントが幕を開けようとしていた。


「兎月くん『ストリーマー頂上決戦』参加するんだって?あそこの事務所はいつも忙しそうだね」

「あはは、たしかに。大手事務所に所属するって楽じゃないのかもね」


ハルカゼという有名配信者が主催の、「ストリーマー頂上決戦」という大会が行われる。28名の配信者が4チームに分かれ、2日間にわたって様々なゲームで勝負し一位のチームを決める。そんな大きなイベントに兎月くんの所属する事務所が協力に入っており、兎月くん本人も参戦が決定したのだ。


「Kは見に行くの?」

「うん。兎月くんがるりちゃんと一緒に関係者席で呼んでくれたんだけど……正直、いいのかなって……友達が関係者席いるのってどうなの?」

「兎月くんが呼びたい人を呼んでるからいいんじゃない。楽しんできてね」

「そういうもんかな?」

「そういうもんだよ」

「そっか、うん。楽しんでくるね」


その日の雑談はすぐに終わり、お互いの作業を黙々とやるようになった。


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