プロローグ
新連載だす。
繁華街。人々が道を行き交い、路傍のあちこちから欲を誘う香りが広がる。空はとうに暗く変わり、風も冷たくなっているが、熱気は冷めることを知らず、喧騒はどこまでも続いていた。
そんな人いきれを少し外れ、街灯の光もうっすらとしか差さない路地裏に、一人の少年がいた。彼の身体は酷く痩せこけ、肉の落ちた脇腹には肋骨が幾本も浮かんでいる。
いつ頃出来たのか分からないあざが全身のあちらこちらにあり、口の端には血が滲んでいた。
「…今日は…これだけ…?」
漁っていたゴミ箱が底をつき、彼はほんの少し表情を陰らせる。だが、次には元の顔に戻っていて、ゆっくりとその場から立ち去り始めた。
少し湿った路地裏。ネズミが彼の脇を走り抜け、通気口から吐き出される料理の香りにめがけて消えていく。彼の腹も、ぐぅ、と音を立てたが、歩みを止めることはなかった。
繁華街の中心地から外れた、廃墟の立ち並ぶ、郊外のゴーストタウン。一応人は住んではいるが、それは昔からその場所に住んでいた住人たちで、若い世代はことごとく大きな街へと出て行き、その数少ない人口ももうすぐいなくなってしまうだろう。行政の手も入り始めていた。
そんな中の廃墟の一つが、彼のねぐらだった。
半分開いた扉から体を滑り込ませ、雨漏りで腐った部分を避けて奥へと進む。壁の穴から風が吹き抜け、気味の悪い音がたった。
廃墟の一室、ボロボロの段ボールの折り重なった上に、彼は寝転がった。
ぐう、と彼の腹がなった。
空腹を紛らわせようと、彼は空気を大きく吸い込む。
幾分か過ぎたのち、眠気が差してきて、まどろみ始めた頃、廃墟の入り口で物音が鳴った。
ゆっくりと目を開け、彼は頭に強い衝撃を受けた。視界がぶれ、チカチカと星が舞う。
「うっ…あ……」
ぼたぼたと音を立てて生暖かい液体が段ボールに落ちてシミを広げる。
「フッ…!」
ヒュッと風を裂く音の後、バゴっと鈍い音が響き、彼の体が大きく吹き飛ぶ。右の眼窩が大きく窪み、もはや機能していないことは明白だ。
「あああああああああっ!」
彼は腹の底からの悲鳴をあげた。そして、体は反射的にのたうち回る。
「はぁ…んで俺がこんなこと」
その言葉を最後に、彼の頭に何度となく凶器が振り下ろされ、程なくして、彼は死んだ。




