05 円空の乱・覚醒ノ巻
05 円空の乱・覚醒ノ巻
風の噂を頼りに円空は貨物船に紛れ込み、半島の地に入る。
塞国・謁見の間
「まんま猿だね」
「ですね」
「立派なお猿さんだけど、流石に完全成る獣君は無理かな、愛護団体も最近うるさいのよね」
と女王は呟く。
と言われても白猿円空は女王を見つめ続ける。
その前には猿が持参した無数の骨や缶、機械の部品など広げた風呂敷の上に並べ置かれていた。コレクションで、それが献上品のつもりらしい。
女王は立ち上がりその骨を漁り、「ふーん、これは狼かな、随分大きいね君が仕留めたの?」
と猿に話しかける。
猿は首を縦に数回振る。
「全部私にくれるの?」
猿は再び首を縦に振る。
女王は、その猿に目をしばらく合わせている。
そして……
ガラクタの中から壊れた腕時計を拾い上げ懐中から取り出したルーペで調べる。
「コレはブランド品ね、修理すれば使えるわ……よし、試しに通常の半分で、そしてサイの剣」
と横の側近に指示を出す。
側近は円空の肩に注射針を刺し薬剤をその身体に注入する。
しかし円空に変化は無い。
「もう一本打ちますか?」
「いえ、いったん剣を持たせてみて」
そう言われた側近は円空に剣を差し出す。
円空はその剣を受け取ると目は輝き、みるみるうちに筋肉量が増し、その身体か一回り大きくなり始める。
「おっお」と円空は喉を抑え、うめき始める、そして円空の足元を囲う様に青い丸い光の輪が現れ一瞬放出する感じ光りを吹き放つ。
そして間の空気が一瞬張り詰め。
静寂に成り……
「我奇跡を得たり、ありがたき幸せ、女王様」
円空は言葉を初めて話す。
女王は冷静に対応する。
「あなたが、ここに来た理由は何?」
「俺は強く頭が良い、俺こそ島の王であるはずだった、なのに後から来た人間に島を乗っ取られ、挙げ句の果てにその人間の女に牙を一本折られ、さらにその女の息子に散歩していただけで棒で襲われ、二回目の挙げ句の果てに、鉄炮で脅された、おまけにその息子には綺麗な嫁もいる! 山奥に追いやられ冷飯食ってる独身の俺には夜の散歩も許されないのか!!……ウッキーキキキギギギ」
「……それは良くないね、所で、あなたの島は、どこにあるの?」
「人間どもは、俺の島にあわじと勝手に名を付け、俺を円空と呼ぶ」
女王は応える。
「……わかったは、その剣はあげるから故郷に戻り、好きにやりなさい、私があなたを今をもってその島の王に任命します」
と言うと女王は玉座の裏に置いてある大きい宝箱を開け、中から赤いマントと王冠取り出し自らその猿に着けて上げ、頭髪もワックスでカッコよく尖らしてあげる。
「できた、あなた中々のイケメンよ」
『猿は涙を流し、一礼してその場を去る、猿だけに……』
そんな事をひとり思い女王は吹き出す……「ぶっぷー!」
側近は進言する。
「女王様良かったのでしょうか、生態系的……」
「助けを求めて来たものに手を差し伸べる事にその理由はないわ、それに流言に乗って来たのは猿だけなんだからしょうがないじゃない、試しよ、猿で様子見、ダメなら殺されるでしょう、そしてそれでも彼には本望でしょう」
* * *
キューキュキューとカモメの鳴き声が響く蒼空の下……
帰りの船の船首で円空は片足を上げ置く姿勢で腕を前で組み、真紅のマントを風になびかせ、地平線を見つめていた。
そして青空に賜ったサイのサーベルを掲げ思う。
『遂に夢に迄見た言葉を覚えた、もう俺は人間だ……ふふっん〜島の女全部俺の嫁にしたるわ』
その目は輝き希望に溢れていた……。
こうして、島に未曽有の危機が迫っていた?
[終]
解説
流言
それは、策意があり、あえて流す情報である。
サイコ顆粒薬(菌)
鉱石サイの表面に湧く菌と人参薬草を配合した薬、それは遺伝子の核に関与し脳神経を覚醒させ、サイの武器の恩恵をその身に宿し、また使用できようになる霊薬、ただし使用は人生において一回のみである。乱用すると、心と身体は崩壊へと向かう。
サイの武器
それは情報を共有する為のテレパシー的な通信機能を持つ。




