11 訓練の巻
数ヶ月前の僕は地下奥の訓練施設で後悔していた、そして殺されると感じた。
数日前、先生に勧められた事と麻美への嫉妬感もあり島長に甘い考えで弟子入りした。
そう甘かった、優しい島長の裏の姿は鬼だった。
毎日僕を竹刀でコンテンパに叩く。
それは訓練でもなんでも無い、ただのイビりに思えた。
僕は島長に叫ぶ。
「毎日、毎日、これはただのイジメだー!」
そして返って来た言葉に僕は耳を疑う。
「そうだよー」
「……」
『そこまで腐ったか』
と僕は思った。
「殺す気ですか?」
また僕を耳を疑った。
「毎年、訓練で死者は出ておる、そう言う事を今やってるのだよ! 一馬君」
『完全に狂ってる』
と僕は思った。
「麻美にも同じ訓練をしたんですか!」
「ああ、でも彼女は根性もあり天才だ、すぐに私から一本取る様になったわい、紛れも無く天才だな、そしてお前は紛れも無く筋金入りの凡人だ、死ぬと言ってるが、戦場ならお前はもう万回死んでいる、そして何回もコンテニューして四月経ったのに、なーんの進歩もしておらん、前にも言ったが、仕事を変えた方が良いかも知れんな、特例で招集は勘弁してやっても良いぞ、どうだ?、家で嫁のオッパイ吸ってれば立派な勝ち組だろうよ、そうも思わんかね」
僕はその言葉に切れて、島長に食ってかかったがカウンターを喰らい気が飛んだ。
「よし、合格!」
「?!……」
起きたら医務室だった。
「大丈夫?」
ベットの横に麻美が座っていた。
「大丈夫じゃない、あの爺は普通じゃない」
「確かに普通じゃないわね、戦乱期を生き残っただけあるわ、本気でやったら勝てる気全然しないもん」
「僕はこのままこの施設にいたらコロサレル」
「それは心配しなくて良いわよ、明日から外で私が教えてあげる」
「麻美が?」
「ええ、許可が出てたわ、島長が逃げ出さない貴方の事を認めてくれた見たいね、優しく可愛がってあげる」
「麻美、冷静になろう」
「私は、冷静よ」
その後、学生の頃に麻美を袖に振った経緯もあり、覚悟してきたが麻美は意外にも最初は優しく全て寸止めで剣技を指導してくれた。
そして少しし僕も慣れてヒョイヒョイ避けれるように成ると、今度は打速を早め、僕に竹刀を当ててくるようになった。
確かに痛かったが、普通の痛さだった爺、いや、島長の本気殴りから見たら全然我慢は出来た。
それから二月経つと遂に竹刀が擦りもしなかった麻美から一本取る事が出来た。
当てた箇所は二の腕だった。
麻美はニコリとし、「はっあーあぁ、痛ーい〜」と何回少し色っぽい口調で声を上げる。
「大袈裟だよ」
「ふふふ、一馬が聞けるはずだった私の裏声の再現よ」
「しもかよ」
麻美は舌を出す。
そして真顔に成り僕に言う。
「訓練はもうこれで終わり、島長も一馬は私から一本取れればそれで良いってさ、後は戦争になったら一馬はただ逃げて、戦ってるフリして、そのくらいならもう生き残れる力は付いたから」
「僕も皆んなと戦いたいよ」
「一馬はもう勝ちよ、欲しい者は手に入れてるじゃん、後はおねいちゃんと生き続ける事が一馬の勝ちなの、そうして私の為にも」
……その優しさに、僕は少し複雑な気分になり、あの円空が最後に小さい声で僕に言った言葉を思い出す。
『お前、選ぶ相手間違えたんじゃねいか』
そんな草原での稽古終わり、顔に吹き付けた風は学生の頃に受けた風と同じ匂いがした気がした僕だった。
[続]




