序章・終電
出張先である島国でのアクシデントにより業務終了予定時刻が大幅に遅れ、走ったが終電には間に合わなかった。
駅を出ると今時と思うほどの古い屋台が目に入り、ビジホを探す前にラーメンでも食うかと、そののれんを潜ると、腰にサーベルをぶら下げた若い警備兵がカウンターに頬を着け酔い潰れている、この時点では『コイツも自分と同類』と感じる。
そしてチャーシューメンを頼もうと思うも、そのカウンターの先の四角いおでん鍋が目に入る。
ただ中に一つも具は浮いてなかった。
様々な意味で『なんだ〜』と残念に思うと。
声をかけられる。
「ゴメンなさい、今日は売れに売れてもう何もないんです」
見上げるとおでん屋に似つかわしないコック服を着たどこかで見たような赤髪の店主が線香の様に漂う鍋の湯気越しに、それは拝む様に俺に手を向け合わせていた。
俺は思う、これも終でん……。
と、いう事で帰ろうとすると「待って」と呼び止められ、振り向き、目の前に差し出しされたのは、タッパーに入られた二個のロールキャベツだった。
「余り物ですけど、ご飯も少しありますよ」
その行為に嬉しくも俺は複雑に思う、それは、今まで孤独である負の力を生きる気力に変換し生きて来た俺には少し迷惑にも思えたからだ……
とは言え、冒頭に言った通り散々な理由でその日は夜も昼さえ飯抜きだった事から凄い腹は減っていたので、そのロールキャベツをつまみながら、スマホで明日のスケジュールの調整をやっていると、人生の敗北者と勝手に思っていた兵士は迎えに来た女性に腕を引っ張られながら帰って行く。
その姿を見て『なんだ嫁持ちだったか、ちぃ、エリートめ、そのうち半島と戦争にでもなって、それに駆り出されちまえ! その時お前が犬から俺と同じ狼になる事ができれば生き残れるかもな!」と俺はそんな嫉妬から来る腐った思いにふけた後、虚しくも寂しくなり、ふと出されたご飯は冷飯だったがとても美味く感じ、礼を言い忘れたと思い見上げると
店主は座りウツラウツラとしていた……。
[終]
予告
影狼突破撃
人生を変えた出来事を心胆のバネにし勇気を振り絞り行なう突撃の事。
ロボブリンガー
孤高孤独な狼王の名を冠した強襲仕様のサーベル。
未熟ながらも迫り来る戦いの時が近い為、一応は皆伝の証にと師から授かった灰色な古の湾刀。
その剣は継承が途絶えてしまった匠の合金技術により、刀身の耐久性及び刃の切れ味の持続性が飛躍的に高く、それに加え、刃の切れ味を削ぐ脂肪などの汚れも不着しにくい特殊な謎の加工が全体に施されている。
実戦である戦争の野戦は、剣技も何もあったもんで無い乱戦であり、故に、この強襲剣のタフな性能が生存率を上げる効果は地味に高く、またこの剣を持ってしてその持ち主によっては、敵陣へ単独突入が可能と思われる事から、後に過ぎたる物の代名詞と成る。
元は島の長が皇帝から授かった宝剣。