五話 カレーを食べに行く事になりました
五話 カレーを食べに行く事になりました
黄可以は要には分からない言葉でまくし立てた。おそらく状況を把握したいのだろうが、喋れる人がいない。
「日本語大丈夫ですか?」
黒崎が言うと黄可以はハッとした表情を浮かべた。
「大丈夫。日本語」
どうやらある程度は出来るらしい。彼女から事情を聞き出せるかもしれない。
「あの、私、サイズです。あなたは私のママですか?」
サイズは聞きたい事をズバッと聞いた。黄可以は驚いていたが、何かに納得したようだった。
「分からない。私、兎に頼まれただけ。代理母しただけ」
「そう……ですか」
サイズの声は落ち込んでいた。せっかく親子の対面なのに、相手がこんな反応じゃ可哀想だ。
「サイズ、私の娘?」
「はい」
頷く振動で画像が揺れる。
「私の娘……」
黄可以はサイズを掌に乗っけたが、重かったのか激しく揺れた。ずっと寝ていたからか腕の筋力が弱ったのか。
ぐーぎゅるぎゅる。
黄可以のお腹が鳴った。そういえばまだカレー爆弾の効果は消えてないんだろうか。
「カレー食べたい」
黄可以はサイズを見ながら言った。
「食堂に戻ろっか」
能が言うと、みんなげんなりしていた。
「ママにカレー食べさせてあげようよ」
サイズは掌の上で訴えた。
「今まで食べてないのに、急にカレーは危険なんじゃ……」
「まずは流動食だろう」
黒崎とエクスカリパーが否定派になった。
答えが出ない中、部屋のドアが開いた。
「可以!」
兎が入ってきた。能や黒崎に見向きもせずまっすぐカメラのほうに向かってくる。
兎は黄可以に抱きついた。その影響で、サイズは宙に放り上げられたが、兎の肩あたりに着地する。
「良かった。良かった」
兎は泣いていた。黄可以はまだ状況が飲み込めていないみたいだ。
「兎、おはよう」
「おはよう……って、もう昼だよ」
「カレー食べたい」
「そういえば私も……」
兎は黄可以に繋がっていた点滴を外し、立ち上がらせた。彼女はずっと寝ていた人間とは思えない挙動で立ち上がる。
「いきなりカレーはきつそうだよ」
二人が言っていた事をサイズは兎に言った。
「大丈夫。自己責任、自己責任」
「大丈夫。カレーは飲み物」
食堂に戻る事は決定した。