二話 スマホで捜すんです
二話 スマホで捜すんです
能達は五階の部屋にたどり着いた。が、そこからが大変だった。能と黒崎の部屋が散らかりすぎて、スマホを簡単に見つけられなかったのである。能は言わなくても部屋が荒れていると思っていた。が、彼女も同類とは。
「黒崎、あなたはまともだと思っていたが……」
エクスカリパーが黒崎の肩で呆れている。
「いや、これは。能にリズムを合わせてたら片付ける時間がなかったというか」
「だったら私より遅く寝れば良いじゃんか。その時に掃除すれば」
「あなたを見張るのに疲れたんです!」
一言で能はダメージを負った。
「早く探して出ようよ」
「黒崎、どこにしまったか覚えているか?」
「それが……」
エクスカリパーの問いに黒崎は首を振った。
「私のスマホ!」
さすがに許されるものではない。能が怒るのも無理もない。
「能ちゃんの番号は?」
「教えてない。知ってるのはお兄ちゃんと就だけ」
「え? サイズに教えてないの?」
「うん、今日みたいに懐いてくれる事なかつたからね」
「じゃあ、要が電話すれば良いんだよ。ね、要」
この段階で黒崎に要の存在がバレた。
「能のお兄さんですか」
「うちの妹がやらかして申し訳ない」
「こちらもすいません。飲まなきゃやってられない日があったんです」
要は黒崎にもう一度謝り、能の番号に掛けた。
洗濯物の山から音がする。
「あ、そうだ。あの時……」
その後は聞き取れなかったが、黒崎は自分の行動を思い出したようだ。
能は音のする山をかき分け、服のポケットからスマホを取り出した。そして高々と掲げる。伝説の剣を引き抜いた勇者のように。
そして画面を見ると、この世の終わりかのような顔になる。
「お兄ちゃん、画面にヒビが入ってる」
電話に出て、要に愚痴ってくる。出る必要はないのに。困った妹だ。
「大丈夫か?」
「見えないわけじゃないけど……」
恨めしげに黒崎を見た。
「踏んでしまう事なんて日常茶飯事です。ほら、私のだって」
黒崎は自分のスマホを水戸黄門の印籠のように見せつける。能のよりひどい亀裂だ。
「自慢すんな。私が持っていれば傷なんてつかなかったでしょ」
黒崎は答えに窮している。
「弁償だかんね」
能はスマホを操作する。
「お義姉様達がUnknownになってる」
能のスマホをサイズ達は見ている。
「他にもいるよ。チャバネゴキブリ……」
サイズの発言に場が凍る。
「ぎゃあああ!」
みんな叫び、部屋を出ていった。