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【完結】ガン=カタ皇子、夜に踊る  作者: 2626
Second Chapter

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202/297

第201話 どうしたら良かったのだろうか

 「ねえ、愚弟」

ただのコトコカは牢獄の中で膝を抱えてじっとしていたが、隣の牢獄に向けて声をかけた。

「何だよ、お姉様。……いや、もうお姉様じゃないんだっけな」

トウルドリック、いや『トウル』の力ない返事がする。

「ええ、まさか……私の方が救貧院の捨て子と、取り替えられていたなんてね……」

「ちっとも似ていないのは俺の方だったからな……。全くの予想外だったよ」

「……遺書は、書かせて貰えるかしら」

「ピシュトーナは全員が処刑されるだろうから、無理じゃないか?こうなると、溺れ死んだ母御前が羨ましいな――俺達の公開処刑は、特に派手にやると思うし」

「そう……。ねえ、トウル」

「どうしたんだ、コトコカ」

「死にたくない――私、死にたくない!誰かに恋もせず好きな事もろくに出来ていないのに、死にたくない……!」

一度死にたくないと口にすると、涙が止まらなくなってしまった。

「ずっと比べられて辛かった!でも、やっと自分の価値を見つけたと思ったのに!どうして……どうして……!」

「人生ってそんなモノだよ。俺は戦場で戦ったからコトコカよりも知っている」

あははは、とコトコカは涙を拭って無理矢理に笑った。

「『そんなモノ』だなんて、またお得意の失言じゃないの……」

「いや、失言じゃない。……なあコトコカ、俺達だって死ぬまでは生きるしか無いんだ」

「トウルの癖に。ねえ、死が目前に迫ったから頭がまともになったの?」

「もしかしたら、そうかもな」


 ――遠くから足音が幾つか聞こえたので、二人の会話は止まった。黙って項垂れて足音の主達が現れるのを待つ。

やがて親衛隊の兵士に守られて、セージュが現れた。親衛隊の兵士が二人に告げる。

「罪人コトコカ、罪人トウルに第十三皇子『セージュドリック』殿下が面会なさりたいとお望みである。――両者、顔を上げよ」



 「えっと、ええと……」

セージュドリックはしばらく言葉に迷っていたが、意を決したように背を伸ばすと、二人に話しかけた。

「僕は、この帝国城で暮らすのは、絶対に、嫌なんです」

「「……」」

「ここには、怖い人が、いっぱいいる。精霊獣がいても、毎日のように、休むことも出来ないで、その悪意と戦わなきゃいけない、から……」

思っている事を、一生懸命に彼は言葉にしているのだった。

「だから、陛下に、お願いをしました。お外に出たい。でも絶対に、痛くされない所に行きたいです、って。そうしたら、ホーロロに行く事を、勧められました」

二人は絶句する。

「えっ……」

「ホーロロ国境地帯は、在来の部族衆が……武装蜂起の寸前で……」

そんな危うい所に、こんな少年を一人送り込むのはあまりにも過酷では無いのか。

「僕には、精霊獣がいるんです」

驚く二人の目の前に、『ドルマー』が現れた。

『……こうして会うのは久方ぶりになるな、コトコカ。トウルとは初めてになるか』

「精霊獣……!」

「そうか、彼らは精霊獣とそれを従える者を神使として崇拝している!」

「でも」とセージュは言葉を続けた。「僕は、皇族として、何の勉強もしていないんです。だから――側に、その勉強を終えた人がいると、助かるんです」

まさか。

コトコカもトウルも俄には信じられなかった。

「陛下も、あなた達が、二度と帝都に戻ってこないなら、鞭打ち3回で、許すって……」

「どうして……罪人の私達を選んで下さったのですか」

コトコカが訊ねると、セージュドリックは微笑んだ。

「あの……トウルが、自分のじゃなくて、お姉ちゃんの助命嘆願を、真っ先にしたから。きっと優しい人なんだろうなって、思ったんです」

「……」

「お別れを言いたい人、いますか?」

「ネレー……に会いたいですわ。もし会えるのならば、ですが……」

「ネレー?もしかして、ノエム姐さん……ですか?」

「彼女が何処にいるかをご存じなのですか、殿下!?」

「う、うん。じゃなくて、はい!僕にも、よくお菓子を分けてくれたから」



 「陛下。何時の日かセージュと『ドルマー』を御旗に掲げ、トウルがホーロロの部族衆を率いて、帝都へ攻めてくる可能性はお考えにならなかったのですか」

「考えた上だ、フォートン」

太極殿に向かう道で、皇帝と『賢梟』が歩きながら小声で会話している。

「幾ら恩を売った所で仇で返すのが此の世の常ですよ、陛下」

「かと言って、無知なセージュドリック一人をホーロロに送り込む訳にも行くまい。すぐに利用されて終わるだけだ。故に帝国城では不要だが、外では有用な者をその側に付けたのだよ」

「……陛下は、本当に……」

「何だ、フォートン」

「いえ。かくなる上はあの世の果てまでお供いたします」

「それは助かる」

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