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人国 第一王女との会談 4

 正直に言えば、ミアに関してはこのまま放置しておいても良さそうな気はする。


 多分、勝手に自滅しそう。頭は多分、悪くないのに人間関係構築の為のコミュニケーション能力と、責任感が欠落している。自分さえよければ構わない、自分の目的が全ての優先、という二十一世紀後期に多くなった悪い意味での『自分中心』で『自由な』人。

 個を廃する滅私奉公を私は肯定しないけれど、自分のやりたいこと『夢』が最優先で叶える為なら他人に迷惑をかけようと気にしない。

 というのは何か違うと思っている。

 周囲の人間は『主人公』の夢を叶える為の踏み台じゃないのだ。

 まあ、話が小説ならそんな人物の成長や考えの変化。『夢』に対して理解、協力してくれる仲間の絆とかが物語の主軸になっていくものなのだろうけれど。

 そういう困った所も『主人公』の弱点と言う名の魅力になっていくのだろうけれど。現実にいられたらそういう人物は周囲の輪を乱す害悪になりがちだ。


「自分は特別だ!」「認められないのは周囲が悪いから!」

「もっと自分を褒めてくれないのはおかしい!」


 あげくの果てに


「どうして、私の気持ち、夢を解ってくれないの!」


 って逆ギレしたりすることだってあるし。


 主人公となる人物は、その思いから周囲を巻き込み、変えて行こうとすることが多く。

 そういう点で言うならミアは主人公としての素質は十分で、彼女を中心に物語が進むなら、コレット様やフェレイラ様はミアの夢を阻む悪役令嬢ポジになるのかな?

 でも、私としてはむしろ、誰に褒められなくても自分のやるべきことをしっかりと見据え、投げ出さずに頑張る人にこそ報われて欲しいと思う。

 だから


「個人的には、お二方に協力したいと思っております。心からの思いで」


 これは本心。ミアの排除と国の清浄運営を願う彼女達に協力したい。ただ


「ミア様への商品の提供を遮断することはやや難しいです。実は弱みを握られているので」

「弱み?」「脅迫でもされているの?」


 私の返事を待っていた方々は眉を顰める。

 脅迫されるような後ろ暗い所があるのか? という意味だろうね。

 実は後ろ暗い所だらけではあるのだけれど。


「はい。その人物の将来がかかっているので無碍にはできないんです」

「彼女が不条理を為しているのなら、後ろ盾になることはできますよ」

「ありがとうございます。

 こちらとしても、対処は考えているのですが、なかなか難しく……」


 魔国の民がアカデミアで学ぶことを生粋の貴族の方達がどう思うのか、判断できない。

 今、彼女をキレさせて本当にウォルの正体をバラされたりすると、ただでさえ孤立無援の男子寮で頑張っている彼に更なる苦労を押し付けてしまう。対抗する手段や腹案が無いわけではないけれど、その為には、しっかりとした調査を行った上で、仲間と準備と時間がもう少し必要だと感じている。


「シャルル王子達がお戻りになれば、契約により様々な品の流通を優先させることにもなっておりますので、今後戦の為の砂糖の供給などにミア様が頼られることは無くなると思います。また、謝罪も頂きましたから、流通の経路も正常化させて参ります。

 全ての方に、お望みの品が届くにはまだもう少し時間がかかるでしょうが、ミア様以外から品物が手に入らなくなる、ということは無くなってくると存じます。その上で、まだアインツ商会の協力が必要でしょうか?」

「アインツ商会の、というより、欲しいのは貴女ね」

「私? でございますか?」

「貴女の力が必要であると感じています。……セイラ」


 フェレイラ様が静かに微笑する。でも彼女の瞳は冷静で沈着、計算の王族の眼差しで私を見ているように思えた。


「私を、でございますか?」

「ええ。こうして出会って、会話してみて貴女を欲しがったアルティナや、ソフィアの気持ちも理解できました。

 商品抜きで、貴女と言う人材は、確保しておくべきだと感じているの。

 ねえ……セイラ?」


 少し、背筋に冷たいナニカが奔る。

 イヤな眼差しではないけれど、私を値踏みしているようでちょっと怖い。

 そう思っている隙に、フェレイラ様は、腰を上げ私の前に立つ。


「少し、手を握ってもいいかしら?」

「え? あ、はい」


 ちょっと、断れない状況だ。不安を感じながらも私は手を差し出す。

 スッと、躊躇うことなく膝を折り、視線を合わせるとフェレイラ様は、私の手をご自分の両手で包むようにして目を閉じた。

 フェレイラ様の周囲に蒼い光が漂い、それがやがて私の周囲をも舞い始める。


 時間にして数分の後、光は静かに収まって消えて行った。

 思ったより長くかかった『それ』を終えたフェレイラ様は、立ち上がり目を開く。


「なるほど。ミアが貴方達を『脅迫』していたネタはこれかしら?」

「え?」


 どこか一人で納得したように頷くと、フェレイラ様は私を見下ろした。


「『サクシャ』とはどういうクラスなのですか? セイラ」


 私の生命線を見抜く『聖女』の眼差しで。

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