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魔国 身体検査とレベルアップ?

 魔宮から、なんだかんだで『帰還』した私が魔王陛下との面会を許されたのは目覚めた翌日の朝のことだった。


 勿論、事情を説明して頂きたくて、直ぐにでも謁見を申し込んだのだけれど、忙しいと却下されたことと、ベルナデッタ様から


『体調に不具合がないか調べます。人間が魔国人になる例はそう多くないのです。

 私は人間の治療には自信がありません。見かけは大丈夫でも内側に傷が残っている場合もありますからね』


 と言われて、神殿で身体検査っぽいものを受けていたからだ。

 ベルナデッタ様は、魔眼族の御出身。

 闇色の瞳は生物の理を全て見据えると言われていて、本人が気付かない病気やケガなども見抜いて下さる。そして特別な力で治療を行うのだ。

 補助する神官達はいるけれど、基本的に一人で魔国の体調不良者を治療しているのでいつもお忙しくしていらっしゃる。

 先日は人国の聖女の治療もした筈。


「とても良い子でしたよ。こんな私を慕ってくれて。救えて嬉しかったわ」


 そのベルナデッタ様を私はほぼ一日借り切って、体調確認や、サポートをして頂いたのだ。


 記憶が全くないのだけれど、容量不足と、それを乗り切る為の『洗礼』は人間の身体にはかなりの負担がかかるものだそうで、検査の最中にも何度かフラッシュバックというのだろうか。心身の激痛や吐き気が襲って来た。


「身体が急激な変化に適応しようとしているのです。無理に抗わず、自分自身をしっかりと認識するコト。そうすれば、徐々に落ち着いていきます」


 とはベルナデッタ様のお言葉。


「『洗礼』の時の負担は、多分魔王陛下が対応して下さったのだと思いますよ。本来ならこの数倍の苦痛が襲ったと思いますけれど、記憶を消して下さったのではないかしら」

「そんなこともできるのですね……」


 確かに、頭の中が妙にすっきりしている。

 余計な悩みとか心配がなくなったような感じ。

 身体も軽く、前よりも早く走ったり、飛んだりできるようになった。

 技術がないから、何ができるとか、戦いが強くなったとかはないけれど。


 あと、自分の『視る』力で自身を見ても何も見えないのは変わらないけれど、他の人を見ると、前よりも少し、詳細が見えるようになった。

 例えば、ベルナデッタ様なら以前は『聖女』という冠と、向こうで言う所のHPとMPゲージしか見えなかったのが、今は目を凝らすと

 クラススキル 『聖女の回復』

 種族スキル  『生命眼』

 というのが見える。外にも攻撃魔法がいくつか。

 あ、ベルナデッタ様には了解を貰っているよ。

 私のサクシャのスキルと思しき力で、目の前にいる相手の能力がなんとなく解るって言ったら、


「ここでの検査と回復の間、積極的に力を使ってみなさい。洗礼が貴方の内部にどのような影響を与えたか見たいから」


 って。人間に洗礼を与える事例そのものが珍しいから、データが欲しいとはさっきも言われた事。

 ベルナデッタ様。回復の魔術の他に攻撃魔法も少し、習得していらっしゃるみたい。


「……ベルナデッタ様、攻撃も行けるんですか?」

「本当に見えるのですね。魔眼族でもないのに凄い事。

 少しだけ、ですよ。戦場などで怪我人を治す為には必要な事もありますから。

 でも普通は使いません。攻撃に使う力があったら、その分、一人でも回復したいですから」


 だって。聖女の鏡だ。


 他にも色々とできること「スキル」があるらしいけれどそっちは何故か、あまりよく見えない。

 見える場所と見えない所があるのだ。

 ベルナデッタ様以外の神官さん達だと『神の加護』『回復魔法』とかのスキルがあるのが解った。使える術はおなじだけれど

 これは生まれ持ったものと、後天的に習得したものの違いで、知識や勉強である程度の魔法が身に着けられる人もいる、ということらしい。生まれ持った『クラス持ち』の方が相対的に見て強いらしいけれど。

 神殿の護衛士さん達は「剣術」とか「槍術」「火の魔術」など。

 つまり、戦闘系のどんなスキルを持っているかが見えるようになったのだと思う。

 レベルアップ、したのかな?


 最終的な検査結果は、外見の変化、異形化はなし。

 体内も人間族の臓器そのまま。

 ただ、全体的な出力と強度は上がっている、ということらしかった。

 どうせレベルアップしたのなら、もう少し背が伸びたり、女らしい身体になってくれればよかったのに。とはちょっと思う。

 あと、転移術も使えるようになっていた。理屈とか、術式はわからない。

 ただ行きたいと思う場所を思い浮かべ、頭の中でスイッチを入れると移動できる。リュドミラ様が前におっしゃった通り、術を取得してから行った場所しか行けないみたいでまだ私が行けるのは 王宮の客間と神殿内部だけだったけど。


 で、その日は神殿に泊まって様子を見て、翌日、面会の許可が出たので神殿から魔王陛下の元に向かった。ウォルやリサが心配しているから、一度家に帰りたかったのだけれど、まず魔王陛下に会ってからだって言われたので仕方ない。

 謁見の為の服を始めとする着替えその他は王妃様が整えて下さった。


「私の幼い頃の服を実家から持って来させたの。今度時間ができたらちゃんと誂えましょうね」


 ってウキウキでおっしゃるけれど、用意された服はどっからどう見ても今まで私が来ていた使用人の服じゃなくって、華やかなお姫様ドレスばっかり。


「えっと、魔王様との謁見、と言っても今まで何度もやって来た訳ですしいつもと同じ服で良くありません?」

「ダメよ。陛下の御命令ですから。貴女を、ちゃんとした服装で謁見に連れてくるようにって」

「なんでです?」

「それはまだ秘密。魔王陛下からお聞きなさい」


 妙に笑顔なのが気になる。

 で、王妃様にエスコートされて、謁見にやってきたのが今なのだ。

 子ども用の可愛らしいドレスを身に纏って、ご無礼にならないように今まで叩き込まれてきた挨拶や礼儀作法を総動員して御前に上がると、執務机で作業をなさっていた魔王陛下は作業の手を止め、私と、付き添いの王妃様を迎えてくれた。


「魔王陛下。お忙しい中、謁見をお許し下さいましてありがとうございます」

「……回復したようで何よりだな」


   魔王陛下が私を見る目は、前と変わっていない気がする。

 ちょっと便利で小生意気な子どもを見る、厳しくも優しい眼差し。

 だから私も、変わらない態度で顔を上げる。


「おかげさまで。大きな変化は無いとのことでした。

 早速ですが、あの魔方陣の間で一体何があったかお聞かせ頂けませんか?

 私になんかして魔国人の一員にしたとかなんとか。

 ちょっと色々混乱しているんですけれど」


 国王陛下に接する臣下と考えればダメダメなタメ口かもしれないけれど、ここはあえてそうしてる。

 陛下が何を考えて、私を魔方陣の中に放り込み、何を考えて『洗礼』?なんてかけたのかしっかりと確認しないと。

 けれど、返事より先に飛んできたのは黄金のリボンで結ばれた羊皮紙。


「え?」

「その話をするより先に、それにサインをしろ」

「何ですか? これ?」


 私はリボンをするりと外して羊皮紙を広げる。

 豪華な箔押しっぽい金の文様で縁取られた紙には多分、何か術式が籠っているのが感じられる。

 古風な文字も、インクも多分、同じ。只の書類じゃ……ない。


「養子契約書だ」

「へ? 養子って?」

「養子は養子だ、知らないのか?」

「いえ、知ってます。義理の親子関係。ウォルの弟のディオルグ君のような……」


 神の真名子。特別な力を持つであろうといわれるディオルグ君は今は宮殿で保護され教育を受けている。魔王陛下の養子として『神』と魔国人を繋ぐ神子的な存在としていずれは高い地位に就くだろうと。


「アレはまだ幼年故、正式な契約はまだだがな。最低でも十歳。

 ある程度の教養がつき、自分の意思で王族に属すると決めてから、正式な契約を行う。

 契約を行った後は、逃れられぬ。

 王家の一員としての責任を死ぬまで、場合によっては死後も背負う」

「死後も?」

「それは王だけだがな。王は死後、自分の魂を国の礎となるべく捧げる決まりになっている」

「そうなんですね。で、なんで私にその養子契約の書類を?」

「責任を取る為だ」

「責任、ですか?」


 意味が解らない。

 手の中の文書を見つめる私に向かい、立ち上がった陛下は言い放った。


「そうだ。セイラ。

 お前は今日より、魔王家の養女。私の娘とする」

「へ? 養女?」

「王位継承権 三位。正式な次期魔王候補として迎えてやる。

 そのつもりで今後、励め」


 ぽろっと、書類が私の手から落っこちた。


「な、なんでですかあああ!!」


 その日、魔王宮、魔王陛下の執務室に響いた私の絶叫は、防音の魔術ぶち抜いて、城中に響き渡ったという。


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