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魔国 あらすじ確認と新しい登場人物

「ステラは、まだ魔国に来たばかりでしょう?

 この国の事をどのくらい知っていますか?」


 王妃様の凍る刃のような憎しみは、ありがたいことに私にぶつけられたものではなかった。食事をしながら、横に控える私に柔らかく問いかける。


「申し訳ありません。それほどは。

 地の恵み豊かな国。そして、私のような棄てられた孤児を救い上げて受け入れて下さった優しい方々の国。それくらいです」


 それは本当。

 私が物語をエタらせる前。舞台はまだ人国と物語の『鍵』となる魔宮探索までで、魔国まで細かく設定していなかった。

 魔国の王子『ウォルフラム』と、主人公である第四王子との邂逅も始まったばかり。

 どちらも互いを敵としてしか認識していなかった筈だ。


「魔国は悪魔の国。人が紛れ込めば八つ裂きにされる」

「住むモノは全て呪われた醜い姿をしている」

「地獄のような厳しい環境の世界だ」


 とさんざん教会の司祭達に脅されてきたけれど、実際に来てみたらそんなことはないとすぐ解る。

 確かに外見的に角が生えている人や、背中に翼がある人とか、獣と人間を合わせたような獣人とか、身体の凄く大きな巨人とかがいるけれど、基本的にはそんなに変わらないと思う。

 食事を作って食べて、服を着て、外出して仕事をし、寝る。

 普通の生き物だ。

 むしろ向こうの世界より、よっぽどみんな優しい。

 私の事も、サラの事も可愛がってくれる。

 三食暖かい食事が貰えて、お風呂にも入れて、清潔な服を着て、暖かい寝所で眠れる。

 十分に幸せ、感じてる。

 今となっては向こうの方が地獄だと思うよ。


「貴女が不思議な力を持つが為に捨てられた。という話は聞いています。

 他の子ども達、幾人もと共に廃棄されたと。

 本当に腹立たしい事。

 魔国では子どもがなかなか生まれないというのに」


 吐き出すようにおっしゃる王妃様の言葉に私は首を傾げる。


「魔国では、子どもが生まれない、んですか?」

「ええ。100の夫婦がいたら、子が宿るのは5~10。無事生まれるのは、きっと2~3程度ね」

「そんなに?」

「魔国の環境。もっと言うと魔宮から吐き出される瘴気が、子どもの生育に良くないようだ、ということのようよ。

 魔国の者も、人国に行くと普通に妊娠、出産ができるらしいから」

「そうなんですか……」


 魔宮というのは地上世界では『神の塔』と呼ばれる魔国と地上世界に一つずつある『創世神リーヴルヴェルク』が遺した迷宮。

 星に生きる人間、魔族。全てへの試練だと言われている。


『迷宮を踏破し、我が元に辿り着いた者に、種族に。

 私はこの世界の全てを与えよう』


『創世神リーヴルヴェルク』はそう告げ、多くの人間、魔族が迷宮に挑んだけれど入る度に変わるダンジョン。

 倒しても倒しても尽きる事の無い魔獣。

 そして最終階がどこかも解らない困難から何百年も攻略が目に見えて進んでいないのが現状だ。でも、完全に誰も攻略していない状態で放置すると迷宮は瘴気と、魔獣を外へと吐き出してしまう。

 だから、地上世界では罪人を中に住まわせたり、定期的に兵士を探索させたりしているとヴィクトール様が教えてくれたっけ。


「魔国では魔宮に人を常駐させたりしないんですか?」

「定期的に人は入れていますけれど、どうやら魔国の迷宮の方が瘴気が強いようなの」


 瘴気の影響で子どもができない、かあ。

 私はそんな設定はしていないのだけれど、私が作っていない部分は色々とオリジナル要素が強いからその一つなのだろうと思う。

 地上世界では、そんなことあったかな?

 多分、無かった。私達の孤児院は5歳くらいまでの子しかいなかったけれど、それでも一月に5~6人増えていたし。

 っていうか逆におかしいよね? 毎月なんでそんなに『孤児』が増えるの?


「一度、戦になれば魔国の民の数も戦力も大きく減ってしまう。

 だから、下手にこちらから仕掛けることはできないの。

 人国には知られる訳にはいかない秘密、ですけれどね。

 最近は、人国から逃げて来る人間を受け入れたりもしているけれど人口減少にはなかなか歯止めがかからないわ」

「いいんですか? そんな秘密を私みたいな子どもに話して」

「だって、貴女はもう魔国の民でしょう?

 王族には人見の才が与えられています。最低限、目の前の人間が信用できるか?

 嘘をついていないかくらいは感知できるつもりです」


 当たり前のように王妃様はそう言って下さる。

 だから、かな?

 国王陛下は私達を助けてくれたのか。

 魔国の人達はみんな親切なのか。

 人間でも、貴重な子どもを見捨ててはおけない、と。

 役立たずだからゴミと言い切り、子どもを遠慮なく捨てる人国とは大違いだ。

 ちなみに私は人国だって、使い物にならない子どもを捨てるとか、そこまで酷い設定はしていなかった。

 王族である国王と、第一王子、第二王女をクズ設定しただけで。

 虐げられた第三王女と第四王子が上澄みとして共感を得られるように。

 まあ、トップがクズなら国もクズになると、想像できなかった私が悪いんだけれど。


「子どもを産み、育てる為にひっそりと人の国に赴き暮らす魔族は少なくはないわ。

 見つかれば即座に追われて、掴まれば死、あるのみ。だから命がけだけれど」

「それでも、子どもを作りたいんですね」

「子どもの生まれない世界に未来はないもの。人国の者達にはその辺が解らないようで腹立たしいわ。本当に。

 奪われた子ども達の命分、奴らを殺してやりたいくらい」


 苛立ちをぶつける王妃様のお気持ち、解らなくもない。

 きっと王妃様も魔王様の御子が欲しいんだ。

 でも、王妃様やまして魔王様が、国を離れることが出来るわけがない。

 だから100分の5の確立を待つしかないわけで。


「……ありがとうございます。王妃様」

「ステラ?」


 私は自然と膝を付いていた。

 心臓の上に手を当てて、頭を下げる。厨房の人に教わった最上級の礼、だ。


「いらないと、捨てられた私達を拾い上げ、気にかけ、憤って下さる。

 そんな二方の元に辿り着けたことを、心から感謝しております。

 私は非才な子どもに過ぎませんが、全てを賭けてお二方と魔国の為に尽くしたいと思います」

「……。貴女、本当に5歳? 随分と大人びていること。

 あの方が珍しくて面白いものを拾った、と喜んでおられたけれど、本当ね」


 王妃様が目を瞬かせた。

 やりすぎだったかな、とも思うけれど、王妃様のお気持ちは嬉しかったし、魔国に忠誠を尽くして働こうと思ったのは嘘偽りない思いだから。

 私が転生者で、違う世界の記憶を持つことは言わないにしても感謝の気持ちは捧げたい。


「大人びて……というか、向こうではこれくらいできないと、生きていけなかったので」

「そう……。やはり人国は滅するべきだと改めて決意したわ」

「私も、早く大人になって、そのお手伝いをしたいです」


『サクシャ』のスキルは未だ影も形も見えず、今は保育士の知識と技術でしか役に立てないけれど。

 何ができるかは解らないけれど。

 できるならこの世界で成り上がりたい。


 そして私達をゴミと虐げ、投げ捨てた奴らに復讐して、今なお苦しむ人国の子ども達を助けたい。その為にも可能なら人国で、数少ないまともな人物で在る筈の主人公その1 第四王子シャルルとの接触を試みる。

 理想はもう一人の、まともな王族。それ故に悪役令嬢の汚名を着せられ魔女として魔宮に封じられ、最終的には準ラスボスになる第三王女「リュドミラ」の追放を阻止すること。

 追放は無理に阻止しなくてもいい。彼女が罪人として迷宮に封じられる前に助けて、魔国に引き入れる事ができれば最高だ。

 リュドミラはスキル『貴族』や『王族』こそないけれど、人国最高の魔術師で、それを利用されてラスボスに世界の敵として作り替えられてしまう。

 彼女を助け出し、味方にできれば魔国主体で、物語を良い方向に書き換えられる可能性が高い。


「期待しているわ。本気で上に上がりたいと思い、その為に学ぶ気があるのなら、手助けしましょう」

「ありがとうございます」


 私の計算も思惑も知らないだろうに、存在そのものを認め受け入れて下さる王妃様の優しさがありがたくも嬉しい。

 私は運が良かった。

 今思えば魔国に落とされたことも、魔王様に救われたことも。

 当面は身体が5歳、幼児だからまともに役に立てそうにはないけれど、厨房で働きながら知識を身に着けてまずは王妃様のご期待に添えるように頑張ろう。


 と思いつつ、私はちょっと首を傾げていた。

 あれ? でも考えてみるとおかしいな? 

 魔国王には王子がいた筈だ。これは、既に書いたことだから間違いない。


 額に三つ目の瞳を持つ王子「ウォルフラム」とその弟「アルヴィース」

 力は強いけれど身体は弱い弟を守る為に瘴気を少しでも減らそうと、王子の身分でありながら先陣を切って魔宮に挑んでいた「ウォルフラム」が、人国 第四王子 勇者「シャルル」と出会う事で物語は次のステージに入るのだ。

 でも、さっきの話からすると魔王様と王妃様にはまだ子どもがいない。

 これからもできる可能性は少ない。

 じゃあ、一体?


 首を傾げていた私の想像よりも早く答えが現れ、『私』が役に立つ時が近づいてきていた。


「戻った。ミュレイシア。

 力を貸しては貰えないか?」

「どうなさったのですか? あなた?」


 足早に魔王様が戻ってきた。布に包まれた大きな何かを抱えておられる。


「……親が、必死に守ったのだ」


 私は外に出た方がいいかな?

 と思ったのだけれど、促されなかったし、魔王様も気にも留めていなかったようで見えてしまった。

 魔王様が御自ら大事そうに抱えていた小さな包みが微かに揺れる。

 瞬間、ピピーッと来た。


 覚醒した時とよく似た脳と心に走る電撃。


 その中には私と同じ、五歳くらいの少年がいた。

 意識を失っているだろうに、腕の中の赤ん坊を強く、強く抱きしめて。


 彼こそが魔国王子「ウォルフラム」

 物語の主人公の一人、だ。


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