表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/368

人国 神の塔の探索 その2

 魔宮 『神の塔』探索。


 私達は次の目標を、十階と定めることにした。

 ゴールが解らない無限ダンジョン 魔宮。

 人の力で踏破し、最後の間に辿り着くことがこの世界に生きる者の役割あり使命である、と『神』に定められた宿題だ。

 でも、苦労の割にリターンが少ないと、長く探索は放棄されていた。

 ちゃんと調査をしないと魔宮から、大地を害する瘴気や魔物が出て来るので『神』としては探索を行うだろうと思ったのかもしれない。

 けれど人は手を抜くことに関しては天才だから。


「魔宮の中に人がいれば、瘴気も魔物も出てこない。ならば安全圏に人を住まわせておけばいいのだ」


 と気付いて入り口近くに居住空間を設置。そこに人を置く事で宿題を誤魔化すことにした。魔国も、人国も、けっこうそれで長くお茶を濁していたのだ。

 魔国はその後、魔宮攻略を進めれば有利な技術が手に入る、と先んじて気付いたので今は魔宮二十五階まで探索を進めているけれど、人国はまだ六階前後までしか進めていないと前にリュドミラ様がおっしゃってた。

 一人一人の戦闘力を含めた能力が高い魔国の民と、特別なクラスを持つ者以外は戦闘に不向きな人国の民。こういうところでも差が出ている。

 本当に、絶対数の少なさ以外では魔国の民が圧勝だと思うんだけどね。


 まあ、そんなこんなでまだ、人国は魔宮の真の価値に気付いていない筈。

 特に今は、魔国への侵略戦争の準備でそっちに注力もしているから、魔国が調査を進めるのに絶好のチャンスだ。


「どうやら十階、十五階、二十階、二十五階と五階層ごとに特別な成果のある『当たり階』があるようだ。今の所、その法則が守られている」


 アドラール様が地図を見ながら指を差す。

 魔国側魔宮の地下十階には転移陣があった。その製造方法と共に。

 十五階にはその転移陣を持ち運べる形にする圧縮方法が残されていて、二十階には通信石があった。

 二十五階にはテレポーターと呼ばれる各階への移動エレベーターが見つかり、ロックも解除された。ついでに人国側の魔宮に通じる扉もあった。

 この先もまだ先は長いから、叶うなら協力し合え、という意図がなんとなく感じられるのは多分、気のせいではないだろう。


「人国の二十階に通信石が大量にあったんですよね? なら、人国の十階と十五階は転移術とその応用のような気がします」

「私も同意見ですわ。魔国側からの侵入とテレポーターのロック解除は想定外、とは言わないまでも本来の意図とは違うものであったでしょうから」


 私とリュドミラ様の提案にアドラール様もロキシム様も頷いて下さりまずは十階を捜索、その後、十五階を調べてみることになった。

 準備と補給を整えて、テレポーターで地下十階へ。

 ここはリュドミラ王女捜索の為に一度。足を踏み入れはしたものの、まだ殆ど捜索されていない未知の領域だ。


「当たり階のエリアボスは宝の間の側にいる筈だ。この間の捜索の時にも階段前にはいなかったからな。慎重に行くぞ」

「はい」


 私達は頷き、いつものように列になって、捜索を開始した。

 まずは、テレポーターの出口から上階階段までの道を埋めることを目的とする。

 ゲームとかだとエリアの需要な宝っていうのは後半にあることが多いからね。

 でも、半日ほどかけて探索してなんとか前回のマップとテレポーターからの道を繋げることができたんだけど残念ながら、お宝の部屋は見つからなかった。


「代わりに、妙な板がありましたけれどね。これは、一体なんでしょうか?」


 ロキシム様が終盤の部屋で見つけた不思議な板を指先で回転させている。

 ちょっと暗号めいたパズルを解いたら隠し金庫のようなものが開き、そこから出て来たものだから何か秘密はありそうだけれど、っていうか。

 この板、なんだかちょっと既視感。

 向こうの世界でよく見たアレだ。クレジットカードとかIDカードとかとほぼ同じサイズなのといい、裏面と思しき面に真っすぐ引かれた黒い線といい、これって……もしかして……。


「多分、それがこの部屋の宝の間の鍵なのかもしれませんよ」

「鍵? この板が?」

「はい。まだ推察に過ぎませんけれど……」


 向こうの世界ではよくカードキーというのがあった。

 どういう仕組みかは解らないけれど、カードの中に開錠情報が入っていて、それを使う事で扉が開くやつ。あれと原理的には同じなのかもしれない。


「だが、既に王女が術を取得されておられるということは、宝の部屋の鍵は既に開いているのでは?」

「それでいったら、エリアボスも倒されているとかはないんですか?」

「いや、エリアボスは長く部屋への介入が無いと再出現するという報告もある。

 一度倒したと思って油断していた階のエリアボスが再出現していてあやうく死人が出る所だった事例がある。実際十七階にはエリアボスがいただろう?」

「そうですね。アドラール様達があっさりと倒して下さいましたけれど」


 十八階から階段を降りて直ぐの部屋にライオンじみた怪物が確かにいた。

 バックアタックの形になり、本魔物も油断していたのか、大した苦戦もせずにアドラール様の剣の下、塵にかえってしまったけれど。ステータスを確認する暇も無かった。


「あれは王女の事前にかけて下さった的確な攻撃援助(バフ)と、妨害呪文(デバフ)があったからだ。特に防御壁で敵の攻撃を打ち消して頂けたのがありがたかった」

「アドラール様が、一撃さえ躱せば確実に倒して下さると信じられたから、ですわ」

「貴女や子ども達の前で恥ずかしい所は見せられないからな」

「まあ」


 すっかり仲睦まじくなったお二人の甘い会話はさておき、ゲームの定番、敵のリスポーンがあるのならあまり長く時間はかけられない。どういう仕組みなのか知りたいけれど、今は検証している時間も無い。

 目に見えてここから魔物が生まれる、みたいなエリアやアイテムも今までの調査では発見できなかったからね。


「とにかく、使うか使わないか、使えるか使えないかはさておいて、これを持って残りのエリアの探索に向かいましょう。必要ならば使う場面も出てくると思います」

「そうだな。行くか」


 こうして私達はテレポーターの場所に戻り再びの調査に戻った、のだけれど


「しっ! 静かに」


 後半、迷宮全体から見れば前半の調査を開始して間もなく。

 先頭を歩いていたアドラール様がピタリ、と足を止めた。


「どうかなさったんですか?」

「今までとは違う匂いがする」


 くんくん、と鼻が微かにひくついている。

 虎や猫も、嗅覚っていいんだっけ?


「匂い、ですか?」

「気配、とでも言った方がいいか……。俺達以外の生物の気配だ」

「生物? 魔物ではなく?」

「魔物はもっとはっきりと違う。

 人間か、魔国人、だろう。

 魔国からは今回我々以外の存在は派遣されていない。となれば人国の誰かか?」

「戦の準備で忙しい人国が、今、この時期に魔宮探索を?」


 みんなの視線が一瞬でリュドミラ様に集まるけれど、リュドミラ様はぶんぶんと首を横に振る。彼女の眼も、態度も全てが知らない、と言っていた。

 だよね。自分が追い出されて約二週間。

 人国側が何をしているかなんて解る筈もない。


「とにかく、ここまで来れる力を持った誰かがいる、ということだ。油断するな!」


 私達は頷き、注意深く先に進んだつもりだった。

 万が一、相手に見つかっても対処できるように。


 でも、ここはゲームでもなければ、私の書いた小説そのものでもないリアルな世界。

 思いかけない事はいつもいつでも起こりうる。

 例えサクシャであろうとも。



「リーゼラ! しっかり! しっかりして!!」


 耳の、いや頭の中に声が響く。

 絶叫とも言えるそれは叫びだった。


「どうした? セイラ?」

「今、声が……」

「俺にも聞こえた。あっちだ!」


 アドラール様も耳を欹てると同時走り出す。


 全速力で走りだした私達の眼前に扉が開かれた部屋が見えた。

 声は、どうやらそこから聞こえる。


「カロッサ! リーゼラを連れて後ろに下がれ。手当優先。

 援護は余裕ができたらでいい」

「でも……シャルル……」

「解っている。今の僕らじゃ勝てない。

 一端退却する。その為の隙を作って見せるから」


「今の声は!」「シャルル?」

「王女? ウォル?」


 悲鳴を聞くや否やスピードを上げた二人、アドラール様が止める間もなく、部屋の扉のその位置に立つ。


「あ、姉上? ウォル? どうして……」


 二人の後ろから、一応隠れるように私達も中を覗き、息を呑みこんだ。


 照明も無いのに、不思議な光と明るさに満ちた部屋の中央には、巨大な怪物と、眼前で血まみれ状態で敵と向かい合う人間達の姿が見えたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ