93、世界統一制覇記念式典・後編。――断罪の光と、『その時』。
「聞け! 各国の首脳たちよ!」
石柱に鎖で括り付けられた数多の罪人たちの前。
壇上で俺は、拡声魔道具に向けて声を、思いの丈を張り上げる。
「この罪人たちは、我が魔王国エンデ! クインブレン王国! 元エリミタリア永世帝国! そして数多の小国たちより集められし、民を治める立場にありながら、民を虐げ、搾取することしか考えない、能のない唾棄すべき暗愚たち!」
俺の、制覇王としてのマント。
魔王時代の漆黒のマントを下地に、金刺繍を増やした荘厳かつ優雅なそのマントをバサリと翻して、高々と右手を天に掲げる。
「人間と魔族、そして魔物! この世界に生きる全てのものたちが共存共栄する、真に平和な理想世界実現のために!」
俺の右手から輝く黄金の魔力の光が天へと放たれ、再び観覧席からどよめきが起きる。
そのとき、呻き声を上げる一人の罪人がその可動域ぎりぎりまで首を曲げ、壇上の俺と目が合った。
――ああ。覚えている。
こいつは、俺の新魔王戴冠式で。
「いまこそ我らがこの世界に覇を唱え、愚かな人間どもを踏みにじり君臨するときっ!」
などと、愚劣極まりないことを宣っていた上級魔族の一人だ。
すでにあのときから俺は、こいつは『この場で必ず殺す』と決めていた。
「っ〜!?」と、声にならない呻きを上げ、血走らせた目を剥くその魔族に向かって、俺は殊更酷薄に口の端をつり上げた。
「ゆえに! 人間も魔族も関係なく! 全員等しく! この制覇王ジュドの名のもとに、断罪されなければならない!」
そして俺は、極刑を宣言する。
「さあ! 罪人たちよ! おまえたちの罪を裁く浄化の光を受けよ! ジャッジメントソード!」
光極大魔法、ジャッジメントソード。
――俺が掲げた右手を振り下ろすと同時。
彼方の空より、無数の、黄金の光の断罪の剣が罪人たちへと降り注ぐ。
「「「っ………………!?」」」
そして、還していく。黄金の光が。
括り付けられた石柱も。虚飾に塗れた罪人たちの典雅な衣装も。罪人たちの体も。声なき断末魔も。生命そのものも。
十数秒後。壇上の前にあったのは、思わず息を飲んでしまうような幻想的な光景。
全ては還り、何もない場所にただ黄金の光の残滓が漂うだけの、恐ろしくも美しい光景。
俺がこの処刑にこの光の極大魔法を選んだ理由の一つが、これだ。
どうしても血生臭く、否定的な印象を与える処刑という行為を、浄化の光という言葉と手段、事を終えたあとのこの幻想的な光景で多少なりとも和らげたかったこと。
そして、もう一つ最大の理由は。
「い、いまのは、光魔法……!? ま、魔族である魔王……い、いや制覇王ジュドさまが!?」
「おお……! 四大属性はもちろん、闇と光までも全てを修められた……! まさしく超越の存在……!」
そう。この光の極大魔法は、俺が制覇王と――ゲーム中には存在しなかったクラス制覇王となってから手に入れた新たな最強最悪に数えられるスキルの一つ。
もはや俺は、いままでのようにゲーム知識を持ちスキルリセットを繰り返す程度のゲームから半歩外れたどころではなく、完全に既存のゲームの枠を超える存在となった。
闇も、光も、あの力さえも、すでに全ては我が手にある。
そう。ゆえに――準備は全て整った……!
「ん……!? な、何だ!? そ、空がっ!?」
最初にその異変に気がついたのは、最初に声を上げたのは、一体観覧席の誰だったろうか。
「くく……! ついに……! 来たか……!」
不敵に笑う俺が見上げる頭上の空。
ついに俺が待ち、このときのために備え続けてきた『その時』が――来る。




