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四天王最弱の闇の貴公子に転生した俺は器用貧乏を返上し、無限の手札と敵専用チート級最強最悪スキルで、高笑いと共に全てを蹂躙し屈服させ覇道を征く!  作者: ミオニチ
第2部 〈全世界統一制覇〉編

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85/94

85、エリミタリア永世帝国完全掌握。少年の素顔と生温かい瞳。……これで残すは、最後の一つ。

「エリミタリア永世帝国内――おそらくは、これよりこの国名あるいは国土も変えられようが、とにかく現在の帝国版図の北の地に霊脈、つまりは豊富な魔力と、そしてその作用でついでに天然温泉が沸く風光明媚な地がある。魔王ジュド。貴公の魔王としての、ダンジョンマスターとしての権能でそこにダンジョンを、余とこのマリアリテレザのための離宮を用意せよ」


「…………は?」


 敗北宣言の直後。


 全く表情を変えずに、そう言ってのけた()()ネスカリシュオの要求に、臨戦体勢を解き、いまは俺の右隣に侍るデスニアがそう間の抜けた声を上げる。


 そのデスニアの反応に、先帝ネスカリシュオは片眉を跳ねさせた。


「何だ? 何を驚くことがある? 魔王ジュドの右腕の娘よ。先程も告げたとおり、余の望みは、完全な存在として永久(とこしえ)に在り続けること。永世皇帝を退位し、全土の国民どもより魔力を吸い上げ続けられぬとなれば。生体禁術式とその要であるマリアリテレザを劣化せぬように維持する。そのような膨大な魔力、地より吸い上げるしか手はあるまい?」


 ――ほう。なるほどな。俺たちに抜き差しならない状況に追い詰められたとはいえ、どうりで随分とあっさりと退位するなどと言うわけだ。


 おそらくは、ずっと研究していたのだろう。


 多くの人間から吸い上げる、はっきりと言えば効率の悪い現在の方法に代わる、ほぼ無尽蔵に等しい大地の魔力を吸い上げ利用する方法を……!


「ま、待つのじゃ! この我が言いたいのは、そういうことではない! 貴様、負けを認めておいて、何を勝手な……!」


「……思い上がるな。右腕の娘。余は、負けでよい、と言ったまで。彼我の戦力、実際に相争った際の利と損失を比較し、言わば自ずから負けを認めてやったにすぎぬ」


 それから、永世皇帝でなくなった金髪の少年は、デスニアから視線を外し、俺に向き直る。


「それに、魔王ジュド。そこな右腕の娘と違って、貴公は気づいているはず。先程の余との()()で用いた貴公の切り札のスキル、次に相見えるそのときまでに、余には無為に帰す方法があることを」


「ふ。そのときは、俺もまた違う手をとるだけだが、な。先帝ネスカリシュオ。そう。無限に等しい手札から、いままでどおりにおまえにとって最強最悪の一つを選びとって……!」


 不敵に笑う俺と、表情を変えない先帝。


 そのしばしの睨み合いを制したのは、俺の左隣から上がった少し間延びした声だった。


「ねー。交渉? がうまくいったんなら、あたしからも一つ聞いていーい? んーっと、ネスカリシュオくんー」

 

「……………………何だ? 魔王ジュドの左腕の娘よ」


 おそらくはその少年の見た目からだとは思うが、まさかの、まさかのアリューシャからの『くん』呼びに、逡巡と葛藤と動揺を沈黙の中にそこはかとなく匂わせつつも、それでも表情は崩さずに先帝が応じる。


「ありがとー。あのねー? ネスカリシュオくんが国よりも自分よりも大切で、ずーっと、それこそ永久に一緒に居たくて、ずーっとずーっと大好きで愛し続けてるマリアリテレザさんって、元々ネスカリシュオくんとどんな関係だったのかなー? ってー」


 確かに、確かに暴いた真実を言葉にすればそのとおりなのだろうが……。


 なんだか身も蓋もないというか、大分恋愛脳というか、この千年数えきれない人間を巻き込んできたはずの壮大な計略味が大いに薄れるというか。


「おお……! それは、それは! 確かに確かに! 気になるのじゃ!」


 さらに、いつのまにか俺の右隣のデスニアまでも興味津々な表情で、語られる答えを前のめりに心待ちにしている始末。

 

 そして、穢れのない青い瞳と、きらきらとした無邪気な紫の瞳。


 やがて。じぃぃ、っと見つめるその俺を挟む二人の少女たちの熱い熱い視線に耐えかねたように、先帝ネスカリシュオが目線を逸らす。


 そして、ぼそりと、本当に小さな声で呟いた。


「…………乳母(めのと)、だ」


「「「…………え?」」」


 その答えに、思わず俺を含んだ三人の目が元国母の桃髪の美女に向かう。


 元国母将帝マリアリテレザは先帝の傍で寄り添い、静かに穏やかに微笑んでいた。


 それは、まるで全てのものを癒し、包みこむような慈母の微笑み。


 バッと俺を含めた三人の視線が再び先帝へと戻る。


「………………それ以上は、察せよ」


 バツの悪そうにそっぽを向いて、そう言って頬を赤らめたネスカリシュオの表情は、まるでその見た目年齢そのままの少年(子ども)そのもので。


「ほ〜〜う?」「ふ〜〜ん?」」とでも言いたげな生温かい瞳で、デスニアとアリューシャ、少女二人はそれを見守っていたのだった。


 そして、つい俺がそのマリアリテレザの慈母のごとき表情のすぐ真下。


 いまにも白の羽衣から溢れ出んばかりの豊満な母性の象徴を見て、「うむ。なるほど」とうなずいてしまったことは……俺は、二人には一生内緒にしておこうと思う。


 とにかくこれで、ついにここにエリミタリア永世帝国の掌握は完全に成った。


 三大国も残すは最後の一国。すでに手の者を忍び込ませた〈聖なる女神教〉の総本山たるフェストア聖教国を残すのみ。


 その一定程度の掌握が成れば、この俺の世界制覇はついに完了する。


 そして――来るべき『その時』に向けて、俺は一人静かに拳を握り締めた。

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