81、永世皇帝の憤怒。――〈唯一無二にして完全なる存在〉。
張り詰めたような空気に満ちた室内。
――長椅子に座る金髪の少年。永世皇帝ネスカリシュオの血を吐くような呪詛を含んだ声が、響く。
「…………愚鈍、愚劣」
一方の相対する俺たちは、一気に臨戦体勢へと移る。
「デスニア!」
「うむ! わかったのじゃ! ジュドさま!」
――呪詛は、なおも続く。
「…………傲慢、不遜」
「アリューシャ!」
「うん! あたしもやるよー! ジュドー!」
――紡がれ、重なり、そして。
「…………この身の程、知らずが」
「神核・解放!」
「勇輝の光剣ー! 傲魔の闇剣ー!」
俺の右腕のデスニアが、左腕のアリューシャがそれぞれの最強のスキルを発現すると同時。
――呪詛が、最高潮に達し、解き放たれる。
「…………マリアリテレザ」
「はい。どうぞ存分にお使いください。わたくしの愛するネスカリシュオ永世皇帝陛下」
ゆらりと立ち上がった少年帝。
影のように付き従い、微笑みを絶やさず、その隣に楚々と寄り添った国母将帝マリアリテレザ。
「百年」
――その胸元に、ずるりと永世皇帝ネスカリシュオの左手が伸びる。
「ん、あああっ……!」
そこから引き出されるは、膨大な魔力。
桃色の髪の絶世の美女が内包した膨大な魔力の一部が、その圧倒的なる母性の象徴たる豊満な胸から、伸ばした左手を通して吸い出され――永世皇帝ネスカリシュオに流れる。
「な!? なんという……魔力の高まりじゃ……!」
「これが、あたしたちの……!」
それは、四大将帝を倒したそれぞれの切り札を最初から使い、すでに全力の戦闘体勢を整えたデスニアとアリューシャを制止させ、思わずその場に縫い止めるほどの。
「くっ……!? これほど、とは……!」
俺自身にも例外なく、否応なしに重圧を与えるほどの。
――そして、その膨大な魔力が指向性を帯び、形をなしてそのスキルの名が告げられた。
「我は、〈唯一無二にして完全なる存在〉」
一点に魔力が収束し、爆発し、そして――顕現する。
黄金の迸る魔力をまとい、その金髪を怒髪の如く逆立てさせた永世皇帝ネスカリシュオの戦闘形態。
「…………これで否応なしに理解できたであろう? 痴れものどもよ。余こそが、余だけが。この世界の全てを蹂躙し、屈服させ、統べる力と資格を持つ唯一無二の存在であることを」
――まさしく、絶対者。
さっきまでの力のない少年から一変し隔絶した、その自分たちを上回る圧倒的な魔力を前に、俺は、震えていた。
これならば、勝てる……!
――そう。勝利の確信に。




