表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/94

8、戦闘開始。……そして俺は、高笑いとともに蹂躙する。

 ボッボッボッボッボッ……!


 この広間、階層のマスターたる俺の意思に応え、壁際に備えつけられた魔力の明かりがいっせいにその火を灯した。


 これから始まる決戦を彩るかのように。


「みんな! お願い! あたしに――力を貸して!」


「「うん! ああ! はい! もっちろん!」」


 ――ふ。確かめるまでもなくわかっていたことではあるが、やはり迷いはない、か。


 先ほどまでよりも光源が増え、より明るくなった広間。


 その赤く長い髪の少女の穢れのない青い瞳には、もはや先ほど同志と呼び俺と語らっていたときの感情の揺れはどこにもない。


 人々の希望を一身に背負うその瞳には、真の平和のためと題しながらも間違いなくその覇道において人々に仇なす脅威となるであろう野望を抱えた俺を倒すと決めた揺るぎない意思の光があった。


 それでこそだ……! 我が同志にして宿敵……! そして、かつての――――勇者アリューシャよ!


 そして、俺と勇者パーティーとの戦いが始まる。いや――


「はあああ! セイクリッド・マジックガード!」


 前に出たタンク役の大柄な男の聖騎士。その掲げた盾が光を放ち、パーティー全体に()()の威力を軽減する透明な光の盾を授ける。


「いきますよ……! リジェネ・サークル!」


 後衛にてメイスを掲げた優男のビショップが一定時間継続して一定のダメージを回復する癒しの空間を辺りにもたらす。


「わたしも! 戦意昂揚マーチ! ♫〜」


 小柄な歌姫の少女が透き通る歌声で継続中は味方全体の攻撃力を上げ続ける強化(バフ)をかけた。


「ハイスピード・スペル! よし! あとは一気に……!」


 勇者アリューシャの親友である少女魔導師メルニが自らに一定回数高速詠唱の補助スキルを使い、さらに畳みかけるべく早口で単体上級攻撃魔法への詠唱に移る。


「勇輝の光剣ー! たああぁぁっっー!」


 もはや語ることはないとばかりに、その独特の間延びした叫びと裂帛の気合いとともに少女勇者アリューシャが勇壮な光を放つ剣で一足飛びに俺に斬りかかる。


 ――俺の外見的特徴や過去の戦闘経験などから、魔法タイプと判断。


 全員に魔法の威力を軽減する光の盾を。継続回復手段を整え、それぞれに最も効果的と思われる強化スキルを選択。

 そして最大火力で一気に攻めかかる、か。


 やはりパーティーメンバー同様、戦術も基本に忠実(オーソドックス)。それゆえに最も堅実かつ効果的。


「だが、それも……!」


 その全てを見届けると、俺はゆらと右手をゆっくりと前にかざし、高笑いとともにそのチート級最強最悪スキルの一つを発動させる。


「ふははははっ! 残念だが、いまの俺が手に入れたこのスキルの前には、全くの無意味! これで終わりだ! 冥府より来たる闇の紫炎に焼き尽くされるがいい! アビスフレイム!」


「「「きゃあああああああぁぁぁっっ!?」」」


「「ぐおああああああぁぁぁぁっっ!?」」


 瞬間。戦場に渦巻くは、全てを焼き尽くす紫に燃える冥府より喚び出したる闇の炎。


 そして、勇者アリューシャを含め、敵パーティー全員が悲鳴とともに尽く倒れ伏し――戦いという名の、俺の一方的な蹂躙の時間は、呆気なく幕を閉じた。


お読みいただきありがとうございます。

夜にもう一話投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ