70、『光』と青の瞳と――噛み、砕く。
――光が、剣閃が、奔る。
「はっ! はぁっ! はあああぁぁぁっ!」
「くっ! うっ! くうぅぅぅー!」
天技将帝キルシュアーツ。
エリミタリア永世帝国の誇る英雄が縦横無尽に振るう左右の『光』の前に、いまのあたしは防戦一方だった。
――英雄が二本目の『光』を出してきたのは、すぐだった。
こ、こんなの知らないし、聞いてないよー!?
と、あたしは心底驚き動揺してはいたものの、結局は同じ武器と条件になっただけだし! 泣き言ばーっかり言っていてもしょうがないし!
と気持ちを新たに『光』同士で再び打ち合っていると、十にも満たない剣戟で、灰色の長い髪をかき上げ、英雄は顔を歪めた。
「本当に忌々しい……! この恥知らずの堕ちた勇者の分際で! まだこの私に、犯罪奴隷とはいえ更なる犠牲を強いるというのか!」
そして、左手に再び赤い魔石を掲げ、心底不服そうな顔で握り潰すと同時、宣言した。
「第二の栄光!」
途端、膨大な魔力が天技将帝キルシュアーツに流れ込む。
その左手には、魔力収束の素体となる剣を用いずに一から束ねられた新たな『光』が握られていた。
――そして、いま。
「はぁぁっ! まだ抗うかっ! 堕ちた勇者っ! 大人しくっ! さっさと! この二条の栄華の光の前に! 錆となれえぇぇっ!」
間断なく襲いくる猛攻。左右の『光』。
受けながら、避けながら、ときに避けきれず少しずつ切り傷を増やしながら、あたしはそれを――青い瞳で、見定める。
――ああ。やっぱり、左、だね。
「はああぁぁっ!」
英雄の利き手の右の『光』。気合いとともに振り下ろされた斬撃を。
丁寧に、しっかりと、両手で横に構えた剣で受け。
「たああぁぁっー!」
一歩踏み込み、そのまま跳ね上げる。
「ぐっ……!? だが、愚かなぁっ! もらっ――っ!?」
そして。手を離し、瞬時に右から左に持ち替え。
「やあぁっー!」
軌道を、剣閃を変え。さっきまであたしがいたところへ放たれた突き。
練度不足の英雄の左の『光』をかわし、その伸びきった左腕を一太刀で――
「忌々ぁぁぁっっしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!」
――バキンッ……!
その何か硬いものを噛み砕く音がした瞬間。爆発的に魔力が膨れ上がった瞬間。
あたしは全力で後ろへ跳び退がった。
直後。
「死ぃぃぃぃぃぃぃぃっっねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!」
退がるあたしへ追い縋るように。
英雄の長大な剣閃が、二条の極光が、挟みくる。左右から、あたしのいる、中心へ。
――まるであたしの生命を刈り取る、死神の鎌のように。
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