69、黄金の光。――真なる切り札。
「さあ! 受けよ! 堕ちた勇者っ! この私が! 天技将帝キルシュアーツが人としての生涯を研鑽に捧げ極めし、絶技っ!」
赤、青、黄、翠――四色の、火水土風四大属性の煌々たる光を放つ儀礼的な装飾を施された剣。
「四精聖剣!」
それが真上へと跳び上がり、大上段から完璧な調和のとれた四色の破壊の奔流となって、振るわれる。
それはまさしく、英雄の名に、物語を締めくくるに相応しい流麗で荘厳な一撃。
「勇輝の光剣ー!」
――そう告げるあたしの手の中で愛剣が黄金色の光を放つ。
「たぁっーー!」
一閃。
衝突の刹那。あたしは、いままで何度となく繰り返してきたのと同じように、魔力を込めた光り輝く剣を縦に振るった。
それで、ただそれだけで。
遥かに膨大な魔力を込められたはずの破壊の奔流のその一部が二つに断ち切られ、結果狙うあたしの横を素通りする。
――打ち消しの、『光』。
これが、勇者の力。
込めた魔力の大きさとは無関係に、火水土風の四大属性に一方的に優位に立つ、聖なる女神の光。
これこそが、この世界でただ一人しか選ばれない、いまはあたししかなれない勇者が人類最強のクラスと言われる理由。
……もっとも、いまの攻撃だってタイミングがあってなかったら、普通に「残念ながら、勇者アリューシャの冒険はここで終わってしまったー!」だし。
その小さな針の穴のさらにその中心に通すような刹那のタイミングに剣を振るのをちゃんと合わせられたのは、あたしのかなーりすごーく一生懸命毎日積み重ねてがんばった研鑽のたまものだし。
……そもそも、軍門に降ってからようやくあとで詳しく教えてもらったけど、あのとき魔王城でジュドーが放ってきた『闇』の紫炎の攻撃の前には、全然優位性なんてないから、普通に……負けちゃったし。
そうやっていろいろ考えてみると、うーん? 人類最強クラスってなんだろー?
って気がだんだんとしてきちゃったけど、それでもあたしが四大属性に優位に立てる事実に変わりはない。
たぶんいまのは、かなり大量の魔力を込めた天技将帝キルシュアーツの切り札だったはずだし、それを少しの魔力で破ったいま、残り魔力量的な意味では、あたしはこの戦いでかなり優位に立ったはず。
このままいけば、やっぱりその性質からまだ少し抵抗のあるあのスキルを使わなくても勝て――
「本当に、心の底から……! 臓腑が灼けつくほどに忌々しい……! だが、やはり足りないか……! 女神より授けられし勇者の力に対し、所詮人としての生涯では……!」
そんなずる賢い計算をするあたしの前。
天技将帝キルシュアーツがその儀礼的な装飾が施された業物の剣を右手で天高く掲げた。
同時に左手の中、収納空間から取り出したらしき、激しく輝く真紅の魔石を――
「ならば、見るがいい! 四大将帝であるこの私の尊き身に! 悍ましい犯罪奴隷どもの魔力と生命を取り込んでまで得た! 人の生涯を超えたその先の生において弛まぬ研鑽の末に手に入れた、この私の力を! 栄華の光剣!」
――握り潰した。
「え…………!?」
そして、膨大な魔力が渦巻き、あたしの眼前。その掲げた切先が――輝く黄金の光を放つ。
「くくははは! おお! 力が漲る! では、我が真なる切り札を出したところで、仕切り直しとしよう! いまここで、もう一度あらためて名乗らせてもらおうか! 堕ちた勇者アリューシャ! 精々貴様を屠る男の名を胸に刻むがいい! 私はキルシュアーツ! クラス『英雄』――勇者を超えしその技はついに天に届きし、そう! この私こそが真なる世界最強の剣士! 天技将帝キルシュアーツだ!」
英雄は、そう言って黄金色に眩く輝く剣をその場で振るった。
――あたしだけの、この世界で勇者だけに許されたはずの、唯一無二のはずの『光』を。
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