67、実力伯仲の戦い。……その優しさに応えるために。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「たぁっーーーーーー!」
対峙する英雄の雄叫びと、よく他の人からは間延びしてて気が抜けると言われてしまう、あたしなりの全力の掛け声とともに。
打ち合う。全力で。剣戟の嵐を。
撃ち合う。鍛え上げられた魔力を込めた火水土風四大属性のスキルを。
討ち合う。これで決める――という裂帛の気合いを込めた全力の一撃を。
けれど、その全ては不発。
あたしとエリミタリア永世帝国の英雄――天技将帝キルシュアーツの実力は、完全に伯仲、互角だった。
もちろん、細かな部分では優劣がある。
体の小さいあたしのほうがちょっとだけ速くて、小回りが利いて、相手のほうがちょっとだけ力が強い、とか。
でも、それは戦いが続く中で段々とわかってくるお互いの動きのちょっとした癖とか。
あるいは、先読みの深さのほんのちょっとの成否で埋められる程度の差でしかなくて。
合わせるとやっぱり互角。決定打にはならない。
そんな攻防の中。先に痺れを切らしたのは、天技将帝キルシュアーツのほうだった。
「たぁっーー!」
「ぐっ……!」
一瞬の隙をついてあたしの放った渾身の一撃を受けながら大きく跳んで後ろに退がると、ヒュンとその場で英雄は、一度儀礼的な装飾の剣を振る。
「ふん! 栄えある永世帝国最強の四大将帝の一人であるこの私と互角とは! 臓腑が焼けつくほどに忌々しい! やはり魔族に屈し、腐りきり堕ちたといえども、天に座す偉大なる聖なる女神に選ばれし、この世界でただ一人にしか許されぬ人類最強のクラス勇者ということか! ……いや、それとも貴様がその傍らに侍り、いまや恥知らずにも寵愛を受けているとかいう、魔王ジュドとかいう輩から邪な力でも与えられたか!」
「むー…………」
――その言い方には、大分悪意というか語弊がいーっぱいありすぎて、正直一言ものもーしたい。
……でも、まるっきり嘘っていうか、ぜーんぶ的外れってわけでもなくて。
いまのあたしがこの戦いに備えて、ジュドーの助言を大いに参考にスキルリセットしたのも事実で。
たとえば、どっちかしか取れない勇者専用パッシブスキルのうち、いままで使っていた瀕死で一撃だけ超パワーアップの〈最後の希望〉をやめて、ダメージのない状態で常時全能力値弱アップの〈揺るぎない光〉に変えたりとか。
だって、あたしにジュドーは言ったから。
「アリューシャ。この戦いにおいて目指すのは、ただの勝利ではない。魔王国エンデの力を遍くこの世界に示すには、完勝してみせろ。……もし、大きな負傷などしてみろ。俺は絶対に許さんからな」
……そんな不器用な優しさに応えるために。あたしはいまここに、こうして立っている。
――魔王ジュドの左腕、そして共に茨の覇道を歩むことを決めたジュドーの同志として。




