66、堕ちた勇者と、英雄。――世界最強の剣士たちの対決。
本日3話目。
*
「ジュドー……! うんー! 気をつけてー!」
そう言って、あたしたち。多分主にジュドーを狙って大小の隕石の欠片が降り注ぐ中、デスニアちゃんとは逆方向に逃げたあたし。
――その、逃げた先で。
「待っていたぞ! 貴様を! 堕ちた勇者アリューシャ! 私の名は、キルシュアーツ! 栄えあるエリミタリア永世帝国最高幹部にして最強戦力たる四大将帝が一人! 天技将帝キルシュアーツだ!」
――英雄。
あたしの前。まるで、それを体現したみたいな男の人がそこに立っていた。
赤いマントをつけた装飾を施された白銀の、胸の中心だけ金色の綺麗な鎧。
儀礼的な装飾、でも一目で業物と分かる磨き抜かれた綺麗な剣。
そして、灰色の長い髪と金の瞳に、甘くそれでいて、精悍な顔立ち。
まるで物語の中から飛び出してきたような、完璧な英雄。
――そう。人々が大好きであたしの大嫌いな物語の。
そんな完璧な英雄があたしに、その輝く剣の切先を向けていた。
「勇者という民草どもの希望でありながら、現魔王となったジュドとかいう男に力及ばず敗北しただけに至らず! 恥知らずにもその軍門に降るなど……! もはや貴様そのものが人類の大敵! やはりクインブレン王国などでは足らぬのだ! やはり遍くこの世界は、我が祖国、偉大なるエリミタリア永世帝国によって統治されねばならない!」
その金の瞳に、迷いの色は一切なかった。
天技将帝キルシュアーツ。
エリミタリア永世帝国――閉じた箱庭の中の英雄が自らの正義を絶対だと信じて、叫ぶ。
「その手始めに! 下賤なる魔族どもが興した魔王国エンデなどというふざけた国を討ち滅ぼしてくれよう! 堕ちた勇者アリューシャ! まずは貴様だ! 栄光ある我が正義の剣の前に、錆となってここで散れ!」
そして、儀礼的な装飾の剣を手に、一足飛びに間合いを詰める。
――うん。やっぱり、大嫌い。
「くっうぅぅーー!」
その物語の中の英雄よろしく大上段から振りかぶられた剣を受けながら、あらためてあたしはそう結論づける。
――誰よりも。
そう。まだ小さなころから。神託を受けて勇者になったあたしに一から剣を教えてくれたクインブレン王国のおひげの立派な騎士団長さんよりも。
魔王討伐の旅の途中で戦った魔物の中で一番の剣の使い手だった、十本それぞれの腕に業物の剣を持ったすっごく体の大きな髑髏剣鬼さんよりも。
いままでの誰よりも。重く、速く、鋭く、烈しい、あたしがいままで戦った中で、最強の使い手の剣を一撃一撃、全く余裕なく受けながら。
――それでも、こんな勘違い英雄気どり男には、絶対に負けてやれないと。
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