63、手の温もりと誓いと戒め。――この傷は、治さぬ。
本日3話目。
あの日、あの夜。
エリミタリア永世帝国との会戦におけるこの我たちの戦闘方針が決まった、直後。
「こ、これは……!? いや、あり得るのか? 確かに役割からすれば、存在の格は同じ……! まるで実力が違うため、全く想像したこともなかったが……。いや、だがということは、あのスキルのことを考えれば、もしやこれは俺にも――」
興奮した様子でジュドさまが何やら言っていたが、この我の耳にはほとんど入っていなかった。
――手、手が……! じゅ、ジュドさまの御手が、この我の小さな手をすっぽりと包み込むように……!
魔族最大の禁忌とされてきた聖なる女神像に生まれて初めて触れながら、そんなことはこの我の中ではすでに些事だった。
こうしなければ、スキルメニューとやらをジュドさまがこの我と一緒に見ることができないかららしいが、その仕様にこの我は心から感謝したい。
そんなことをじんわりと汗ばんできた手に触れるジュドさまの温もりを感じながら、この我は思う。
「デスニア。スキルの振り直しの方針だが、おまえには力特化になってもらいたい。いずれ俺とパーティーを組むときのために、前衛を任せられるように――」
ジュドさまが何やらこの我にスキルの詳細な説明や今後の方針について語っていたが、この我の耳には話半分しか入っていなかった。
――なぜなら、この我にとって重要なことは、ただ一つ。
愛する主人たるジュドさまの傍らにこの我が侍り、ジュドさまの往く覇道にこの我が寄り添い、そして、ジュドさまのお力にこの我がなり続ける――永久に。
「――と、いうことだ。いいか? デスニア」
だから、この我の答えは聞かれるまでもなく、最初から決まっている。
「うむ! 全てジュドさまの言うとおりにするのじゃ!」
この我は、心からの朗らかな笑顔でそう応えた。
*
「「が、ががぐぉぁァァァァァァァァァァッッッ!?」
目の前の獣以下を彼方まで思いきり殴り飛ばした直後。
揺らめく蒼炎のような魔力を全身にまとったこの我は、その場に降り立つ。
それから、いま殴り飛ばしたばかりの握られた拳。 手甲のように蒼炎に鎧われ、出血も止まったこの我の欠損した右指二本を見て、誓う。
――この戦いが終わるまで、この傷は、治さぬ。
スキルを近接戦闘特化に振り直したいまのこの我でも使える中級程度のヒールでも、この程度の傷はいますぐにでも修復可能じゃ。
だが、この我はそれを選ばぬ。この傷こそは、いまのこの我の限界。
愛する主人たるジュドさまのためにさらなる役に立ち、さらなる力をこの我が得ると誓うための戒めなのだから。
「があアアアアアァァァッッ! 小娘エェェッッウグガブボァァァァッッッ!?」
「うるさい」
とりあえず、立ち上がり再び姦しく叫び出した獣以下の土手っ腹を蒼炎をなびかせて高速でこの我の全身で突き刺さるように蹴り、思いきりくの字にその背を折っておいた。
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