54、猛攻の魔導将帝。……そして、俺の口の端はつり上がる。
本日3話目。
「はぁっ……! はぁっ……! はぁっ……!」
「ほっほっほ。いやはや先ほどの威勢は一体どうしたのですかな? 魔王殿。ほれ! もうこの儂特製の魔導杖に魔力が溜まりました! そろそろ、またいきますぞ……!」
そう告げると同時、ふよふよと魔法で地面から浮く老人、魔導将帝ジャクムの握る杖の先端。色とりどりの魔石が激しい輝きを放つ。
「プロミネンスバースト! アブソリュートゼロ! サイクロンスクィーズ!」
――何っ!? 先ほどの中級範囲魔法の三連続に加えて、今度は単体用大魔法を三連続だとっ!?
「ぐううおあぁっっ!?」
わずかな時間差で放たれた激しく燃え盛る火柱を。ごく小さな一定空間を瞬間冷凍させる氷結点を。その内側の全てを微塵に切り刻む超局所的竜巻を。
俺はその熾烈な魔法攻撃の全てをかわし、飛び退がり、あまつさえ地べたをごろごろと転がることで辛くも逃れきる。
「ほっほっほ。いやはや、よくもまあ上手く避けなさる……と言いたいところですが。魔王殿ときたら、先ほどから逃げてばかりでつまらぬですなぁ。最初に儂に向けて何やら放とうとされておられたようですが、唖然とした表情で止められたところを見ると、どうやらあてが外れられたと見える」
――くっ! 言いたいように言ってくれる!
本来なら思う様に言い返してやりたいところだが、はっきり言って図星を突かれてしまったいまの俺は、何も口にすることができない。
そう。正直に言えば、まさしくあてが外れたのだ。
――まさか、あのスキルがあんな仕様だったとは……!
全ては俺のミスであり誤算。結果、いま俺はこうして逃げ回り続ける他に手がない。
それに、研究成果の一つだと自慢げに語った奴の持つ杖。
刻まれた魔法式による詠唱の代替に加えて、先端についた各属性に対応した魔石にわずかな時間魔法を溜められる能力を利用した先ほどのような連続魔法。
エリミタリア永世帝国の最高幹部にして最強戦力たる四大将帝が一人、魔導将帝ジャクム。
最初の極大魔法の件といい、結局のところ、つまりは奴自身の戦力もこの俺の想定を遥かに上回っていたということ。
この二つの誤算により、俺は無様にも逃げ回り続けることを余儀なくされていた。
――くっ! だが、あと少しだ……! 今度こそ俺の想定どおりならば、あと少しで……!
ゲームのときと同じ収納空間から出した水筒で荒く息を吐き渇ききった喉を潤しながら、俺は己が焦りを噛み殺す。
だがそのとき、またしても魔導将帝ジャクムの嘲笑うような声が響いた。
「ほっほっほ。では、次は少々趣向を変えてゆきますぞ? さて。いやはや魔王殿は今度も見事に逃げきって見せるのかのう?」
身構える俺の前。杖の先端に付けられた色とりどりの魔石が三度激しい輝きを放った。
「ファイアボール改・ホーミング! アイスニードル改・ホーミング! エアカッター改・ホーミング!」
「なっ!?」
――今度は各属性の初級魔法!? しかも独自改良……待てっ!? 追尾型だとっ!?
「ぐううぅおおおぉぉっ!?」
飲んでいた水筒を即座に放り出すと収納空間にしまい直す余裕もなく、俺は脇目も振らずただひたすらに全力で走って逃げた。
「ファイアボール改・ホーミング! アイスニードル改・ホーミング! エアカッター改・ホーミング!」
次々と追加される無数の火球から。俺を追い続ける氷の針の雨から。執拗に切り裂かんとする縦横無尽に動く風の刃の嵐から。
そして、ついに。
「はあっ! はあっ! ぐっ……! あ、アビス……フレイムっ!」
ついに体力の限界とその時を迎え、息も絶え絶えのまま満足にこれ以上動くこともできなくなった俺は、振り向きざまに本来使う予定のなかった冥府の闇の紫炎を放ち、辛くも迫り来る無数の魔法攻撃全てを消滅させる。
パチ、パチ、パチ、パチ。
「ほっほっほ。いやはや、これはまた見事に避けきってみせましたな。さすがは魔王殿。それに、儂のとっておきであり研究成果の局地の一つ、最初に放った極大魔法を半ば破ってみせたその紫炎は、やはり非常にすばらしいですのう……!」
むしろ馬鹿にしているとしか捉えられない軽薄な拍手と共に魔導将帝ジャクムが再びふよふよと地面からわすかに浮きながら俺の前に現れる。
「はぁっ……! はぁっ……! はぁっ……!」
「さて。ですが、そろそろ飽きました。ですので、次はいよいよその紫炎と儂のもう一つのとっておき、広域殲滅型の四連続大魔法の勝負とし、それで終いといきましょうかのう」
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……。」
「ほっほっほ。驚きましたかな? そう! 四連続です! 大事な研究成果の魔導杖に負担がかかりすぎる故、土魔法までの行使はさすがにいままで控えておりましたが、魔王殿を確実に滅すため……いや、もう正直に言いましょう……! この儂、栄えあるエリミタリア永世帝国の四大将帝たる魔導将帝ジャクムと、その程度の力で魔王を名乗る愚かで哀れな貴方との格の違いをその惨めで無価値な最期に思い知っていただくために……!」
その細められた瞳孔まで白い瞳がすぅっと開き、白い髭をたくわえた口の端が勝利を確信し裂けたように歪につり上がる。
そして、それを見た俺も同時に口の端をつり上げた。
――そう。たったいま、すでに確定した自らの勝利に。つい、思わず。
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