52、精鋭戦闘メイドたちの活躍と、想定以上と想定どおり。
本日1話目。
隕石――俺と連れてきた少数の手勢たちを押し潰すのには優に事足りる巨大質量が戦場の空に顕現する。
敵専用スキル、裏ボスの邪神たちのみが使用する極大魔法。その内の一つ、土属性のメテオフォール。
まさか、この世界最大の軍事超大国たるエリミタリア永世帝国の最高幹部にして最強戦力……!
四大将帝の一人、魔導将帝とはいえ、ただの人間ではたとえ一生をかけて研鑽したとしても極大魔法を放てるはずが……!
あの老体、魔導将帝ジャクムとか言ったか……! この俺の想定を上回るとは……! いや、すでにそれほどに人間の枠を外れているということか……!
――いや、切り替えろ! いまはそんな悠長なことを考えている場合ではない!
「アビスフレイム!」
刹那かつ膨大な思考の後、俺はバッと上空に向けて右手を向ける。
チート級最強最悪スキルの一つ、やむを得ず大軍を蹂躙するときのために用意しておいた冥府の闇の紫炎を放った。
膨大な魔力が衝突し、轟音と共に巨大隕石ははぜ割れるが――大小の大量の欠片が降り注いだ。それも明確な指向性をもって。
――やはり狙いは俺か! ならば!
「デスニア! アリューシャ! おまえたちは左右に散って、予定どおり強襲に備えろ! ここは俺たちが引き受ける! ラベンダ!」
「わかったのじゃ! ジュドさま! ご武運を!」
「ジュドー……! うんー! 気をつけてー!」
「「はいっ! ジュドさまは必ずや我らがお守りします! 我らが忠愛と生命にかけて!」」
魔王たる俺の命に応え、右腕のデスニアと左腕のアリューシャがそれぞれ左右に別れ散っていく。
時を同じくして、すぐ後ろに控えていた連れてきた残りの手勢、ラベンダを始めとする色とりどりの髪の五人の戦闘メイドたちがそれぞれの武器を構え俺の前へ並び盾となった。
「「ラージマジックシールド!」」
「「ラージアタックシールド!」」
「はっ! えいっ!」
「やあっ! とおっ!」
「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃあぁぁぁっ!」
ラベンダ。リリフ。ジオレ。サフィア。そしてチェリ。
戦闘メイドたちはすばやく範囲型の魔法防御と物理防御を張ると、双剣、槍、弓、斧といったそれぞれの武器で降り注ぐ大きな欠片を次々に破砕していく。
特に一番小さな体つきでありながら巨大な鎖つき鉄球を可愛らしい雄叫びを上げて、しかし暴風のように振り回すピンク髪ツインテールのチェリの活躍は圧巻だった。
砕かれた小さな欠片が次々に飛んでくるのは、まあご愛嬌だろう。それを他の戦闘メイドたちがさらに粉微塵に砕くのも含めて。
「よくやった! おまえたち! さすがはこの俺の側近だ! その活躍、誇るがいい! エリアヒール!」
そう労いの声をかけながら、俺は範囲回復魔法を使用する。
所々が細かく破れた衣服までは戻らないまでも、戦闘メイドたちの大小の切り傷はそれで完全に塞がった。
そして何よりも、あれだけの攻撃を受けながらも元より俺には傷一つない。
ラベンダを始めとする戦闘メイドたちは、見事完璧に主人たるこの俺を守りきったのだ。
パチ、パチ、パチ、パチ。
「ほっほっほ。いやはや、これはすごい。さすがは魔王殿と言うべきですかな。ご本人はもちろん、なかなか良い臣下を持っておられる。この儂の生涯をかけて到達した魔導の頂点の一つ、こやつら限界まで魔力で肥え太らせた魔力タンク奴隷共の生命を吸い尽くして放った極大魔法をこうもあっさりと破られてしまうとは。いやはや誠に感服しましたわい」
そう言いながら、むしろ馬鹿にしているとしか捉えられない軽薄な拍手と共に俺の視界に現れたのは、魔法の力でふよふよと地面から浮く、少数の手勢を率いた老人だった。
エリミタリア永世帝国最強戦力にして最高幹部たる四大将帝の一人、魔導将帝ジャクム。この会戦における俺の最大の標的。
――くく! 来たか……! 老害……!
そして、細かな差異はともかく、大勢においては想定どおりに事態が進んでいることを確認し、俺は口の端をつり上げた。




