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5、えへへー! 天真爛漫な少女勇者。

※本日2話目です!




「よーし! 女神さまへのお祈りも終わったし、準備できたー! みんな! いっくよー!」


 天真爛漫そのものといった表情で、下はタイツにミニスカートタイプの軽鎧を身につけた赤く長い髪の少女が豊かな胸を弾ませながら、聖なる女神像(セーブポイント)から離れる。


 ……まあ、あれほど熱心に祈ったところで、実際にセーブできているのか、そして天にいるという聖なる女神への祈りとやらが届いているのかは無論、この俺の知るところではないが。


「もう……! アリューシャったら、ここは恐ろしい魔王城で、多分これから魔王直属四天王の一人との対決だっていうのに、まるで緊張感がないんだから……!」


「えへへ! そー言わないでよ! メルニー! どーせたいへんなら、楽しく! 元気よく! いこー!」


「ははは! さすがはアリューシャさんですね。……不思議です。貴女を見ていると、どんな困難でも、ちっとも困難じゃなく思えてきてしまいます。これが勇者の力なのでしょうか」


 ガシャ。


「いや、アリューシャのあれはただの能天気だろう。……不思議と心地よく、悪くないがな」


「うんうん! だよね! アリューシャはやっぱりすごいよ! よーし! わたしも精いっぱい歌って、みんなの役に立つね!」


「えへへ! ありがとー! よーし! じゃあ、みんなの心が一つになったところで、四天王との対決前にここで気合いをいれよー! ほらほら! メルニーも恥ずかしがらずに! いっくよー! えい! えい!」


 天真爛漫に微笑む赤い髪の少女勇者の差し出した手の甲に、次々と手が重なる。


 そして、おずおずと黒髪の少女魔導士の手が重なり――



「…………ふ」


 ――そこでこの俺、闇の貴公子ジュドは息を一つ吐き、この階層のマスターたる『視認』の権能を行使するのを止め、すうと瞼を開いた。


 それから、意識を現実に切り替えるべく、首を軽く横に振ってから、厳かにうなずく。


「ふむ。勇者、魔導師、回復役のビショップにタンク役の聖騎士、バフ役の歌い手……女だから歌姫か。男女比は男二人に女三人。まあなんというか、極めて基本に忠実(オーソドックス)といったところか。……まあ、プレイヤーの頃の俺が何度か試したように勇者以外がバフデバフ要員の歌い手や舞い手のみで構成されたピーキーなパーティーに来られても……それはそれで、勝敗が生死に直結するこの世界でそれをやるのかと、いささか反応に困るが」


 そう一人ごちると、俺は石造りの椅子からゆっくりと立ち上がった。


 夜の闇を写した藍色の片側留めのマントをバサリと翻し、軽く埃を払う。


「それにしても、直情熱血漢の男勇者ではなく、よりにもよって来たのは、いやこの世界が選んだのは、太陽のように天真爛漫な少女勇者のアリューシャか。まさか、俺がプレイヤーのときの最推しキャラクターとこうして相対し戦うことになるとは、因果なものだ。……やはり、正直惜しいか。だが、すでに手は尽くした。この俺にとって最善の結果を得るための。無限の手札から選んだ二つのスキル。あのチート級最強最悪スキルの一つと、あのスキルの効果が俺の思うとおりならば……! そしていずれにせよ、この俺がやるべきことは変わらない……!」


 佇む俺の目線の先。


 薄暗い石造りの広間の両開きの大扉から差し込む光がゆっくりと少しづつ広がっていく。


「この俺の野望! そう……! 全てを手に入れる覇道の成就のために、全員等しく蹂躙するだけだ……!」


 そうして、元日本人、プレイヤーとしての記憶を持ちながらも、いまや完全に心身ともに闇の貴公子ジュドと一体化した俺は、秘めたる野望を胸に少女勇者アリューシャたちを出迎えた。


 ――魔王麾下(きか)直属四天王の先陣として。



ここまでお読みいただきありがとうございます!

もしよろしければ、


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・広告下にある「☆☆☆☆☆」から評価


をしたうえで、本作を読み進めていただけると幸いです!

モチベアップにつながりますので!

どうぞよろしくお願いいたします!


では、また明日!

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