43、絶対的なる力の差。2対二万の戦争と、その結末。
本日3話目。
くく……! 人生とは、いやいまは魔族生だが、本当に面白く、わからないものだ……! まさかこの目で直に、それもこの立場で体感する日がくるとはな……!
これが共通の大敵。つまりはこの俺を前に、かつての敵同士が一致団結するということか……!
『『おおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!』』
雄大な湖を境に隣り合う小国、トーリラ王国とフレト王国が長い間争いあってきた戦場。
いまや完全にその歪なる野心で志を一つにし、たった二人の魔族、俺とデスニアに怒涛の如く襲いくる両国あわせて総勢約二万の有象無象の兵士たちを目にしながら、俺はそんなどこか他人事のような不思議な感慨さえ覚えていた。
「ジュドさま」
「まあ待て。デスニア。どうせ殺到する歩兵たちが邪魔で、後衛の魔法兵や弓兵たちもすぐに俺たちに攻撃はできない。くく……! ならば、ギリギリまで待つとしよう……! そのほうが骨の髄までより理解できるだろう? 自分たちの愚かしいまでの圧倒的な無力さと、現魔王と前魔王たる俺たちとの埋めようもない絶対的なる力の差を……!」
「なるほど! さすがはジュドさま! わかったのじゃ!」
そう言いながら、俺とデスニアはいつでも発動できるようにスキルをセットした。
『『おおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!』』
――くく! 確かにある意味では、とても麗しいものだ!
その根底にあるのが所詮醜悪極まりない身勝手な野心にすぎないとはいえ、つい先ほどまで血で血を洗う争いを繰り広げていたものたち同士がこうして志を一つにして、向かってくるというものは!
『『おおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!』』
そしてもし! 手を取り合った敵同士の力で見事共通の大敵を討ち果たせたならば、そのときには! 得難い経験とこの上なく甘美なる勝利がその身を満たすだろう!
「だが! それゆえにおまえたちは、もう一つ覚悟するべきだ! すなわち! 絶対的なる圧倒的な力を持った第三の大敵! 魔王たるこの俺の前に! 等しく蹂躙され、屈服し! 無様に頭を垂れるという最低最悪極まりない結末を! そう! このように!」
『『おおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!』』
そして、殺到する約一万の兵士。その先陣が獣染みた雄叫びとともに無数の槍衾を突き立てる中。
『『――跪け』』
微動だにすることなく俺とデスニアは、ただ同時に宣言した――この戦争の終焉を。
『『う、あ!? うあああああぁぁぁぁっっっっ!? か、体がっっ!? 勝手にぃっっ!?』』
「「こ、こんなっ!? ばば、馬鹿なぁっ!?」」
そう。魔王専用スキル〈魔王の威圧〉。
この世界では、現クラス魔王である俺と、生まれながらの魔王であるデスニアのみが使用可能とする有象無象の雑魚どもには抗いようのない絶対無敵のいわばチート級最強最悪スキルの一つ。
戦場中にトーリラ王国とフレト王国、二国の垣根なく誰一人として逃すことのない圧倒的な魔力と圧力が満ちる。
「ふはははは! これで決着はついた! この俺の、魔王国エンデの勝利だ! さあ! いまここに集いし、約二万の人間たちよ! 無様に跪き、頭を垂れたそのままで、いま一度聞け! そして、畏怖と共にその魂の奥底まで刻むがいい! 我が名は、魔王国エンデの頂点、魔王ジュド! いずれ、遍くこの世界の全てを手に入れるものなり!」
そして、後衛の魔法兵と弓兵、両国の指揮官に至るまで全て等しく地に跪き、呻き、頭を垂れ――ここにたった二人の第三軍たるこの俺の勝利は、高笑いと共に確定した。
――二対約二万。その戦力比一万倍差の中、一切の交戦行為すら許すことのない、無血のままに。




