35、ジュドの謝罪と、上に立つものの資格。
本日3話目。
「本当にすまない! 勇者アリューシャよ! 此度貴女の身に起きてしまったことは、全てこの俺の責任だっ! このとおり、心より謝罪するっ!」
高難易度ダンジョン攻略型RPG〈ダンジョンブレイバー〉。そのストーリー上のラストダンジョン魔王城。
その最上十階の魔王の居室のリビングにて。
上座の一人がけのソファから立ち上がり、俺は深々と頭を下げていた。
左手の長ソファに座る、すでに俺の状態回復魔法クリアランスで正気を取り戻した、いまは穢れない静かな青い瞳で俺を見つめる勇者アリューシャに向かって。
すると、その対面に座る前魔王の少女デスニアが慌てた様子でガタン! と立ち上がった。
「ジュ、ジュドさまっ!? 魔族と魔物の頂点、そしてこの我の主君ともあろうお方が! 何を軽々にこんな捕虜の勇者の小娘などに頭を下げておるっ!? そ、それに何もジュドさまが謝ることはないであろう!? 全てはジュドさまの命令を勝手に曲解して捉えたあの戦闘メイドどものせいではないか! ……お、おかげでこの我は、び、敏感な角の付け根をあ、あんなに……! し、しかも危うくこの勇者の小娘などを、こ、この我の姉だとまで、呼ばせかけられて……!」
羞恥にその雪白の頬を赤く染め、ぷるぷると震えるその俺の右腕となった少女に、顔を上げた俺は真剣な声音で話しかける。
「いや、それは違うぞ。デスニア。まあいままでの魔王という名の小さな暴君だったおまえにとって、配下などいてもいなくてもどうでもいい存在だったのだろうが……。いい機会だ。覚えておくがいい。上に立つものには、常に部下の行いに責任を持つ義務がある。それは成功も失敗も同じ。そうでなければ、もし上に立つものが成功は当然に自分のものとして享受し、だが失敗はおまえのせいだと部下に無責任に押しつけるのならば、そんなものには上に立つ資格などない。そして、いずれは誰一人としてついていかない、自業自得な文字どおりに裸の王へと成り下がるだろう」
「う……。わ、わかったのじゃ。ジュドさま。すまぬ。こ、この我が浅慮であった……」
白銀の髪を揺らしながら、わかりやすくしゅんとうな垂れるデスニアに向かって、俺はもう一度、今度は優しく声をかける。
「ふ。そう落ち込むな。デスニア。これからこの俺の傍らで少しずつ学んでいけばいいだけだ。それより、先ほどはご苦労だったな。自らの危機さえ省みず、よく俺の命令を完遂してくれた。さすがはこの俺の最も信頼する右腕だ」
「じゅ、ジュドさまっ……! も、もったいないお言葉じゃ……!」
その俺の言葉に、今度はデスニアはわかりやすくその紫の瞳を宝石のようにきらきらと輝かせた。
俺は、自らが先に腰を下ろすことでいまや忠実な配下となったデスニアにも座るように促してから、事の次第を黙って見守っていた勇者アリューシャに向き直った。
「さて、聞いてのとおりだ。勇者アリューシャよ。許してくれ、とは言わない。だがこの俺の謝罪、受け取ってもらえるだろうか」
「…………え? あ、うん。いいよー。ジュドー」
だが俺の予想に反し、勇者アリューシャはその穢れのない青い瞳をぱちくりと瞬かせてから、あっさりとこくりとうなずいたのだった。




