32、桃色に染まる元居室と少女勇者の誘惑。
本日4話目。
ガチャッ。
「っ……!? な、何だっ!? これは……!?」
高難易度ダンジョン攻略型RPG〈ダンジョンブレイバー〉。そのストーリー上のラストダンジョン魔王城。
その三階。いまや魔王となった俺の元四天王としての居室。
――扉を開いたら、そこは異常だった。
桃色。そう。全てが桃色に染まっていたのだ。
光量を抑えた魔力の灯りは、何かしら塗料でも塗ったのか部屋を薄暗く桃色に照らし、そして大量に香でも炊いているのか、ひどく甘ったるいにおいのする桃色の靄がむせ返るように元俺の居室中に充満している。
無論、この俺に居室を桃色に染める趣味などない。どちらかと言えば、好きな色は黒、そして夜の闇を写したような藍色だ。
それぞれいまの俺のマントとデスニアにあげた前のマントと同じ色でもある。
「こ、これはまた、意外な好みじゃな? だ、だがこの我は、もちろんジュドさまのことなら、なんでも受
け入れる覚悟はできておるぞ? ……いや? むしろ案外よいかもしれぬ。桃色に染まり照らされた甘く蕩けるような香の炊かれた居室で、この我とジュドさまとがいずれ目眩く愛を交わし合うのも――」
「だからっ! これは俺の趣味ではないと言っているだろう! デスニアっ! まったく……いや、待て!? そうだっ! アリューシャっ!?」
懇願し俺に半ば無理やりについてきた前魔王の少女デスニアの茶々に突っ込みを入れるとともに、俺はそもそものここに来た理由を思い出した。
「ふえぇっ!? ちょ、ちょっと待つのじゃ! ジュドさま! 趣味ではないとかなんとか、この我はジュドさまから何も聞いておらぬぞ!?」
その何やら叫ぶ背後からの声を置き去りに居室の奥へと向かって一気に駆け出し、慣れ親しんだ寝室の扉を勢いよく開け放つ。
「うっ………………!?」
――その部屋の中は、さらに一際濃厚な桃色の靄に満たされていた。
その発生元であろう香炉が部屋の四隅とベッドのすぐそばにも置かれ、いまももうもうとその甘ったるいにおいとともに色濃く靄を部屋中に立ち込めさせ続けている。
こ、これは、一体なんだ……!? いまのところ俺の体に何ら変調はきたしていないことから、毒の類ではないはずだが……!? い、いや! いまはそれよりも!
「あ、アリューシャっ! 無事かっ!?」
その元俺の部屋のベッドに寝ているはずの人物に向けて、俺は声を張り上げる。
「……ん〜? あたしを呼ぶのは、だぁれ〜?」
すると、立ちこめる桃色の靄の向こう。
間延びした緊張感のない返事とともにベッドに寝そべっていたらしき人物の影――少女がもぞりと身を起こしたのを見て、俺はホッと胸を撫で下ろす。
――よかった……! やはり、毒の類ではないようだな……! だが、だとすると一体……?
内心でそう疑問に思いつつも俺はベッドへと近づき――そして、絶句する。
「っ…………!?」
「あ〜。ジュドーだぁ〜。じゃあ〜、いまあたしを呼んだのはぁ、ジュドーだったんだね〜?」
ちりん。
「あたしね〜? さっきからずぅっとずぅっと変なんだぁ〜。この甘ぁいにおいをかいでると〜、なんだか体がすぅっ〜ごくぽかぽかして〜、頭もふわっふわでとろとろして〜、それでなんだか気持ちよくて〜、でもずぅっとお腹のこのあたりがなんだかぁ、たまらなぁくむ〜ずむずするの〜」
ちりん。ちりん。
ベッドの上の少女がその手首と足首とおまけにスキルと魔法封じの首輪につけられた飾りの鈴を鳴らしながら、ゆっくりとその前に立つ俺の元まで四つん這いでやってくる。
「で、ね〜? えへへ〜。あたし、本当は知ってるんだぁ〜。どうすればぁ、このむずむず〜がなくなって、すぅっきりできるのかぁ〜」
「あ、アリュー……シャ……!?」
「だから、ね? ジュドー。これからあたしとい〜っぱい仲よくしてぇ、いっしょに、すっごぅく気持ちよぅくなろ?」
ベッドの上の勇者アリューシャは、その艶めいた赤く長い髪をなびかせ濡れた桃色の唇に指をあて、そう言って俺を四つん這いのまま見上げた。
首にはスキルと魔法封じの首輪に、その華奢な体には立ちこめる靄と同じ桃色の、その豊かな胸が、下の活力に満ちた健康的な肌が透けて見えるほどに薄い桃色のベビードール一枚の格好。
そして、その穢れのない青い瞳にいまはなぜか――桃色のもの欲しげな求愛の光を宿らせて。
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