27、魔王の居室と天蓋つきのベッド。――子猫のように丸くなって。
本日3話目。
「……………ん、む? ……天蓋?」
ここは、どこだ? 俺の自室のベッドに天蓋などないはず……。
……ああ。そうだ。諸々の疲労を癒やそうと、新魔王戴冠のあとで予定どおりもといた階層の自室へ戻ろうとしたところ、晴れて俺の右腕となった前魔王デスニアが――
「あ、あの、ジュドさまはこれから一体どうす――何? もといた階層の自室に戻って休むじゃと? な、何を言っておる!? この我を下したジュドさまは、もう我ら魔族や魔物の頂点、魔王なのじゃぞ! ならば、ジュドさまが住むべきはあの狭くて質素な四天王用の居室ではなく、この謁見の間と同じ最上層にある一番豪華で広々とした魔王用の居室に決まっておろうが!」
そうだ。そう言って俺を……しかし、いままで俺の住んでいた居室って、質素で狭かったのか……。まあ前魔王基準だとは思うが。
まあいい。それから――
「……この我? こ、この我のことなど気にせずともよい! ジュドさまが住む魔王の居室のすぐ隣に、おお、王は……そ、側近用の居室があるから、そこに移るだけじゃ! ジュドさまがこの我を優しく気遣ってくれるのはもちろんこの上なく面映ゆいほどにうれしいが、愛する主君にどうかゆるりと休んでほしいというこの我の気持ちもどうかわかってくれぬか? ……そうか! では、行こうぞ! ジュドさま! こっちじゃ! この我についてまいれ!」
――そうして半ば無理やりに……いや、わざわざ穿った見方をする必要はないな。
俺に少しでもゆっくりと休んでほしいというありがたい心遣いをしてくれた俺の右腕となったデスニアの先導で、どうせいまもとの居室のベッドは勇者アリューシャが占有していることだし。
と、この代々の魔王の居室……つまりいまはこの俺の居室にたどり着き、この天蓋つきの豪奢なベッドに寝転がると、いつのまにかそのまま眠りについてしまった、というわけか。
ふぁ……とベッドに寝転んだまま優雅に欠伸をしながら、自分の体の調子、特に回復した魔力量を確かめる。
……ふむ。四、いや三割程度といったところか。
間違いなく寝心地はこちらのベッドのほうが上なのだが、どうもあまり長い時間は眠れなかったらしい。
ふ。我ながら神経が細いことだ。早く慣れなければな。
この天蓋つきベッドの心地よい柔らかさにも、このほんのりと甘く芳しい香りにも、それからこのすぐ近くの、すぅ、すぅと聞こえる俺以外の息遣いに…………も?
お、俺以外の息遣いっ!? ど、どういうことだっ!? ま、まさかっ!?
そこで俺は薄暗がりの中、飛び退くようにベッドから降りると、天蓋の横部分のカーテンをシャッと開いた。
すると、そこには――
「な、なぜおまえがそこにいるっ!? デスニアっ!?」
――すぅ、すぅと気持ちよさそうに寝息を立てる子猫のように横向きに丸まった、曲がった黒の角が波がかった長い銀の髪を冠のように美しく彩る愛らしい少女の姿があった。
なぜかその日の光を知らないほどに雪白の肌の上に俺が謁見の間で貸したマント一枚だけを羽織って、それも寝乱れた、あられもない格好で。




