24、決着。全ての感情を奥底に、いまこの俺の野望のために。
本日4話目。
「きぃゃああああああああぁぁぁっっ!? ぃやあああああああああぁぁぁぁっっ!?」
静寂の謁見の間に響き渡る甲高い少女の悲鳴。
その身と精神を焼き尽くさんと少女の体それだけにいまだまとわり続ける冥府の闇の紫の極炎。
――この少女魔王デスニアを倒すために俺がスキルリセットし習得し直した新たなチート級最強最悪スキル〈アビスフレア〉。
同種同系統の〈アビスフレイム〉とは似て非なるスキル。
その効果は、単体超極大ダメージと紫の炎による継続ダメージ、行動阻害と闇属性の特性による魔力吸収。
だが、正直この〈アビスフレイム〉と同じ追加効果は全ておまけだ。
重要なのは、一番最初の効果。単体超極大――平たく言うならば、ゲーム中においてはプレイヤー側が体力最大でもそれを軽く上回るほどのダメージ。
……追加効果がおまけだという意味がよくわかるだろう?
「ぃやああっ!? きぃやあああああああああああぁぁぁぁっっ!?」
俺はいまだ紫の極炎に灼かれ続け、間断なく悲鳴を上げ続ける少女魔王を見つめ続ける。
……いまの俺がこの魔王デスニアを正直惜しいと、魅力的な少女だと思っているのも本当だ。
できるならば、その退屈と孤独な日々から救ってやりたいと思っているのも。
だが、それでも――俺のやるべきことは、変わらない。
「でもっ! やっぱり、だめだよ! そのためにたくさん犠牲にするなんてひどいことっ! だから、ジュドー! あたしはいまここで、あなたを止めるっ!」
最終的に全て俺の思惑のとおりに上手くいったとはいえ、あの太陽のような少女勇者アリューシャとて、結果が転んでみるまでは、どうなるかはわからなかったのだから。
――だから俺は一切、野望のために手心は加えない。
「さて…………どうなる?」
「……………………」
やがて紫の闇の極炎が収まり、その絶大な威力の前に装備をほとんど破壊された、火傷一つないつくりものめいて美しい雪白の肌の半裸の少女が声もなく玉座の前の床にどしゃりと倒れ伏す。
そして、その動向を注視し続けていたそのとき、ピクリ、とその小さな指が動いた。
そのまま、ググ、グ……と少しずつ両腕に力を入れてその小さな体を起こそうと――
「そこまでだ。現魔王デスニア。動けば、撃つ」
――その俺の最後通告にピタリと、少女魔王のその動きが止まる。
「絶対に動くな。這いつくばったまま顔だけ上げて俺を見ろ。そして、いまのおまえの置かれた状況を理解するがいい」
そう告げる俺の右手のひらの先には、すでにいつでも放てるように魔法が待機されていた。
床の上に這いつくばったままの魔王デスニアがその乱れた長い銀の髪が前にかかったまま、恐る恐るというようにゆっくりと顔を上げる。
「う、あ……。ファイ……ア……ボール……?」
その怯えるような美しい紫の瞳が瞬き、小さな唇が震え、困惑するようにその凡庸そのものなスキルの名を告げる。
「そう。見てのとおりのただの初級火魔法。スキルレベルも一切上げていないから、威力も最も低い。ただし、ゆえに――最も速い」
「っ………………!?」
――高難易度ダンジョン攻略型RPG〈ダンジョンブレイバー〉において、一部を除くスキルはレベル制をとる。
ほとんどのスキルは基本的にレベルを上げれば上げるほどに消費魔力の増加に合わせてその威力が増す。
そして、魔法においては詠唱時間が長くなる。そう。ゲームにおいては。
おそらくこれもまた、いままで俺が発見してきたのと同じ、ゲームの仕様が実際の戦いに合わないための相違だろう。
スキルリセットしながら実際に試してみたところ、レベルを上げても詠唱時間は変わらない。
まあ考えてみれば、同じ魔法を詠唱しているのだから変わりようがない。
刹那の時間での攻防を余儀なくされる実戦で長々と詠唱をするのは難しいという側面もおそらくあるだろう。
では、代わりに何が変わるのか? その答えが溜め時間と弾速だ。
といっても、大きく変わるのは溜め時間で、弾速への影響は微々たるものだ。
これも考えてみれば当たり前だ。溜め時間はまだともかく弾速があまりに遅くなれば、それもまた詠唱時間同様に実戦では使いものにならなくなってしまう。
そして、溜め時間の増加と弾速の減速があったとしても、総じて考えればスキルレベルを上げたほうがいいのには変わりはない。
だが事実として、全くの無強化のこのレベル一のファイアボールこそが最も速いのだ。
そして、チート級最強最悪スキルにより最早あと一撃で死に瀕するほどに弱った少女魔王を倒すのに過剰な威力など全く必要がない。
――むしろ逆説的に言うならば、いまこの最弱無強化の初級魔法こそが少女魔王にとっての無慈悲なるチート級最強最悪スキルと言えた。
「さて。これで状況は理解したはずだ。現魔王デスニア。もう一度だけ言う。そして、これで最後だ」
そこで俺は、痛惜も、親愛も、憐憫も、好意も――それ以外にこの少女に対して抱いた何かも、いま湧き起こる感情の全てを奥底に閉じ、ただ淡々と正真正銘の最後通告をもう一度宣言する。
「もはや決着はついた。この俺の、闇の貴公子ジュドの軍門に降れ。現魔王デスニア。断れば――撃つ」
そして少女魔王は、床の上にその雪白の手で這いつくばったまま、わなわなと小刻みに震えた。
その小さな唇をぎゅうっと噛み締め、激しい苦悶に顔を歪め、ぶんぶんと何度も何度も何度も首を振り、だがやがて静かにうなだれると――
「ジュドさまの……軍門に……降る……。この我の……負けじゃ……」
すすり泣くような、消え入るような小さな声でそう答え。
「わかった。では、おまえのその玉座。この俺がもらい受けよう」
――そして俺は、心からの安堵をもって、そう答えた。
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