20、返答と、提案。……そして。
本日最後。6話目です。
――〈退屈と孤独な生涯を送る不遇の少女魔王デスニアたんを救いたいSSぺろぺろ7〉
高難易度ダンジョン攻略型RPG〈ダンジョンブレイバー〉において、ストーリー上のボス、少女魔王デスニアは敵役として、特にその愛らしく優れた容姿から、男性プレイヤーから一定の人気を誇る。
他に四天王では前にも言及したとおり、この俺こと闇の貴公子ジュドがイケメン敵役として主に女性人気を。
「弱々なジュドきゅんを一ターンでボコっちゃう」、「あえて低レベルにしておいた少女勇者アリューシャ単騎で弱々ジュドきゅんといつまでも終わらない殺し愛しちゃう」などといった、いまや最強となったいまの俺には全くあてはまらない、やや歪んだ理由により、偏執的な愛を向けるプレイヤーも男女問わず一部いた。
あとは意外にも死霊軍師パペネクタも半分髑髏と半分道化な仮面がキモ可愛いとか言われて、それなりに女性人気を。
闇ニンジャマスターのイクチノも、まあ……あの爆のつきそうな豊満な体つきと扇情的な格好から男性人気が高かったりする。……二次創作とか。
そうして考えると、四天王唯一の全くの不人気キャラは、あの全身黒鎧男、暴魔将軍バーオネラル一人と言えよう。
で、少女魔王デスニアに話を戻すと、当初はその愛らしい容姿による人気のみだったが、のちに発売された設定資料集により、ゲーム中では匂わす程度だった両親の死と引き換えに生まれたことを初めとするその不遇とも言える裏設定が開示されると。
先ほども軽く述べたとおり、一部のプレイヤーによりいわゆるif二次創作SSがいくつも創られることとなった。
もっとも、キャラクター描写のずれが気になる面倒な性質のプレイヤーだった頃の俺はそういったものには触れてこず、当然その強さと暴虐な面しか知らない少女魔王デスニアにも、特に好意や思い入れなどなかったわけだが――
――マジでめちゃくちゃ可愛いな。この少女魔王。
すっかりといままで見知っていた暴虐の魔王デスニアのそれと、いま目の前で見せられる愛らしい少女然としたギャップに見事にやられたプレイヤーとしての俺が闇の貴公子ジュドとしての意識を貫き、そう心の中で叫ぶ。
そしてほどなくして、それは俺自身の意識と溶け合い、完全に俺自身の認識となった。
――そうだな。確かに、魅力的な少女だ。
退屈と孤独に生き、それゆえにそれを紛らわす、あるいは解消するというおそらく自らが認識してすらいないかすかな希望の前には、暴虐の魔王としてではなく、見た目相応の少女としてのかくも愛らしい姿を見せる。
――ある意味では、無垢。
まだ本当の意味では世界を知らず、これからどのようにでも染まりうる可能性を秘めたその姿は、世界の汚さや醜さを十分に見知った上で、それでも変わらずに太陽のような笑顔を魅せる勇者アリューシャとは、やはり対極の存在だった。
だが、それでも――俺がやることは変わらない。
「ど、どうじゃ? ジュド。いつまでもそうして黙っておらず、この我にそろそろ貴様の返事を聞かせてくれぬか?」
一世一代の求婚の言葉の返事を小さな指を小さな胸の前でもじもじと絡ませながら、上目遣いで高貴なる紫の瞳を揺れるその内心のままに揺らめかせる。
意中の男へのいじらしい淡い恋心すら滲ませるその姿は、まさに愛らしい少女そのもので。
だからこそ、俺は――
「ああ。そうだな。確かにそれは、とても魅力的な提案だ」
「っ……! な、ならば、ジュドっ! この我とっ!」
「ふははははっ! だからこそっ!」
――バサリと夜の闇を写した藍色の片側留めのマントを翻し、その場で俺は高笑いを上げる。
「現魔王デスニア! この俺もまた貴女に提案しよう! 玉座から追い落とした後、我が軍門に降ることを許すと! この俺の傍らに侍り、傅き、永久に従うがいい! そして誓おう! この俺の忠実なる臣下となった暁には、必ずやいま貴女が抱える退屈と孤独と無縁の日々をこの俺が送らせてみせるとっ!」
そこで俺は殊更に優雅な微笑みとともに、誘うようにその右手を前へと差し出す。
「現魔王デスニア。この世界は、いまの貴女が思うよりもずっと広く、そしてまだ見ぬ驚きや喜びに満ちているのだ。俺と共に来れば、それをいくらでも教えてやる」
その俺の心からの誘いに、いままでで最もその高貴なる紫の瞳が激しく揺れるその内心のままに揺らめく。
――そして。
「……ジュド。それが貴様の答えか? ……残念じゃ。本当に」
ぼそりと低い呟きとともに、ゆっくりと少女魔王デスニアがその玉座から立ち上がった。
「「ひぃぃぃぁぁっっ……!?」」
床に跪いていた有象無象どもが、さらに強制的に這いつくばらせられるほどの、俺と相対していままでで最も烈しい重圧と目に見えると錯覚するほどの怒りと敵意を撒き散らして。
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