13、勇者パーティーの後始末。……張りつけたような笑顔とともに。
本日3話目。
「ああ。そうだ。ラベンダ。勇者パーティーの他のものたちとは違い、この俺の隣に座って眠る勇者アリューシャだけは、客室ではなく他のものたちと同じく治療と封印の首輪を施した上で俺の居室に運んで寝かせておいてくれ。俺もあとでこのものとは、二人きりで話したいことがあるのでな」
「は、い……!?」
ピンクのツインテール、緑のシニョン、オレンジのポニーテールに青のショートカット。
色とりどりの髪色と髪型、豊満だったりスレンダーだったり小柄だったりと体型の異なる戦闘メイドたちが広間の石造りの床の上で倒れ、いまだ眠ったままの装備をほぼ破壊された半裸となった勇者パーティーのメンバーたちを一人ずつ清潔で柔らかな布で包み、その細腕に一人ずつ抱えていく。
戦闘メイドの中でも一際小柄なピンクのツインテールのチェリなどが大柄な男の聖騎士を布に包んでお姫さま抱っこにする姿などは、実際は十分に腕力があるとはいえ、はたから見ればおそらくかなりシュールな光景だろう。
まあ、それはさておき、この俺の野望達成のための最大の障害の一つである勇者をこうして倒したいま、そろそろ俺は野望達成のためのもう一つの最大の障害排除のための準備を始めなければならない。
勇者パーティーについては、もう戦闘メイドたちに後の始末を全て任せるべきだろう。
「ん、すぅ……。すぅ……」
そこで俺は、いつまでもこうして肩に寄りかからせ、ここですやすやと気持ち良さそうに眠らせておくわけにはいかないと、隣に座る片側留めのマントの内側に隠した勇者アリューシャを戦闘メイドたちのリーダー格、紫の三つ編みのラベンダに預けることにした。
だが、眠る勇者アリューシャを丁重に受け取ろうとしたその寸前。
いま俺が告げた命令を受けたラベンダの体が包むための布を持った手を伸ばしたまま、ピシリと固まった。
それから、目に見えるほどに大きくごくりと唾を飲みこんでから、一語一句確かめるようにして、ゆっくりと、やたらにぷるぷると震えた声で俺に確認をとる。
「あ、ああ、あくまで……! かか、確認ですが……! こ、この少女勇者を……ね、寝かせるのは……! ま、まさか、まさか……! じゅ、ジュドさまの寝室……で、でしょうか……!?」
「ん? ああ、そうだな。生憎だが俺の居室には、ベッドは寝室にある一台しかない。かといって、ソファに寝かせておくにも少々手狭だろう。ふ。寝相が悪くて大事な客人に床に落ちられても困るしな。うむ。いた仕方あるまい。しばし、俺のベッドをこの勇者アリューシャに貸してやるとしよう」
そうして俺が鷹揚にうなずくと、直後ラベンダは衝撃に撃たれたように正面を向いたままビクリと体を震わせた。
それから一度うつむき、バッと顔を上げると、なぜか他の戦闘メイドたちにバババッとすばやく目配せをする。
すると、なぜか他の戦闘メイドたちも何かを心得たように一様にこくりとうなずいた。
――いまのは、俺の気のせいか? 戦闘メイドたちの色とりどりのその瞳がいまギラリと光ったような……?
「……ジュドさまの忠実なる配下たるこの戦闘メイド、ラベンダ。委細了解いたしました。最大限ジュドさまの意に沿うよう、全力を尽くさせていただきます。では、ジュドさま。ひとまず勇者アリューシャをこちらへ」
「ああ。頼む。……ん? ああ、そうだった」
そして、今度こそ布に包ませた勇者アリューシャをなぜか妙に固い表情と声になったラベンダに預けた俺は、まだ戦闘メイドたちに伝えていなかったことをふと思い出した。
「ラベンダ。チェリ。リリフ。ジオレ。サフィア。勇者たちの襲撃を受け、おまえたちも今日は気を張って疲れただろう。よって、この命令を果たしたあとは次に俺からまた別命あるまで休息をとるがいい。……そうだな。このあと俺は勇者を倒した件で魔王との謁見に臨むことになるはず。そのあとは事態が上手く運べば、俺も一度自室に戻って休息をとる。次におまえたちを呼ぶのはおそらくそのあとになるから、ある程度まとまった休息がとれるだろう。……俺の計画どおりにいけば、これから忙しくなるはずだ。俺の信頼する部下であるおまえたちも、いまのうちにしっかり英気を養っておけ」
労いの言葉と休息の許し、それから信頼する部下たちに向けて、まだ事を成していないいま多くを語ることはできないが、これからのことについて軽く檄を飛ばす。
その俺の言葉を受け、戦闘メイドたちは一様にビクリと一度身を震わせたあと――
「「「委細、承知いたしました。お許しいただきましたとおり、この命令の後はありがたく休息をとらせていただきます。そして、次なるご用命があるまで、ジュドさまの居室には、決して、断じて、絶対に、近寄りませんのでご安心を。謁見後、自室に戻られる前までにあとの準備は全て整えておきますので、どうかそのあとはジュドさまがご満足いただき心ゆくまで、ごゆるりとお過ごしください。ええはい。どうぞ、どうぞご存分に! この勇者アリューシャと、二人っきりで!」」」
――なぜか一様に張りつけたような薄っすらとした笑顔のまま、最後は語尾も荒く、俺に深々と頭を下げたのだった。
「あ、ああ」
完全にその迫力に気圧された俺は、いまはそう返事をするのが精いっぱいだった。




