9 心配
「皆さん、ここなら安全です。」
突然のことで泣くやつもいれば、放心状態のやつもいた。すると、物が落ちる音がした。
「あんた達のせいで!!私のかわいい子供達が死んでしまったじゃないの!うっ…ううっ…返してちょうだい…。私のかわいい子供達を返しなさいよ!!」
「やはり神力修ではなく、神力者に頼めばよかった!」
藍冀夫人が神力修の襟を持ち泣きながら言っている。㯥舞月神の神力修は藍冀夫婦からの言葉に言い返せず、悲しそうな悔しそうな顔をしていた。
(そんな責めることか?ふぅ。)
呑心は一息つき言う。
「なんで神力修達を責めるんだ?そいつらは悪くない。現時点で俺たちを守ってくれている。それに、公子様は夜中に出るなと言われていたのに外へ出た。姫君もだ。静かにと言われていたのに大きな声をだした。自業自得だ。そうだろ?」
「お前っ…!!無能のくせに偉そうと!」
「はっ!俺が無能なら、俺より知識がないお前達は猿以下だな。」
「なんだと!?」
呑心は肩をすくめ、少し舌をべーとだす。もともと怒っていた藍冀夫婦はもっと激怒した。
(火に油を注ぐと言うのはこういうことだ。)
からかうような楽しそうに思った。そんな激怒した藍冀夫婦が今にも突っかかろうとしたとき──
「大丈夫です。藍冀の若君もありがとう。」
神力修が呑心と藍冀夫婦の間に立った。そして、腹の前へ両手を持って組み浅く礼をしながら言う。
「藍冀宗主。すべては私共の責任です。ここにいれば安全です。どうか時間をくださいませんか?」
「っ!………次はないぞ。」
「お心遣いに感謝を…。」
さすが、礼儀正しい㯥舞月神。言葉遣いもよく、相手を落ち着かせる声音。
(この術も綺麗にできていた、まだ才能を開花できる。死ぬにはもったいないな。)
そうして、神力修2人は屍や霊魂を祓いに外へ出る準備をしていた。呑心も鬼が出たので様子を見にこっそり外へ出ようとすると、神力修達が話しかけてきた。
「あの、そこの若君。外へ出るのは危険ですよ。」
「!い、いや~…。外が気になってな。そういや、お前らの名前は?」
「私は㯥舞月神の神力修 白月 廉です。」
「同じく、俺も㯥舞月神の神力修 白月 力です。」
「いい名前だな。俺は空…ヴウン!藍冀魁杜だ。よろしくな。」
「こちらこそ。」
(危ない。危ない。つい本名を言うところだった。)
呑心は後ろに振り向き、口元を両手でふさいだ。
白月廉は頭がよさそうで優しそうな青年。白月 力はおとなしそうだが、口喧嘩しそうな青年だ。
(そうだ! )
呑心は、鬼のことを教える。
「気をつけろよ。"鬼"がいた。」
「それは…!ご報告ありがとうございます。それでは。」
そして、廉と力は文字が書かれた札をはがし外へ出ていく。俺も扉が閉じる瞬間にこっそりと外へ出た。