4 門番
馬に乗って賑わう街中にでてきた。周りには八百屋・魚屋・居酒屋などの店の人が通行人へ呼び掛けている。
「そこの馬に乗ったお兄さん!りんごを1つどうだい?」
「気持ちだけもらっとくよ!ありがとなお姉さん!」
呑心は賑やかな街を見て、結構成り立っているんだなと感じた。
そして、しばらく歩いていると街で一番大きな屋敷が見えた。表札には【藍冀】と書かれた文字。
「よし、ここだな!街で一番大きい屋敷ということは、この街の管理家は藍冀のやつらだったんだな。」
門をくぐろうとした瞬間、顔の横すれすれに卍型の手裏剣が飛んでくる。
「誰かと思ったら、これはこれは"無能の藍冀魁杜"じゃないか。よくここに戻ってこれたものだな。」
(は。よく戻ってこれただって!?そっちのお坊っちゃまが働けって言いに来たから、わざわざ俺が来てやったのに!理不尽だ!)
呑心は、開いた口が塞がらない状態になった。
「お、お坊っちゃまに来いと言われましたので…。」
無能と言われてるし藍冀家には虐待をされてたんだ。このくらいの演技でいいだろう。
「公子様が?ふん!公子様が来いと言ったとて、お前みたいな無能が、藍冀家の門をくぐることを俺が許さん。」
(はぁ…。めんどくさいやつだな。その謎の自信はどこから来るんだよ。というか、そのことなら公子様のいうことを破ってるし!)
呑心は思わずため息が出た。どうやらこの門番は、藍冀家に腕前を認められ、今にいたるらしい。たしかに腕前はいいが、どうも、こう、いきっている雰囲気だ。
「それに今日は神力修様方が来ているのだ、お前みたいな無能がでると……」
さっきからぶつぶつ独り言を言っている門番に、呑心は呆れ、口を閉ざす閉語術を使う。すると、いきなり口が開かなくなったのか、顔は真っ赤で酸欠状態になっているではないか。
(これはいい気味だな。はは!神力修も来ているのなら、バレない程度に少し暴れるとしよう。)
独り言が多い門番を後にし、呑心は藍冀家の門をくぐった。