25 風
落ちていく2人。従者達の顔は青ざめている。将来の跡取りと優秀な神力修が崖から飛び降り、自殺行為をしているのだから。
呑心と思季は大の字で片手で手を繋ぎながら下を向いて落ちていっている。
「うわぁぁぁ!?!?」
「あははは!!!思季!そろそろ来るぞ!」
「なにが?!」
次の瞬間──
「フワッ」と爽やかな風が横から吹いてきた。これは天雲霞无特有の風だ。前にも話した通り、この小さな水滴と一緒に吹いてくる爽やかな風は、田畑や風車・空天家へと登るために使われる大切な役目がある。
「えええ???」
「うそ」
「まじかよ、ですか…」
上にいる従者達は言った。口から説明できないくらい驚き、それと同時に落下せず2人が無事だったという安心の気持ちが寄りかかってくる。
これは呑心の計画だった。この風を利用し、街まで下りようとしたのだ。
「この風は……うぉっ!」
だが、この風に乗ることは難しい。なぜなら、この風は毎回一定の速さでは吹かないからだ。風に乗っているとき、強く吹くこともあれば、優しく吹くこともあり、時には風が止むこともある。なので、初めて経験した思季は風に遊ばれているかのように吹き飛ばされていったのだ。呑心と手を繋いでいたおかげで離れ離れにならなかったものの、一つ間違えていたら『空天家の公子様 事故死』という見出しが世に一瞬で広まっただろう。
従者達はその様子を見て、あまりの出来事に気を失う人や神に願う人、顔がもっと青ざめる人ばかり。
2人は部屋着の袴を着ていたので、風で長い袖はひらひらし、前側は体にへばりつき、後ろ側は空気が中で籠っており、髪は上へとなびいている。風に飛ばされそうな思季を呑心は自分のもとへと引き寄せ、密着状態にさせた。
「…ちょっ!なにして…」
「思季。風に乗れ!」
「……風に乗る?どうするんだ?」
「いいか。風は空気と空気の押し合いだ。つまり、人間が歩くための道があるように、風にも進むべき道があるん、だっ!」
「は。おい!!!」
呑心は思季を離し、そのまま突き進んだ。もちろん思季は風に吹き飛ばされお互い離れ離れになった。
横目で見た呑心は風と一心同体かのように空を泳ぐみたいに風に乗って進んでいる。
「なるほど。そういうことか。」
その様子を見た思季は理解し、呑心の真似をした。
(泳ぐように…。風に囲まれているように…!)
だんだん地面が近づいてくる。周りは激しい風の音ばかり。風の道を見つけるにはとても集中する必要があるのだ。呑心は慣れたせいか感覚だけで見つけることができている。これは異常なだけで、普段は慣れるのに一週間はかかるのだ。
思季は目を瞑り想像をした。風の通り道はどこか、呑心の周りの風はに特徴・変化はないか観察する。すると、呑心が通る風の道の周りだけ、やたら小さな水滴が多いことが分かった。
「そうか。空気の押し合いならば水滴はトンネルのようになる。」
そう考えた思季はすぐに上達し、簡単に風に乗って進めるようになっていた。綺麗に空を舞っている。
「やっぱりすごいな思季!読み込みが俺よりも早い!」
「そういうお前は風を操っているが?」
呑心が近づいてきた。しかも、風を操って。
「慣れたら思季もできるだろ?」
「たぶんな…」
「それじゃあ!甘味処の近くへ下りよう!」
「あぁ」




