17 鬼神伝の力
術を解いた。
生鬼軍師は動かない間、力をためていたぶん、勢いよくこちらへ向かってくる。呑心は軽々と避け鬼の背中にまわり、鬼の前に少しだけ足を出した。鬼はそのまま盛大に転ける。
「生鬼軍師の鬼は落ちたものだ。」
呑心は無表情で言った。鬼はゆっくりと起き上がり凄まじい声で叫びながら走ってくる。
「静かに。お子様達が起きる。」
またしても軽々と避け鬼の近くで、人差し指を自身の口にあてポーズをする。呑心は後ろに歩く。鬼は大剣を横や縦に振ったりしている。そのたび呑心は余裕の笑みをうかべながら、ジャンプしたり屈んだりと避けていた。
「ゔあ"ぁぁぁ!!!!!ゔぅ!ゔゔぅ!」
「はっ。攻撃が当たらなくて悔しいか。だが、自暴自棄になってるだけの攻撃は俺に当たることはないし、お前が俺に勝つことは一生ない。」
呑心は目を閉じ立ち止まった。そんな鬼は大剣を高く持ち上げ「ゔがぁぁ!!!!!!」と言いながら呑心の頭めがけて振り下ろそうとする。
見えないほどの振り。避けることは無理に等しい。呑心は立ち止まって動こうとはしない。鬼と呑心の2人だけの空間。神力修の2人は気絶しており、助けに来る人はいない。
打ち付けてくる雨までも、すべてが、ゆっくりと動いているようだった。
そしてそのまま、呑心の頭に大剣が刺さると思った…。
すると、いきなり「カッ」と呑心が目を開け少し笑った瞬間─
突然「ブワッ」と空間が歪んだ。雨は止み、風が吹き木がサーサーと音を立てる。その一帯だけの空気さえも変わったのだ。
それよりも大きく変化があったとすると、鬼の大剣は遠くに吹っ飛び、謎の圧が鬼の周りだけにかかっていることだ。鬼はその謎の圧に怯える様子を見せる。
「ふふっ。どうだ?俺の呪力は。」
そう。一瞬にして空間が歪んだのは呑心が鬼に向けて、自身の呪力をぶつけたからである。それは、鬼神伝 空鬼呑心の力は凄まじいと証明できるほどだった。
「少し呪力をあてたつもりだったが、お前には強かったか。」
呑心は鬼の顔の前に「シュッ」と右の手の平を出した。すると、手と顔の間に見えない壁があるように手は止まり、打たれるように鬼は顔を押され、少し後ろへ吹き飛んだ。
「呪力で見えない壁を作り、勢いよく手を出した反動で霊力と一緒に相手へ打つ。俺の得意技だ。」
鬼の顔は霊力が当たったことにより、鼻の骨や歯が折れ、青い血が出ている。呑心は生鬼軍師の目の前に一瞬で現れ、自分の血で書いた札を鬼の頭に貼った。
「漸鬼冥惨死逅 怜恵秀光芒 【閃】!」
呑心は剣印を結び呪文を言った。これは鬼の魂を元々無かったことにさせ、新たに純粋な魂を作る術。つまり、始まりの魂を新たに作ろうということ。
藍冀公子に入っていた、霊魂が集まった鬼の魂は体から出ていく。
── 鬼神伝 空鬼呑心の名により、怨念で溢れる魂達よ。星のごとく光に染まれ。
一体化していた霊魂達はそれぞれ、清く輝く銀色に変わり空へと旅立っていった。




