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邪楽 ─日の國の鬼神─  作者: 明庵 心架
第二章 一族
14/29

14 陣



 一滴の汗が頬をつたって顎から落ちた瞬間、生鬼軍師は雄叫びをあげながら、目に追えない早さで一直線に俺達へ向かい、大剣を振り下ろした。 俺は神力修2人の背中を押し、避けた。



「うわっ!何するんだ!」


「さっきの一撃で時間稼ぎどころか死んでいた。 若君に声を張るのは良くない、りき。」



 りきれんに言われ黙り込み、苦笑いしていた俺にしぶしぶ礼をした。


 床にめり込んだ大剣を持ち上げ再びこちらを見た鬼。 口からは白い息が見える。



「若君は隠れていてください!」


「…わかった。」

(そう簡単には隠れないけどな♪)



 俺は舌を出しながら少し笑った。


 生鬼軍師とれんは剣を構え、お互い睨みながら庭をゆっくりと回っている。 その隙に、りきが後ろから札を背に張り、剣で攻撃した。 しかし、鬼は大剣で攻撃を跳ね返し、張ったはずの札は燃え灰になった。



「うがぁぁぁぁ!! あ"ぁぁ!!」


「札が効かない! くっ!」



 鬼からの凄まじい攻撃を剣で必死に流しながら言った。 こちらが攻撃する隙がなく、敵の攻撃は一つ一つ重く、速かったのだ。剣と剣が交わり、激しい音を立てている。鬼は大剣を神力修に振りながら咆えていた。



「これじゃ!押されるだけだっ!れん!どうする!」


「陣を張ろう!」


「でも俺達が知っている術は、屍や魂を鎮め祓うだけの陣だぞ?!」


「だが、やってみるだけ価値はあるはずだ。」



 れんりきは頷き合い、鬼を挟み、お互い剣を鬼へ向けた。



ひがし㯥舞月神(そうぶげっしん)白月はくがれんと、」


「同じく㯥舞月神(そうぶげっしん)白月はくがりきが申す!」



「「してせいしゅうしたものの魂を抑えたまえ。」」



 2人は地面に剣を刺し、手をパンッ!と胸の前で合わせた。鬼の頭上と足元には水色の円に五芒星が浮かび、だんだんと近づいている。まるで、鬼を押し潰すかのように。そしてれんりきは同時に言った。



「「 各霊冥惨死屍(かくれいめいざんしし)朝刑神奏楽ちょうけいしんそうらく! 」」



 強い風が吹く。陣は鬼を押し潰していき、神力修2人は陣が途切れないよう霊力を流すのに集中していた。生鬼軍師の鬼は苦しいのか、陣を必死に押し返している。



「へぇ。鬼に屍や霊魂を鎮める術をかけたか。少しは効果があるようだが……」



 呑心てんしんは予想をした。そして、その予想はあたる。


 地面に刺さっていた剣はとんでいき、鬼はこれほどまでにない大きな叫び声をだしながら暴れた。



「陣が…!」


「解けた...。」



 鬼が暴れたことにより陣は解け、神力修2人は驚いた。



(やっぱりな。鬼兵士なら鎮められるが、生鬼軍師の鬼となると無理に等しい。)



 呑心てんしんは思った。


 暴れている生鬼軍師の鬼は大剣を振り回している。れんりきは飛んでいった剣を引き寄せようとしたが、陣を張るのに霊力をほとんど使ったようで、剣を引き寄せることはできなかった。霊力がほとんどなくなったことは、生力も少ないことを表す。生力は霊力を変換して自分の魂、神力者にとっては核を支える力だ。そのため、自分の命にも関わってくる。札も作れず、()(すべ)がなくなってしまったれんりきに、鬼は攻撃しようとした。



(このままだったら、あいつら死ぬぞ! 仕方ない、やってみるか。)



 呑心てんしんは落ち葉を拾い、左手の人差し指と中指で挟み、息を吹きかけた。 葉には白色で[鬼]の文字が浮かんでいる。それを倒れている屍につけた呑心てんしんは自身の眼を赤色に変え、鬼術を使った。




── 我、鬼神伝 空鬼呑心からきてんしんが命ずる。 数ある鬼兵士の彷徨う魂よ。 我に従え。──



「ここに来たれ。」




 呑心てんしんの足元には円の中に六芒星がかかれた陣が浮かび上がり、屍の体は白く光っている。光が消えたと思うと、屍は角と牙が生えゆっくりと起き上がった。その姿はすでに鬼だ。



  ──生鬼軍師の鬼を始末しろ。



 命令を聞いた()は「うがぁぅ…!」と叫び、生鬼軍師の鬼へと走っていった。






生力:一般人の民にもある自分の魂を保つ力。民達は霊力がない代わりに生力は普通にある。

神力者にとっては修行するにつれて自身の核(魂)が成長し呪力と霊力が増えていくため、主に霊力を変換して生力を増やしている。霊力がなくなった場合、死することがある。呪力で変換することは一応できるが身体に負荷がかかり、原因不明の病にかかることがある。



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