14 陣
一滴の汗が頬をつたって顎から落ちた瞬間、生鬼軍師は雄叫びをあげながら、目に追えない早さで一直線に俺達へ向かい、大剣を振り下ろした。 俺は神力修2人の背中を押し、避けた。
「うわっ!何するんだ!」
「さっきの一撃で時間稼ぎどころか死んでいた。 若君に声を張るのは良くない、力。」
力は廉に言われ黙り込み、苦笑いしていた俺にしぶしぶ礼をした。
床にめり込んだ大剣を持ち上げ再びこちらを見た鬼。 口からは白い息が見える。
「若君は隠れていてください!」
「…わかった。」
(そう簡単には隠れないけどな♪)
俺は舌を出しながら少し笑った。
生鬼軍師と廉は剣を構え、お互い睨みながら庭をゆっくりと回っている。 その隙に、力が後ろから札を背に張り、剣で攻撃した。 しかし、鬼は大剣で攻撃を跳ね返し、張ったはずの札は燃え灰になった。
「うがぁぁぁぁ!! あ"ぁぁ!!」
「札が効かない! くっ!」
鬼からの凄まじい攻撃を剣で必死に流しながら言った。 こちらが攻撃する隙がなく、敵の攻撃は一つ一つ重く、速かったのだ。剣と剣が交わり、激しい音を立てている。鬼は大剣を神力修に振りながら咆えていた。
「これじゃ!押されるだけだっ!廉!どうする!」
「陣を張ろう!」
「でも俺達が知っている術は、屍や魂を鎮め祓うだけの陣だぞ?!」
「だが、やってみるだけ価値はあるはずだ。」
廉と力は頷き合い、鬼を挟み、お互い剣を鬼へ向けた。
「東の㯥舞月神。白月廉と、」
「同じく㯥舞月神の白月力が申す!」
「「鬼して生を終したものの魂を抑えたまえ。」」
2人は地面に剣を刺し、手をパンッ!と胸の前で合わせた。鬼の頭上と足元には水色の円に五芒星が浮かび、だんだんと近づいている。まるで、鬼を押し潰すかのように。そして廉と力は同時に言った。
「「 各霊冥惨死屍、朝刑神奏楽! 」」
強い風が吹く。陣は鬼を押し潰していき、神力修2人は陣が途切れないよう霊力を流すのに集中していた。生鬼軍師の鬼は苦しいのか、陣を必死に押し返している。
「へぇ。鬼に屍や霊魂を鎮める術をかけたか。少しは効果があるようだが……」
呑心は予想をした。そして、その予想はあたる。
地面に刺さっていた剣はとんでいき、鬼はこれほどまでにない大きな叫び声をだしながら暴れた。
「陣が…!」
「解けた...。」
鬼が暴れたことにより陣は解け、神力修2人は驚いた。
(やっぱりな。鬼兵士なら鎮められるが、生鬼軍師の鬼となると無理に等しい。)
呑心は思った。
暴れている生鬼軍師の鬼は大剣を振り回している。廉と力は飛んでいった剣を引き寄せようとしたが、陣を張るのに霊力をほとんど使ったようで、剣を引き寄せることはできなかった。霊力がほとんどなくなったことは、生力も少ないことを表す。生力は霊力を変換して自分の魂、神力者にとっては核を支える力だ。そのため、自分の命にも関わってくる。札も作れず、為す術がなくなってしまった廉と力に、鬼は攻撃しようとした。
(このままだったら、あいつら死ぬぞ! 仕方ない、やってみるか。)
呑心は落ち葉を拾い、左手の人差し指と中指で挟み、息を吹きかけた。 葉には白色で[鬼]の文字が浮かんでいる。それを倒れている屍につけた呑心は自身の眼を赤色に変え、鬼術を使った。
── 我、鬼神伝 空鬼呑心が命ずる。 数ある鬼兵士の彷徨う魂よ。 我に従え。──
「ここに来たれ。」
呑心の足元には円の中に六芒星がかかれた陣が浮かび上がり、屍の体は白く光っている。光が消えたと思うと、屍は角と牙が生えゆっくりと起き上がった。その姿はすでに鬼だ。
──生鬼軍師の鬼を始末しろ。
命令を聞いた鬼は「うがぁぅ…!」と叫び、生鬼軍師の鬼へと走っていった。
生力:一般人の民にもある自分の魂を保つ力。民達は霊力がない代わりに生力は普通にある。
神力者にとっては修行するにつれて自身の核(魂)が成長し呪力と霊力が増えていくため、主に霊力を変換して生力を増やしている。霊力がなくなった場合、死することがある。呪力で変換することは一応できるが身体に負荷がかかり、原因不明の病にかかることがある。




