11 死
「 廉。 今、鬼の手が動かなかったか…?」
「あぁ。私も見た。」
廉と力は瞬時に戦闘態勢へ入った。
「な、なんだよ…! 早く生け贄を…」
「静かに。」
神力修は鬼を見た。 鬼の指はピクピク動いている。そしていきなり鬼がグワンと背を沿った。
「ゔ… あ"ぁ... う"がぁぁぁぁ!!!!!!」
そのとたん、とてつもない叫び声をあげ、 藍冀夫人と藍冀宗主は耳を押さえながら、後ろに少し吹き飛ばされた。鬼の声は周りに風を吹かせるほどの威力。
「なんて声量だ…!」
廉と力は前重心になり強く吹く風に飛ばされないよう抵抗していた。そんな中、体感がぶれずに立ち、ただただ鬼を見ていたものがいた。呑心だ。
「お子様神力修達には悪いが。 藍冀家はここで終わってもらう。」
呑心は鬼神の姿になり鬼術を使って"鬼"へ命令をした。
────藍冀夫婦を狙え。 いいな。
一見外から見ると、俺は人間らしくないことをし残虐非道をしているように見えてるだろう。
鬼は再び叫び、藍冀夫婦の前へ一瞬で移動した。 凄まじい移動早さに廉と力は驚き固まる。 一方、目の前に来た鬼に藍冀夫婦は絶望した顔になった。 だが、人間の絶望の顔は鬼にとって大好物だ。 鬼は喜んで殺す。 そうして、藍冀夫婦へ攻撃しようとした、次の瞬間─
「お前が盾になれ!!」
「いやぁ!やめてっ!! 」
血が飛び散った。グサッと鬼の爪が刺さったのは藍冀夫人。 なんと藍冀宗主が夫人を盾にしたのだ。 夫人は溝に爪が刺さり、口からは血を出しながら倒れた。
(藍冀家はどこまで腐ってるんだ。 一生を共に過ごす妻を盾にするなんて…!しかも一族の長である男が。)
鬼は夫人から爪を抜くと今度は宗主の方へ攻撃をしようとしていた。 藍冀宗主は後退りをする。
「させませんっ!」
キンッ! と音がした。 廉が鬼の攻撃を剣で流したのだ。 その内に藍冀宗主は空き部屋へ走ろうとしていた。
「こ、こんなところ!いてたまるかっ!」
しかし、そこには自害したはずの兵士が屍となり、食べ物を待ち続けていたかのように目を光らせ立っていた。
「うわぁぁ!!」
藍冀宗主は叫んだ。 それに気づいた力は宗主のところへ移動し、屍から守った。そして異常な霊力を感じ、空を見上げた。
「な! これは!」
そこには、自分たちが祓った霊魂よりも、たくさん霊魂が集まっていたのだ。
「宗主! この札を持ってください! 先程あなたは大きな声をあげてしまった。 早くしないとあなたも屍になってしまいます!」
力は守護と書かれた札を宗主へ持たせた。これは人死魂から身を守る札だ。力は霊魂や屍から宗主を守っていた。
廉はというと、鬼へ攻撃を出していたがすべて効果がない。 とうとう廉は鬼に殴られ、壁の方へととんでいった。
「廉っっ!! 」
そして、鬼は力のところにも移動し廉と同じように殴られた。反応が遅れた力は吹き飛ばされ壁にめり込んでしまった。
守ってくれる神力修もいない、霊力で戦うこともできない藍冀宗主は必死で助けを呼ぶ。
「た、助けてくれっ!! 誰かっ!!」
周りには屍、目の前には鬼がいる。 藍冀宗主から見た化け物達は2つの目が赤く光って見えただろう。呑心はその様子を見つめていた。
(自分の息子に殺される気持ちはどうなんだろうな。)
鬼は長い爪を前へ出し、藍冀宗主を突き刺そうとした。
「宗主ッッ!!」
神力修2人は宗主のところまで走り手を伸ばす。喉がつぶれそうな必死な叫び声を出し、もう少しで手が届く時─
鬼の爪は宗主を腹を貫通した。神力修の頬に血が飛び散る。廉と力の見開いた目には倒れていく宗主が写る。そして、周りにいた屍は倒れた宗主へ飛びかかり鋭い牙で噛んだり、肉をえぐったりしている。
そんな残酷な光景を2人は見ることしかできなかった…。




