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邪楽 ─日の國の鬼神─  作者: 明庵 心架
第一章 鬼
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1 鬼神伝



『日の國』


それは、太陽を崇める始まりの國。5つの領土にわかれている國。

この國で必要なことはただ1つ。


『神の力』



この國のすべては『神力』で成り立っている。

神力とは、神から与えられた特別な力、「呪力・生力・霊力」の3つことであり、持って生まれたものは肉体が滅んでも魂があるかぎり再び蘇ることができる。


そして、神力を兼ね揃えている始まりの「有名賛家」。別名「五大神家」。


 きた冀魄空神きはくくうしん

 ひがし㯥舞月神(そうぶげっしん)

 みなみ楠堪緑神なんたんりょくしん

 西にし瑮蘊海神りつうんかいしん

 ちゅう煌極璝太神こうごくかいたいしん


神力は全員が持って生まれるわけではない。

選ばれたごくわずかの民。

有名賛家の一族であるもの。

有名賛家の親戚、分家であるもの。


神力が与えられている人はそれぞれの領土、それぞれの有名賛家で修行し、民を霊魂や欲霊、屍から守ることができる。



そして希に、有名賛家から『鬼神』と呼ばれる子が生まれる。




 

「おい聞いたか? あの噂。」



 賑やかな酒屋に耳を近づけ、口に手を当てて密かに話した。



「聞いたわ。 有名賛家で起こった例の戦よね?」


「なんでも主犯は自身の賛家 冀魄空神(きはくくうしん)までも裏切ったと言われる、暴虐の鬼神だそうだ。」


「知ってるぞ。 その名は『鬼神伝 空鬼呑心(からきてんしん)』! 煌極璝太神こうごくかいたいしん冀魄空神きはくくうしんの宗主を中心に有名賛家の神力者達が動き、今では拘束されたらしい。」


「まもなく処罰がくだるころだ。おそらく処刑だろうがな。」



 男は酒器を口にもってグッと酒を飲んだ。 鬼神とは、有名賛家の中で希に生まれてくる世を覆すほどの力を持つと伝えられている。



空鬼からき公子といえば、幼い頃は心優しく神家の中でもずば抜けた才能で名も残したというのに。自身の賛家を裏切るなんて…。いったい何が彼を変えたのかしら…。」


「所詮は、鬼だ。有名賛家も彼の行いにけじめをつけたのだろう。鬼神はどの時代も同じなんだ。」



 "鬼"という言葉は誰もが納得するものだった。



「鬼神か…。伝承によると、長い角と鋭い牙、鬼の仮面を被っている容姿だとか。」


「そして、太鼓が武器なんだとよ。」


「まさに本物の鬼だな。」



 その場の全員が武者震いをおこした。それほど鬼神の存在は、民の人達だけではなく、有名賛家までも恐れるほどだったのだ。






 ◇◇◇


 民が噂の話をしているなか、有名賛家が集まる尊無四城とうむしじょうでは鬼神伝 空鬼呑心からきてんしんの処罰を決める話がされていた。




「鬼神伝 空鬼呑心からきてんしんを前へ!」



 空鬼呑心からきてんしんは武器を持った神力者達に連れてこられ、押された勢いで横になった。縄に縛られ、背中には矢が刺さっており、脚や腕、顔からは血が流れている痛々しい姿だった。


 前の5つの玉座には五大神家の宗主が座っており、周りにいる分家の神力者達は鬼神をひどく睨んでいる。



「これより!鬼神伝 空鬼呑心からきてんしんの処罰を決める!みな意見を言え!」


 力強い声で赤と黒を特徴とする(漢服)の男。

 ちゅう煌極璝太神こうごくかいたいしん宗主 よう 宝剣ほうけん



「私は彼の数々の行いに免じて処刑がもっともだと思います。」


 薄い黄色が特徴の美しい(漢服)で優美に微笑む男。

 ひがし㯥舞月神(そうぶげっしん)宗主 白月はくが 伏見ふじ



「いかにも、私たちの領土もこいつに滅ぼされたも同然だ!許しがたし。処刑がよい!」


 緑を特徴とする(漢服)で鋭い目付きの男。

 みなみ楠堪緑神なんたんりょくしん宗主 然緑ぜんりょ 希斬きざん



「わ、私は、兄様方の意見に尊重します…。」


 青を特徴とする(漢服)で少し胆怯している弱々しい若い男。西にし瑮蘊海神りつうんかいしん宗主 かい 蒼穹そうきゅう



「よいのだな?そら宗主殿。」



 きた冀魄空神きはくくうしん宗主 空天そうてん 思季しき

 白色が特徴の(漢服)をきている。まだ青年ながらも新しい宗主として、冀魄空神を引っ張るもの。


 思季しきは無言のまま、下を向いている呑心てんしんを見ていた。



空鬼呑心からきてんしん…。何か言い残すことはあるか。」



 呑心てんしん思季しきの声に反応し、笑いながら顔をあげた。



「はははっ!もうすぐ死ぬってのに情けを架けるのは俺がお前の従者だったからか?思季しき。だが、あいにく俺はなにも言うことがない。鬼神だから、強いものだからとかは関係なく、俺はこんな死に方でも精一杯生きた。」



 空鬼呑心からきてんしんは、目を閉じ準備ができたかのようにまた下を向いた。



「それでは全会一致として、鬼神伝 空鬼呑心からきてんしんを処刑とする!」



 近くにいた神力者が大きく上に剣を上げ、空気を切るかのように勢いよく振り下げた。周りには血が激しく飛び散り、倒れゆく体、そして1つの首がちゅうに浮いている。その光景は、ゆっくり動いているかのように鮮明だった。有名賛家の分家、多くの神力者や神力修達が嘲笑っている中、最後に鳴り響いたのは、コトンと1つの首が床に落ちる音だけだった。





 後日、彼の死は瞬くに世間へ広まった。鬼神がこの世からいなくなったことは國の安心を意味する。


 強い霊力がある神力者が剥蘇贄はくそじを何回試しても、鬼神伝 空鬼呑心からきてんしんは蘇ることはなかった。剥蘇贄はくそじとは、自身を生け贄にし、鬼神または鬼を蘇らす、失われている奏呪術だ。これは、まだ鬼神伝 空鬼呑心からきてんしんの魂が生きているのか、はたまた魂もろとも消滅したのか一向に分からない。


 警戒しながらも、年月は1年、また1年と穏やかに過ぎてゆくばかりだ。そして、9年の年が流れようとした頃には、鬼神伝 空鬼呑心からきてんしんは魂もろとも本当に消滅したと信じるものが増えていったのであった。



空鬼呑心からきてんしん 別名 鬼神伝きじんでん 享年20歳。

きた冀魄空神きはくくうしん出身。捨て子で旧空宗主に拾われた。

空天思季そうてんしきとは同い年で兄弟のように育てられ、将来は思季しきおさ呑心てんしんが従者になると誓った仲。

ある事件がきっかけで、自身が鬼神と発覚し───。




神力修…神力を使って修行する若者のこと。


神力者…神力を使う一人前のもの。



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